表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/59

02

その日の午後、早速テオドーロはレベッカを連れてきた。


「…まだ痛むの?」

レベッカは私の顔を見て気の毒そうに眉をひそめた。

「少し…」

「せっかくの綺麗な顔なのに」

「…そんなに眉間にしわを寄せたらレベッカの可愛い顔も台無しよ」

そう言ってレベッカの眉間を指先でグリグリと押すと、ようやくレベッカは笑みを見せた。


「まだ熱があるのね」

レベッカは眉間に当てたままの私の手を取った。

「でも気分は悪くないの。だから退屈で…」

私はレベッカの傍に立つテオドーロに視線を送った。


「レベッカとお話ししたいの。二人きりにしてくれる?」

「…でも」

「レベッカとリアム様の惚気話を聞きたいの」

「え…は?」

レベッカは目を見開いた。

「夜会の時二人でバルコニーに出て行ったわよね…」

じっと見るとレベッカの頬がさっと赤く染まる。


「女同士の話をしたいの、ね」

私は視線をテオドーロに戻した。



「…分かったよシア。何かあったらすぐ呼んで」

「ええ」

私の額にキスを落とすと、テオドーロは部屋を出て行った。





「…テオドーロ様って、家ではアレクシアの事、名前で呼ぶの?」

テオドーロの背中を見送って、レベッカが言った。


「ううん…夜会の後から。私にべったりで…離れようとしないの」

テオドーロは私の事を「姉上」と呼ばなくなった。

寝る時と学園に行っている間以外は、いつも私の側にいる。

学園も一緒に休むと言うのを何とか言いきかせたのだ。


「よほど心配なのね」

「…そうね…」

私へ向ける眼差しに、心配以上のものを感じるけれど…


私は、彼の気持ちに応える事は出来ない。




「で、リアム様とはどうなの?」

「う…」

話を戻すとレベッカは呻いた。


「…夜会の時は…バルコニーで少し話をして…戻ったらあの騒ぎが起きたから」

「どんな話?ってそういうのは聞いたら野暮ね」

うふふと微笑むとレベッカは顔を赤らめた。


「リアム様とはいい感じなのね」

「…というか…」

レベッカは拳を握りしめた。


「ずるいの」

「ずるい?」

「だって無愛想なツンだと思っていたのに!意外と饒舌だったりすぐ照れたりするのが…ちょっと可愛いと思ってしまって…」


ああ…これは。

攻略されてしまったな。


レベッカの顔を見て私は確信した。




「…そんな顔している場合じゃないわよ」

思わずにやけてしまったのだろう。

レベッカは私を睨みつけた。


「え?

「あの夜会の騒動の時の殿下の態度。明らかに殿下とアレクシアは特別な関係だと思われているわ」

「あ…」

「あの時のブリジット様の顔…」

レベッカはふう、と息を吐いた。


「———階段から落とされないよう、気をつけてね」



ええ…そんな。

扇子で顔を叩かれるのと階段から突き落とされるのでは全然違うんですけど!

青ざめた私に、レベッカは哀憫の表情を向けた。

「回避する方法はとにかく一人きりで階段に近づかない事ね。ゲームとは違う展開だからいつ起きるか分からないし、常に気をつけないとならないけど」

「…そんな事言われても…」

それってもう…学園に行かないしか選択肢がなくない?




「———そうだ」

ゲームといえば。

レベッカに聞きたい事があったんだ。


「レベッカは隠しキャラの事は知っている?」

「隠しキャラ?」

レベッカは視線を宙へ向けた。


「———やった事はないけれど…ネットで少し情報は見たわ」

「その隠しキャラのルートで私が出てくるらしいの」

「え?」

「今朝見た夢の中で…前世の友達がそんな事を話していたのを思い出して。でもそれ以上思い出せなくて」


「隠しキャラね…かなりヤバイというのは見たけど」

「ヤバイ?」

前世の友人もそんな事を言っていたけれど。


「このゲームの攻略対象って皆ちょっとヤバいでしょ?でも隠れキャラはもっと過激なんですって。ヤンデレキャラでかなりヤバいエンドもあるらしいわよ」

「……どうしてそんなルートに私が出てくるの?」

ヤバいエンドって?!



「それは思い出せないけど…。それにしても、ゲームと違う事が多いけど、アレクシアって中でもかなりイレギュラーよね」

レベッカは真顔で私を見た。


「そもそも、どうして記憶をなくしたの?」

「え、ええと…それは…」


私はこれまでの経緯をレベッカに話した。



「高熱…麻痺…」

レベッカは呟いて私を見た。


「ねえ、それって…」

「え?」


「———いえ…そんな話、ゲームに出てきたような気がして」

「本当?」

「…ゲームの事全部は覚えていないから…少し時間をくれる?思い出せるかも」

「ええ、お願い」


ゲームに…?


…やっぱり、私もゲームと関わりがあるのかな。

ただのモブだと思ってたのに。



「次は何かお菓子作って持ってくるわ。この世界にないものも作れるけど」

「本当に?じゃあ…ドーナツは?」

前世で好きだったのよね。

あんなかぶりつくお菓子…貴族が食べるものではないと怒られてしまいそうだけど。


「分かったわ。それじゃあまたね」

そう言ってレベッカは帰って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ