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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子
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1-8

8


「うわーおー」


 山の中腹に、崖に差し掛ける形で建った小屋に招かれて、ミーアは口を真ん丸に開けて立ちすくんだ。


 壁にずらりと並んだ壺。使い込まれた作業台と数々の道具。梁から吊るされたいろんな植物。

 そして。

 色鮮やかな、糸の束。


 きちんと仕分けして並べられた、毛糸、麻糸、絹の糸。

 ・・・すごい・・・虹の色が、全部あるわ・・・


 生成りと茶の濃淡の毛糸しか手にしたことのないミーアにとって、それは夢のような光景。



 鮮やかな色たちに魅せられたまま、ミーアは言われるままに外の水場で髪を洗われ、ごしごし拭かれ、炉端で髪を梳かれている。

 地肌に油を揉みこむ、しっかりとした指先。


「ひどく痛んでいるねぇ、羊毛の染料は髪染めには向かないのだよ。

 ダナ豆のペーストにムスカとジャジン油。紅根を多めに入れてみるか。

 少し赤味がかるが、薬効成分が毛根まで届く。

 何度も染めずに、済むようになるよ」


 知らない言葉が、山ほど出てきた。

 最後の言葉は、えーと・・・


「もーこん?」


「髪の根っ子さね。ほれ」


 ぷちん。


「そこの根元のちょっと膨れた処。髪の毛を作る大事な処だ。

 根っ子が無けりゃ、草は枯れるだろ。

 そこを薬で染めてやるのさ」


「黒くは・・・出来ないの?」


「黒く染めるのは難しいんだよ、

 髪でも、糸でも、良い色を出すのは難しい」


 話しながら老婆は甕から灰色のペーストを掬いだし、粉やら、油やら混ぜていく。

 黒っぽい粉を混ぜると、練り物はあっという間に赤茶に染まった。


「わあー」


 まるで、魔法みたいだ。

 ミーアは眼を見張る。


 


 

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