3-5
3-5
「ふーん、今日もきたの。
またターロ織りの時間が少なくなるじゃない」
「へん、大兄の言いつけじゃなければ、こんな所に来るもんか。
ほんとなら皆と組手を習う時間だ」
「戦士の家の男の子が戦事を習うのは十二歳からだってばば様が言ってたわ。
それまでは子供同士つるんで遊んでるだけたって。
あんた、いくつよ」
「見てるのだって勉強だっ!」
「見てるだけ、よね。
習ってないよね。
さ、あっち行って。
ばば様が来る前に、このターロ仕上げたいんだから」
「いちいちあたまにくるんだよ、お前は。
何だ、今日は薄焼きは作らないのか」
「あんたのために焼くんじゃないもん。
くいしんぼ」
「なにおっ!この・・・この・・・」
「泥頭?」
「くそーっ!
お前なんか・・・お前なんか・・・」
早く帰っちまえ、いじめっ子。
長年泥頭といじめられて来た恨みは深い。
だけど不思議だ。
一度思いっきりぶつかったら、怖さが消えた。
大嫌いだけど、口ごたえくらいは、してやれるのだ。
何があろうと、こんな奴にいじめられて、いじけたり泣いたりするものか。
「オック?」
毛を逆立てた猫みたいな二人を、オックが心配そうに見下ろす。




