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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子
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 ダダンが帰った後、叔母は考え込んでしまって、ミーアの染めた髪に気付かぬほど。


 だがその夜、「そめしのばーちゃん」のお手伝いをすると言ったミーアの言葉に首をかしげた叔母は、翌朝早くにたずねて来た老婆の姿を見て、飛び上がったのだった。


「月の座の老師様!」

磐座(いわくら)の婆で良いわい」


 あわてて炉の上座をすすめる叔母に断りの手をふると、その場に佇んだままで言う。


「今日からミアリスをよこしなされ」


「ミアリスを、そちらに!?

え?今日からですか?」


 あまりにも突然の話だった。

 まだ五歳の子では、下働きにもならないだろうに。


「草摘みの手が欲しいのさ」

 腰が抜けそうな叔母に向かって、老婆はニッと嗤う。

「ま、オックの助手じゃと思いな」




 呼ばれたミーアは驚いた。

「え、ばーちゃんちに行くの?

 半月先じゃなくて、今?」


 これっ、そんな口のききかたをして!と、真っ青になる叔母に鷹揚に手を振り、老婆は言った。


「話が変わったのさ、さあ、荷物をまとめて支度しな」


 支度と言っても持ち物はわずかな着替えと、そして。

 大事なターロ板をミーアは握りしめる。

 これを持ってっていいんだろうか。


「大切にしているようじゃの。よしよし。

 ターロ板はおなごの大事な財産じゃ。

 たまにはここに戻してやるから、叔母御の技を習うがいいよ」


「!」


 叔母は息を呑んだ。

 技術を習う、というのは、その家のターロを継ぐ資格を持つということ。

 では、ミアリスを一族と認めてくださるのか。

 月の座の老師様のお口添えがあれば、十二歳になったあかつきには、巫女見習いの織り手の試験も受けさせてもらえるだろう。

 ああ、大姉(おおねえ)さま、あなたの娘が技を継げます。



「ま、当分は雑用係の使いっぱしりじゃ。

 そろそろ山道が億劫になってきたからの」



 叔母との別れもそこそこに、小さなミアリスは老婆と山へ向かって行った。




 あの小さなミアリスの、どこを見込んでくださったのか、と取り残されて半ば呆然としていた叔母だったが、その日の午後、権威付けに族長の弟を連れた叔父がやって来て、ミアリスを岩羊飼いの養女に差し出せと言った時、ああ、あの方は千里眼かと、心の中で手を合わせ、にっこり笑って言ったのだった。


「ミアリスは磐座の老師に召し上げられました」と。

 



 


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[一言] 更新再開お待ちしておりました。 最初から読み直してきます!
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