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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


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 翌日。


 蜂蜜を煮詰めているミーアの上に、ふっと影がさす。


「あら、キーヤ、久しぶり」


「ああ」

 最近はめっきり顔を見なくなったキーヤだった。


「ちょっと離れててね、熱いのがはねると危ないわ」


「あ、ああ・・・」


 もうちょっとで煮詰まる蜜は、重く、熱い。

 熱いうちに薬草を混ぜ、固まる前に平たく流して、切り分ける。

 煮詰め足りないと固まらず、煮詰めすぎると結晶化してしまう。

 タイミングと時間が勝負の、飴作りだ。

 

 鍋から顔を上げて見上げたキーヤは、刺繍を入れた帯に剣を下げた、戦士のいでたち。

 まだ成人の刺青はないけれど、一人前のトゥリアークの男子の正装姿だ。


「その・・・ばば様に挨拶に来た。

 大兄の付き人として、一緒に戦に行くんだ」


 一緒に・・・淡い嫉妬が胸を刺す。


 そうか、キーヤ、これが初陣になるんだ。


「そうか・・・気を付けて・・・アッ、大変!」


 あわてて鍋をおろし、平皿に流し込む。

 平らにならす木杓子を持つ手が、震える。


「そうなんだ・・・

 ばば様は薬草畑のほうにいるよ。

 ごめん、これ、すぐ切り分けないと。

 行ってらっしゃい。気を付けて」



「あ・・・ああ・・・うん・・・」


 何か言おうとするが、言葉に詰まり、そのまま畑のほうに向かった。




「気張って無理をするでないぞ。長の命をよく聞いてな」

 そして、ばば様は、にやりと一言付け加える。

「あれだけいじめてきたつけがまわってきたのう」


 ぼっ、と耳を赤くしたキーヤは、仕事を止めずに手を振って別れを告げるミーヤに、うなずいて、速足で山を下って行った。



 やれやれ。

 戦いに赴く前に、ミーアの織った帯が欲しかったのじゃろに。

 不器用な奴よなぁ。

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