3-15
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起きて、茶を入れ、食事の支度。
機を織り、ターロを織り、畑と蜜蜂の世話をする。
長老たちがばば様を訪ねてくる。
ばば様が下の村を訪ねる。
巫女たちの集会所にばば様が泊まり込む。
そんな日々が、繰り返された後。
戦士のひと、いや「西の戦士の長」の人がばば様を訪ねてきた。
炉端で話し合っている二人に、茶を運ぶミーアの耳に飛び込んだ一言。
「三日後に出立します」
出立・・・
この人が、戦いに出て行くのか・・・
立ち上がり、ばば様に別れを告げて道を下っていくその人を、ミーアは追った。
その朝出来上がったターロ紐を握りしめて。
「あのっ!」
初級のターロ紐、「導の星」
幅もない細い帯紐でしかないけれど、こだわり選び抜いた紫紺の糸で、この人を思いながら作ったものだ。
試験の課題にするよりも、今、この人に渡したい。
この人に持っていてもらいたい。
どうしても、この人に持っていてほしい。
「これを、俺に?」
無言で紐を差し出すミーアに、その人はちょっと目を細めて笑いかけ、片膝をついた。
「有難う、三アリス」
大きな手が、ミーアの顔を包み込む。
耳元で、よく響く深い声。
「俺の名はデュランだ」
「デュラン・・・さま・・・」
「様はいらない」
「・・・デュ・・・デュ・・・」
ふっ、と声無く笑って、手が離れ、頭をなでる。
「ばば様をたのむぞ」
そして、立ち上がり、去っていった。
大きな手が離れたとたん、急に、寒くなった。
「どうかご無事で」「ご武運を」
そんな言葉は一言も、ミーアの口からは出なかったけれど。
ただ、一本の帯紐に、すべての想いを込めて。
固く結ぼれ・・・守れ・・・守れ・・・守れ・・・




