表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/57

3-15

3-15


 起きて、茶を入れ、食事の支度。

 機を織り、ターロを織り、畑と蜜蜂の世話をする。


 長老たちがばば様を訪ねてくる。

 ばば様が下の村を訪ねる。

 巫女たちの集会所(ロングハウス)にばば様が泊まり込む。


 そんな日々が、繰り返された後。


 戦士のひと、いや「西の戦士の長」の人がばば様を訪ねてきた。

 炉端で話し合っている二人に、茶を運ぶミーアの耳に飛び込んだ一言。


「三日後に出立します」


 出立・・・


 この人が、戦いに出て行くのか・・・



 立ち上がり、ばば様に別れを告げて道を下っていくその人を、ミーアは追った。

 その朝出来上がったターロ紐を握りしめて。


「あのっ!」

 

 初級のターロ紐、「(しるべ)の星」


 幅もない細い帯紐でしかないけれど、こだわり選び抜いた紫紺の糸で、この人を思いながら作ったものだ。


 試験の課題にするよりも、今、この人に渡したい。

 この人に持っていてもらいたい。

 どうしても、この人に持っていてほしい。


「これを、俺に?」


 無言で紐を差し出すミーアに、その人はちょっと目を細めて笑いかけ、片膝をついた。


「有難う、三アリス」

 

 大きな手が、ミーアの顔を包み込む。

 耳元で、よく響く深い声。


「俺の名はデュランだ」


「デュラン・・・さま・・・」


「様はいらない」


「・・・デュ・・・デュ・・・」


 ふっ、と声無く笑って、手が離れ、頭をなでる。


「ばば様をたのむぞ」



 そして、立ち上がり、去っていった。

 大きな手が離れたとたん、急に、寒くなった。



「どうかご無事で」「ご武運を」

 そんな言葉は一言も、ミーアの口からは出なかったけれど。


 ただ、一本の帯紐に、すべての想いを込めて。


 固く結ぼれ・・・守れ・・・守れ・・・守れ・・・


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ