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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


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3-3

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 わからない言葉がいっぱい出て来たけれど、まるで見てきたように語る、ばば様のリズムのついた細い声は、とても心地よかった。



「じんがいしゃって、なに?」


「『先に来た方々』とも呼ばれる、人にあらざる者たちの事じゃ。

 その英知で人々を守り、導いたと伝えられるが、姿かたちはさまざまじゃった」


「魔物みたいな、ばけものたちか。いてっ!」


 納得顔のキーヤの頭に、ばば様の杖が振り下ろされる。


「王国人のような言いようをするでないわっ。

 まったく、近頃のガキどもは生意気になりおってっ!」


 磐座の主様を奉ずる、トゥリアークの民の言葉ではない、と。ばば様はかんかん。


「いわくらのぬしさまは、じんがいの方なの?」


 あそこは神様を、お祀りしているのじゃないの?


「さあのう。

 砂漠の民の守護者、『運命の織り手』様のお姿を見た者はおらぬよ。

 常にお山と共に在る、『調和』をつかさどるひと柱様と覚えておけば良い」


 そしてばば様は、真剣にキーヤに向かって言う。


「魔物と戦うのが戦士の性。

 この先、様々な出会いがあろう。

 じゃが、どれほどの異形であろうとも、「意志」が通じるなら、「対話」が可能なら。

 相手は、『先に来た方々』の末裔じゃ。

 肝に銘じておくのじゃな」




 さて、どこまで話しておったかな。




 そうして王国は、人外の者を排斥し、他国の人間を奴隷として使役して、数百年にわたって富み栄えた。


 我等も狙われたものだが、広大な砂漠を挟んでの侵略は、被害が多く益が少ない。


 砂に守られた我らは、ある時は戦い、ある時は交易をしながら、王国と共存してきたのじゃ。




 しかし、その王国が、次第に陰りを見せ始めた。

 


 





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