5話
「はぁ、なぜ俺だけ廊下で立たされてるんだ」
あの後急いで駅へ向かい、ギリギリ電車には乗れて学校までの最寄り駅まではすんなり行けたのだが、その後異様な程に信号に止められ後一歩のところで間に合わず担任から「ギリギリ遅刻するならもっとちゃんと遅刻しろ!朝の時間は廊下で立っていろ」と訳がわからないことを言われた。
「くそなんであいつは間に合ってるんだ」
俺は少しの隙間から自分がいる席を見た。
そこには平然と先生の話を聞いている楠木の姿があった。
俺が走り出したときにはまだ後ろにいたはずなのに何故か俺より先に学校についていた。
(一体どんな裏技を………)
そんなくだらないことを考えていると横から声がかかっていることに気が付かなかった。
「悠季!」
「わぁーーー」
いきなり横から声がかかって俺は、変な声を上げてしまった。
「そんなに大きな声で叫ぶな」
俺に声をかけてきた人物は俺の幼馴染だった。
「なんだ、紗夜か」
今、俺が名前を呼んだ人物は幼馴染の山本紗夜。
小学生まで一緒に遊んでいたほどの中だったが中学の時、紗夜が引っ越し中学は別々になったときに離れ離れになった。だが高校で再開を果たしたとき紗夜の性格は、小学生のときと比べて打って変わっていた。
「なんだとはなによ、1限目も自主的に立とうとしているあなたを呼びに来てあげたんじゃない」
紗夜は、わざわざ廊下で立たされている俺を呼びに来てくれていた。
俺が知っている紗夜は、誰かが廊下で立たされていても声はかけずにそのままにしておく人物だった。それが高校で再開したときには、いわゆる真面目キャラというのになっていた。
「それじゃあ、私はこれで」
紗夜は、自分の言うことは言ったという感じで教室に戻っていた。
「はぁ、可愛げなくなったんじゃないか?」
紗夜への態度に不信感をいだきながら俺は教室に戻って自分の席についた。
「おっやっと来たね」
「………」
「まただんまり?」
「いや、お前がどうやって俺より早く来たのかなと」
素直にさきほど俺は思っていたことを楠木に伝えた。
それを伝えると楠木は笑っていた。
「ふふ、そんなこと考えてたの?」
「ああ、だがなんで笑った?」
「いや、あまりにもくだらないことを考えていたから、あははは」
「そんなに笑わなくてもいいだろ」
少し適当に楠木に返すと楠木は、適当かわかったのか面倒な絡み方をしてきた。
「三神くんさっき山本さんと話してたけど、もしかして彼女だったりする?」
「はぁ?なんで?」
「いや、ボクと友達になるより先に彼女がいるとボクと友達になってくれないと思って……」
どうやら楠木は、俺に彼女がいると友達になってくれなと思ったようだ。
「お前、もう俺と友達になれる気なのか?」
「それはもちろん!!」
楠木は自信満々に答えた。
どこからくる自信なのか知りたいと思ったがそれを知ろうとすると「ボクと友達になる気が出てきたの!」と言われそうなのでやめておいた。
「はぁ、好きにしてくれ」
「ふふ、今日からガンガン攻めていくからね!学校が終わっても楽しみにしててよ!」
楠木の最後の言葉が届いたときには俺はもう夢の世界だった。
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