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 「はあ・・・生きてて良かったあ・・・」


 心の底からそう思った。流行病から回復した後に記憶が戻ったのか、タイミング良く記憶が戻って助かったのかは分からない。でも、どちらにせよ運が良かったのは間違いないだろう。


 あーあ・・・これで一生分の運を使い果たしてなければ良いなあ・・・・・・。


 ひとまず前世を思い出したけど、その反動で今世の記憶が無くなってるということはなさそう。少し思い出してみたけど、ちゃんとクリスティーナっとして生きた記憶は残ってる。どちらかというと、前世の記憶の方がフィルターがかかってるかのように朧気かもしれない。


 当面は大丈夫そうだけど、前世を思い出した影響で変なことをしないように気をつけよう。


 特に前世とは国の体制も考え方も違うんだし、ついうっかり変なことを言ってしまって異端審問とかは絶対にイヤ。


 それに性別も違うんだし、言動が男よりにならないように気をつけないとね。どちらかといえば、こっちの方でやらかしそうかも。今世ではしっかりと淑女教育を受けていて下地はしっかりあるけど、40年以上も男をやっていたし、10年くらいの女性歴ではカバーしきれないかもしれない。


 よし!当面の目標は情報収集を優先してやるようにしよう。少なくとも多少はでるであろう、言動の変化に違和感をもたれないようにおとなしくしていよう。


 落ち着いたら城下街へ行ってみたいけど、許可が下りない可能性の方が大きいかも。


 ああ、そういえば教会にも行かなければならないか。こっちは『回復の感謝の祈りを捧げに行きたい』とでも言えば叶うと思う・・・かな?


 なにしろこの世界の医療水準は無いも同然で、病気や怪我の治療は祈祷が基本なのだ。薬は・・・見たこと無いわね。その辺も今度調べてみましょう。


 まあ・・・つまり病気や怪我からの回復=神様への祈りが効いた。ということなのだ。


 魔法の方は独学でなんとかするしか無いかもしれないわね。一応お父様に教師を付けてもらえないかは、お願いはしてみようと思うけど・・・。


 ”コンコン”


 色々と考えに没頭していたけど、扉を叩く音で意識が引き戻された。


 そしてわたしの返事を待たずに扉が開き、1人のメイドが入ってきた。マナー的には中からの返答を待つものだけど、まだ誰もわたしが目覚めたことを知らないのだから仕方の無いことかもしれない。


 で、わたしは上半身を起こしていたので、近づいてくるメイドと目が合った。


 目が合っただけならまだ良いが、このメイドは固まったまま動かなくなってしまったのだ。


 メイドがフリーズした原因を探そうと自分の周囲や身体を確認してみるけど、特に変わったところは発見できなかった。それとも、自分の致命的な失態に気が付いたのかしら?


 わたしもこの程度で不敬罪を適用するほど狭量ではないわ。寛大な心で許してあげましょう。


 「どうかしましたか?でも、丁度良かったですわ。のどが渇いたので、お水を持ってきてちょうだい」


 わたしとしては笑顔でお願いしたつもりなんだけど、メイドの反応は予想外のものだった。


 「ひ、姫様がお目覚めにーーー・・・・・・」


 そう叫びつつ勢いよくどこかに走り去ってしまった。


 「あ、あの・・・お水が欲しいのだけれども・・・・・・」


 わたしのつぶやきは虚しく、メイドの叫び声と足音にかき消されてしまったのだ。

 

 やっぱり不敬罪にしようかしら・・・。

 

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