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 運用制度の開始からそれほど年月も経っていない。

 生活設備まで含むとなると既存の建物では代用できなかったのか、軍事基地の敷地内に区画を設けて建物を新設した。

 元々警備性もかねて余裕のある土地確保がされているように、魔法少女が暮らす区画においても、建物一つに閉じこもるようなことはなく拡張用の土地まで現役で利用されている。


 運動場もその一例だ。

 軍隊のそれより敷地こそ小さいが、利用人数に対しては十分な広さがある。


「意外と様になってんね」


「受け身くらいなら習ったことはあるから」


 芝のある中央から周りを見れば、持久走じみた周回を続ける一団が見える。

 魔法少女として怪獣退治を行うには体力もほぼ必須だ。そうでなくても日頃の健康維持のために運動は欠かせない。


 とはいえ、さらに遠くを見れば、一般技能から大きく外れた訓練課程も見られる。

 視線に続いたらしいアイリも感想を告げていた。


「あれ私は無理だぞ」


 着地訓練と呼べば理解はできる。

 実際、怪我防止のクッション材まで敷かれる光景は訓練のそれだが、戦闘を想定した環境設定は一般人が真似できるものではない。


「私も、さすがにビルから飛び降りるのは怖い、消防訓練なんかでロープを繋いで使うものだよね」


「魔法少女は、個人差が大きいからなあ」


 そんな感想でながめる先には、五点着地やそれ未満の体勢で落下する姿がある。

 初心者のための命綱まで用意された上で自由落下が続いていることが、常人との差を示していた。


「アイリの場合、単独飛行できるから高所作業に強みがあるよね」


「作業って……。まあ、安全具を着けるより自由は利くけど、航空法から学ばないといけなかったぞ」


「制度があって助かるのか、自由がないのか微妙なところだね」


「指揮系統もあれば、魔法少女が単独で出撃することはまれだから、現場に着く早さもそこまで重視されてないしな」


 銃砲を携えて飛行していた過去の姿を想像して、アイリを見つめる。

 与えられる技能は必ずしも怪獣退治に適した能力ではない。それ以前に現行制度に見合った出力が得られるわけでもなければ、使用者に技量が求められる。


 当たり前の話だが、そのために必要な訓練を欠かさなかった者が魔法少女として活動している。


「そういえば、サツキ。応急処置の課題を一発合格したと聞いたけど、一緒に活動することを見越して練習したりしていたのか?」


「まさか。ほら、現場だと人命救助をしないわけにもいかないから。いくら避難誘導が行われているといっても、逃げ遅れる人がいないわけでもないし」


「たしかに当たり前か、講習があるのも必要だからだしな」


 軍隊以前に、相応の年齢になれば自由が増す分、義務も増える。救護義務もその内の一つだ。ただ、現在の外見年齢からすれば、これまでに一度あるかという講習を律儀に覚えていた子になるのかもしれない。


「そういえば、攻撃訓練は、どうやって行っているの?」


「ああ、まず屋内では無理だから。定期的に軍の演習場を借りて、そこでまとめて行っているぞ」


 話題を変えてみれば、得意とすることもあってアイリの解説が始まる。


「演習場というと、ここから近いのは立山かな」


「よく調べているな。軍事基地より少ないから、別の基地に所属する魔法少女との合同になる。同年代だと顔見知りばかりだな」


「そっか、教育施設の頃と大きく変わらないのか」


「そうそう。そんな面々で集まって一週間くらいやることになる。何しろ怪獣相手の攻撃を行うわけだから、下手な場所で振るえば重要インフラを破壊しかねない。それでも自身の限界を知っておく必要はあるから、皆もそれなりに全力を出す。攻撃手段なんて様々だから日数の半分くらいは片付け作業になる。連携のための模擬訓練ならともかく、実演だと土山が消し飛んだりするのが普通だから」


「使用に許可を求めたりするのも、それなのかな」


「そそ、怪獣を止めるために、怪獣以上の損害を出したら意味がないからな」


「ここまで聞くと、戦う能力がなくて良かったと思えてくる」


「分からないぞ。サツキの能力は、まだ分かっていないんだから」


 最後に告げたアイリの期待には悪いが、自分では既に解決している。

 他と比べた特殊性、個性と呼べるものは既にあり、変身時間の長さや性別の問題がそれである。


 これから後に活躍していく彼らを見送ることが、自分の生活になる。




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