9話
「ほんとにお兄ちゃん?」
妹からの第一声がそれだった。
「おいおい、まさか忘れたのか?」
「忘れるわけないよ。けど最後にあったのは私がまだ小学1年生のときだったから……」
「そうだよな………」
少し重たい空気になりかける言葉が見つからなかった。
お互い久しぶりに会い何を話していいのかわからなかった。
その空気に耐えかえたのか楠木が話に入ってきた。
「あの、三神くん、妹さんと積もる話があるのなら三神くんの家で話せばいいんじゃないかな?」
楠木の提案に俺は、冷静さを取り戻した。
「そうだな、瑞葉うちに来るか?」
「あ、うん。私もお兄ちゃんと話したいからお兄ちゃんの家いく」
瑞葉がそう答えてくれて少し俺は、安堵していた。ここで断れていたらと考えると、恐ろしくてこれ以上考えられなかった。
「えっとじゃあ、最寄りの駅まで行こうか」
「うん」
「それじゃあ、出発!!」
楠木の掛け声で歩き始めようとするとすぐに立ち止まった。
「おい、なんでお前も行こうとしてるんだ?」
「えっボクも行くんじゃないの?」
ごく当然のような言い方に俺は、怒りを通り越してすでに呆れが生じていた。
なぜこいつは、すでに友達だと思っているのか
「お兄ちゃんこの人は?」
瑞葉は、俺の後ろで少し隠れながら言ってきた。
「自己紹介してなかったね。ボクは、楠木時雨。君のお兄さんのお友達なのです!」
「違うぞ瑞葉、こいつとは特になにもないぞ」
「そ、そうなんだ」
瑞葉は、少し引いた態度で楠木を見ていた。
「お兄ちゃんそろそろ行こ?」
「ああ」
瑞葉の手を引きいつもの駅まで行こうとした。
だがやはり………
「ねえ、三神くんやっぱりボクをおいていくの?」
涙目になりながら楠木は訴えてきた。
昨日あったばかりだが楠木は、メンタルが弱すぎる。少しのことで泣きそうになるのは今までの生活からよほどいい思いをしてきたのだろう。
このまま放置するかすると泣きかけている女の子を助けなかった、クズだとレッテルをはられる可能性がある俺は、ここで少し考えていた。
「お兄ちゃん、私は楠木さんいても大丈夫だよ?」
「そうか?わかった」
「それじゃあボク行っていいの?」
「いいぞ」
「やった!」
子供のようにはしゃぐ楠木を俺は少し微笑ましいと思ってしまった。俺が捨ててしまったものを楠木はまだ持っていたから……
「行くか」
「おおー!」
「お、おおー」
俺の掛け声で俺の住んでいる家に向かった。
やはり学校から家までの距離はあったのでそれなりの時間がかかったが、いつも1人で帰っているときと比べ少し楽しかった。
「三神くんのお家は、朝ぶりだな~」
「朝ぶり?」
「いや、それは違う」
誤解を招く言い方をしたせいで瑞葉が反応をして、瑞葉からとても冷たい目で見られている。
「何があったの?」
「あのな、瑞葉、今日の朝、家の前でたまたま会っただけだから」
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「ふう、よかった」
誤解が解けてホッとした俺は、かばんから家の鍵をだした。
横を見ると微笑ましそうに見ている楠木に少し苛立ったがそこはスルーした。
「よし、じゃあ三神くんの家の中へゴー!」
「ゴー」
瑞葉と楠木の掛け声で俺の家の中へと入っていた。
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