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「磐座の御師殿があの混ざりものを引き取ったという」
「なんと、あの混ざりものを!」
「いままでいっさい弟子を取らなかったあの方が」
「あんなものを磐座に近づけて良いのか?」
「あれに『染め師』を継がせるおつもりか!」
「まあ、弟子にするとは限らぬ。
使い走りとおっしゃっておいでだ。
見習い試験まで、まだまだ年齢の足りぬ小娘。
下女という認識で良いであろうよ。
あのでかいうすのろといい、変わったものがお好きじゃからな、御師どのは」
「しかし、もうあのお年じゃ。
早く後継者を育てていただかないことには。
伝統の技が絶えてしまう」
「走り使いでもよい、もっとまともな者を使っていただけ」
「いままで巫女見習いの娘を何人も送ったのだが。
皆ひと月ともたずに逃げ帰って来おった」
「儂の孫まではねられおったわ。
生意気だ。知ったかぶりだ。物知らずだ。
汚れ仕事を厭う奴はいらぬ。
根性が足らぬと。
とにかくお口が悪いのじゃ。
こら、だれだ笑った奴は」
「いえ、失礼を」
戦士の天幕に加わってまだ日の浅い若者は、水煙草の煙に噎せたふりをよそおって、こみ上げた笑いを押し隠した。
根性か。
泥だらけの顔で年上の子供たちを睨みつけていた、あの紫の輝く瞳。
たしかに、根性だけはありそうだな。あの子は。