出会い
「.....おばあちゃん、大丈夫?」とゆりなの言葉が聞こえる。
「大丈夫よ、ゆりなちゃん。おばあちゃんは無事だから‼️」と自信満々にキヨ子が答える。
「いや、だって。ここ、総合病院だし。おばあちゃん今日から入院だよねー⁉️」と大きな声で個別の病室でゆりなは叫んだ。
どうして、ゆりなが叫ぶ原因になったのは、今から数時間前の事...
ー数時間前ー
昨日に腰を痛めた、ゆりなの祖母「キヨ子」は、ゆりなと一緒に総合病院に向かった。
キヨ子がレントゲンなどの検査をして、医師から判断された病名は...
「急性腰痛症ですね」と言われる。
ゆりなはその症状がわからなかったので、すかさずに、
「すみません、その症状はどんなものですか?」と質問する。医師はわかりやすく、
「急性腰痛症とは、身近でよく言われるぎっくり腰のことですよ。」と答える。ゆりなも、流石にぎっくり腰の事は知っているので、「なるほど」と呟く。医師は話を続けて、「基本は安静にしていれば、1週間くらいで治りますが...キヨ子さんは年齢的に考慮して今日から検査入院をしていた方が良さそうですね。」と伝える。キヨ子は「入院ですか?」と話す。医師は
「はい。急性腰痛症は高齢者が多くなりやすいもので、その症状で骨が変形しやすいケースがほとんどなので、念のための入院です。期間は一週間を目安なので長期間ではありませんので、心配しなくても良いと思います。」と伝える。しかしキヨ子は躊躇いながら
「実は、今ここに同行している孫が両親がいなくて、保護者代わりが私しかいないのです。それで、私が入院をすると孫を一人にさせる事になるので、その事が心配なんですよ。」と医師に伝える。医師はキヨ子が話した発言に考慮しながら
「それなら、無理に入院をしないで大丈夫ですよ。念の為のことですし、安静にして通院をする形でも...」と医師が話している間に、
「おばあちゃん」とゆりなが口に挟む。その後も「私は大丈夫だから。おばあちゃんは入院しても良いよ。」とキヨ子に話す。キヨ子は心配そうに「でも...」と話す。
「おばあちゃん、私はおばあちゃんに長生きして欲しいの。知ってる?腰を痛めると寿命が縮むんだよ。うまく身体が動けなくなって...。だから、おばあちゃんにそうな風にしてほしくないの‼️」
「わかったわ、ゆりなちゃん。先生、私は今日から検査入院をします」とキヨ子が医師に伝えて....
ー今に至るー
大きな声でゆりなは叫んだ為、気づいたのかキヨ子のいる病室のドアを少し開けて、看護師さんが「大きな声で話すのは控えてね」とゆりなは注意されたので「すみません」と頭を下げた。このやりとりの後に、キヨ子が
「本当に大丈夫よ。おばあちゃん、元気になって帰ってくるからね。」とゆりなに伝える。ゆりなは、さっきまで私に心配をしていたおばあちゃんではなく、絶対にぎっくり腰を治そうと燃えているおばあちゃんしかいないと思った。ゆりなはふと疑問に思った。
「おばあちゃん、どうしてアルバムを取ろうとしたの?」と聞く。そう、キヨ子が急性腰痛症...又の名はぎっくり腰になってしまった原因をゆりなは知りたかったんだ。
キヨ子は
「昔のゆりなちゃんの写真を近所の人たちに見せようかなと思って....」と言う。
「おばあちゃん、どうして写真を見せようとするの?何か恥ずかいよ、私...」
「だって、うちの孫がこんなに成長しました。って伝えたかったの」
「何で、そうしたいの?」
「みんなね、ゆりなちゃんが高校生になった事に嬉しがっているの。ゆりなちゃんが無事に成長していることが伝わってきて。みんな、ゆりなちゃんの両親が亡くなっちゃって心配してくれたの。だから、さっきも話した通り成長したことを褒めて、昔のゆりなちゃんを懐かしく思いたかったの。みんなで」
ゆりなは、言葉を失った。どうして?
どうして、みんなは私のことを心配するの?
私のことはどうだって良いしと思えてしまった。彼女はこのことをキヨ子に伝えなかった。これを伝えるとキヨ子の気持ちを踏み躙る行為になってしまうから。ゆりなは、話を変えて、
「それじゃあ、私はこれで帰るから。おばあちゃんも安静にしてね!」とキヨ子に伝える。キヨ子は「わかったわ。ゆりなちゃんも何かあったらいつでも電話してね」と言い、ゆりなは「バイバーイ」とキヨ子に言って病室のドアを閉めた。ゆりなは病院内の廊下を歩いた。ゆりなが総合病院に来たのはちょうど四年ぶりにお散歩だっだ。彼女も交通事故で怪我をして入院した時以来だった。ゆりなはあの事故では目立った身体の損傷は無かったが、右腕に薄っすら傷跡が残っただけだった。傷跡はあまり目立っていないので、ゆりなはあまり気にしていなかった。ゆりなは歩きながら、ふと思った。ここにいる人たちは明日を生きていく為に「今」を生きる人たち。明日を生きていけない人だっている。ゆりなはそれが羨ましかった。「ここ」で死ねる人たちもいるから。と考えたけれど、これを考えるのはやめた。それは、明日を生きたい人が必死に生きているから、それに申し訳なくなったから。ゆりなは早足で病院内を歩いた。今日は早く帰ろっかな。ゆりなはそう思った。自動ドアからゆりなは外に出た。まだ、桜が散っていく様子が見えるので、まだ、桜が咲いていることが分かる。病院の外はすぐに庭になっているので、子供達の遊ぶ声が聞こえる。ゆりなもその声を聞いて懐かしいと思えた。自分も昔、両親と一緒に遊んだ記憶が蘇ったからだ。それと同時に胸が痛くなった。どうしてなのかは分からない。ただ、ズキリっと痛くなる。
ふと、音が聴こえる。ゆりなは耳を澄ませながら、その音を辿って歩いてみる。どうして歩いているのかは分からない。ただ、気になってしまう。その音が、音色が優しくて安らぎを感じる。一歩、また一歩、ゆりなは歩く。その音をたどって歩くと、病院の庭に咲いてある桜の木の下で少女が唄を歌っていた。唄と言っても歌詞ではなく、ただ、音階の音色で「ララ、ラリ、ララ、ルラ」と歌っている。もう少し近づいて歩こうとしたら、ふと地面を見た。ゆりなの傍に楽譜が落ちていた。さらに周りを見た。所々に楽譜が散らばっていた。恐らく、風に楽譜が飛ばされて散らばったとゆりなは考えた。ゆりなは唄を歌っている少女に近づきながら楽譜を拾っていった。少女との距離が数センチくらいになった時、少女と目があった。少女はゆりな事をじっと見つめて、少女は
「あれれ?どうしたの、ボクに何か用があるの?まさか、ボクの顔に何かついているの?どこ、どこどこ⁉️」と慌てる。ゆりなは少し呆れながら
「大丈夫、あなたの顔に何もついていないよ。貴方が歌っていた音色が聴こえてきて、気になったからここにきたの」と少女に言う。
「よかったー。ボクの作った曲が綺麗だったの!ありがとう」
「綺麗とは言っていないけど、まぁいっか。どういたしまして。あと、これ貴方の楽譜かな?落ちていたよ」
「あっ‼️ ボクの楽譜だ。風に飛ばされちゃってどこに行ったか、分からなかったんだ。」
「貴方の周りにあったのに、どうして気づかなかったの?」
「いやー、楽譜を探そうとしたんだけど、突然とても良い音色が思いついたから歌っていたんだ」
「変な子だなー」とゆりなは言いながら少女の隣に座った。少女はゆりなに身を乗りながら、
「ねぇ、ねぇ、貴方の名前は何?
ボクの名前は日比野亜子。亜子って呼ん
でね。えっとー...」
「ゆりな。望月ゆりなだよ。」
とお互い自己紹介した。
「よろしくね、ゆり。」
「うん、よろしくね。...あっちゃん。」
「え?あっちゃん...?」
「亜子であっちゃん。だって、あっちゃんが
私にゆりって呼んでいるから、私もあだ名
で呼ぶの」とゆりなは言った。ゆりなはふとおもった、亜子がここにいるのは病院に入院しているからだ。ここは病院の庭だから。
また、亜子がパジャマを着ているから気になっていた。ゆりなは
「あっちゃんは病院で入院しているの?」と問う。亜子は
「そうだよ」とあっさり答える。逆に、亜子から、
「ゆりはどうして病院に来たの?」と問われたので、ゆりなは
「おばあちゃんが今日から検査入院でお見舞いに行っていたんだ」と答える。亜子は
「そうなんだ....」と呟く。すると、突然亜子が
「ねぇ、ねぇ、明日も来てくれない?」とゆりなに聞く。
「ゆりともっと喋りたいから。お願い!」
「突然だねー...」
「本当のお願い‼️」
「...いいけど」
「やったー! ありがとう、ゆり。」
「どういたしまして」と言って、ゆりなは立ち上がる。
「じゃあ今日は帰るから、また明日。
さようなら、あっちゃん。」
「バイバイ、また明日。ゆり」とゆりなは聞いて、歩いて行った。亜子は帰っていくゆりなを見て、「また、明日...か」と呟く。
この出来事によって、生きる理由がわからなくなった少女と音楽に愛された少女の人生が変わっていった。そして、ゆりなは知らない。
ー亜子と別れる運命がやってくる事を......ー




