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わからない言葉がいっぱい出て来たけれど、まるで見てきたように語る、ばば様のリズムのついた細い声は、とても心地よかった。
「じんがいしゃって、なに?」
「『先に来た方々』とも呼ばれる、人にあらざる者たちの事じゃ。
その英知で人々を守り、導いたと伝えられるが、姿かたちはさまざまじゃった」
「魔物みたいな、ばけものたちか。いてっ!」
納得顔のキーヤの頭に、ばば様の杖が振り下ろされる。
「王国人のような言いようをするでないわっ。
まったく、近頃のガキどもは生意気になりおってっ!」
磐座の主様を奉ずる、トゥリアークの民の言葉ではない、と。ばば様はかんかん。
「いわくらのぬしさまは、じんがいの方なの?」
あそこは神様を、お祀りしているのじゃないの?
「さあのう。
砂漠の民の守護者、『運命の織り手』様のお姿を見た者はおらぬよ。
常にお山と共に在る、『調和』をつかさどるひと柱様と覚えておけば良い」
そしてばば様は、真剣にキーヤに向かって言う。
「魔物と戦うのが戦士の性。
この先、様々な出会いがあろう。
じゃが、どれほどの異形であろうとも、「意志」が通じるなら、「対話」が可能なら。
相手は、『先に来た方々』の末裔じゃ。
肝に銘じておくのじゃな」
さて、どこまで話しておったかな。
そうして王国は、人外の者を排斥し、他国の人間を奴隷として使役して、数百年にわたって富み栄えた。
我等も狙われたものだが、広大な砂漠を挟んでの侵略は、被害が多く益が少ない。
砂に守られた我らは、ある時は戦い、ある時は交易をしながら、王国と共存してきたのじゃ。
しかし、その王国が、次第に陰りを見せ始めた。




