2-17
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あ。
振り返ったミーアは露骨に顔を顰めてしまった。
あの、いじめっ子の悪ガキ。
ミーアを見るたびに「泥あたま」とののしって、おっかけてきた一団の大将だ。
族長の家に属するこいつの縄張りか、ここは。
卑屈になっちゃいけない。こっちはばば様のお仕事で来てるんだ。
もうすぐ六歳になるんだから。まけるもんか。
と、大柄な男の子を睨みつけ。
「じゃましないで。
おしごと中です」
背中をしゃん、とのばして、答える。
「ふん、口ごたえする気か!
そんな色に髪を染めて一族に紛れ込んだつもりか。
おまえは『恥晒し』なんだ、とっとと失せろ」
「おしごと中!」
どん、ともう一度、今度は前から肩をつかれる。
よろめいたミーアの肩から、さっと紐が引き抜かれた。
作ったばかりの、ポシェットの紐。
「生意気な!
こんなに着飾ったって、お前は一族じゃないんだからな!」
「返して!」
ミーアは飛び上がった。
叔母ちゃんに見せる、大事なポシェットだ。
「取ーり返して見な。ほら、届くもんか」
ガキ大将は手を高く上げて、ポシェットを振り回す。
ミーアは泣きながら届かないポシェットに飛びつく・・・のではなく、うなり声を上げてガキ大将の膝にタックルをかけた。
「わ!」
タックルと同時に、いきなり膝裏を叩かれたような不思議な衝撃に、男の子は体制を崩す。
振り回したポシェットが、ミーアの座っていた踏み石に激しくぶつかった。
ぱしん、と嫌な音がした。




