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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


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3-4

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 古代帝国の遺産を引き継ぎ、強大であった王国は数百年の栄華ののち、次第に陰りを見せ始めた。

 偉大な魔導師を数多く輩出した王家の血が、腐り始めたのじゃ。

 魔力を重視するあまり、近親交配を続けすぎたためと言われる。


 王国は必死に隠そうとしておるが、噂は他国まで広がっていった。


 爵位を継ぐのは長子ではなく、最も魔力量の多い者。

 しかしその数は減り続け、貴族の中にも、平民のような魔力無しまで生まれてくる。

 殊に魔力量を求められる国王、四候、神官長、大聖女。

 大聖女にいたっては、もう数世代に渡って出現しておらぬのじゃ。


 純血を重んじてきた王国人は、思い余って、魔力の多い異民族に目をつけた。

 辺境のまつろわぬ小国群。

「大いなる牙」を崇める森の民。「海流の支配者」を崇める海の民。「運命の織り手」を崇める我等砂漠の民。


 

 彼らは無謀な遠征を重ね、奴隷商人を優遇し、我等をつけ狙うようになった。

 異教徒と蔑み、奴隷扱いしてきた儂らの血で、魔力を活性化させようとしているのじゃ。



 そして百年ほど前。

 英邁王ダンケルの指揮下、大遠征を試みた王国軍に砂漠の民は敗退し、十二氏族のうち、三氏族が失われるという事態となった。


 王国軍は、三氏族の人々を奴隷として連れ去り、そのオアシスを砂漠への足掛かりとして、ターキルの街を築いた。王国軍が常駐し、奴隷商人が横行する、大きな街じゃ。


 砂漠の民はターキルの街を奪い返し、また奪われ、百年の間、何度も攻防を繰り返し、多大な犠牲を出して来た。



 


 ばば様は、二人の子供の顔を見て、ほーっと息を吐く。


「いま、残った砂漠の民は九氏族のみ。

 残っている全人数は、往時の三分の一にも満たぬ」



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