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短編集 ~お題で500文字小説~ 改訂版

お題:夏の花⑤

作者: 三原 やん

いやっはぁ!!この時期を待ってたZE☆


俺はカメラマン。

戦場カメラマンかって?

まぁ仕事を始めりゃ何処も戦場みたいなモンだけど・・俺はこの平和な日本から出た事は無ぇ。


この世の中は需要と供給。

可愛ければ、色っぽければOKなんて奴もいるが、季節感は大事にされてる。

そして初夏。

この時期に活躍するのが、そう、水着である。


まだ肌寒い時期に無理やり水着を着せて、早取りする事もあるが、寒さに震える女の子が健気に頑張る姿は痛々しいので、好んでやりたい仕事じゃない。

俺もプロだし、女の子のプロだし、何しろ仕事だ。やるにはやるが、こんな表情を引き出せるか?というとまた別の話である。

女の子の被れる仮面の数には驚嘆するし、俺にだって春の天候を夏に見せる技術はある。

が、所詮しょぜん、偽物は偽物なのだ。


「いいネ!じゃあ次はもっと胸を寄せる感じで…顎を引いて!目線こっち♪」


カシャッ、カシャッ


真夏の花…水着ギャル(死語)達が浜ではしゃぐシーンを撮影している。

もちろん仕事だ。

世の中に、こんな楽しい仕事が他にあるか?いや、無いね(反語)。


バイン、と自己主張する果実も素敵だが、個人的にはプルン、くらいが至高だ。

こう・・前かがみになって・・上目遣い来たよ!バッチリ!!


うはっ、楽しい☆

これは戦場じゃないね、むしろ天国と言っていい。


「いい表情が撮れたよ。じゃ、次は小道具使おう。」


さすがにグラビアアイドルは何を持たせてもうまくポーズをとる。

鏡の前で毎日、自身を研究する探求者なのだ。

シチュエーションは指定しよう。ある程度の題目が無いと、彼女達を困惑させてしまう。

あとは自分の魅力を引き出すポーズの引き出しを、好きに開け閉めさせればいい。

そして、カメラにどう写すかが俺の仕事。注文をつけて微調整を図る。


「いいネ、いいネ!」


口癖になってしまったが、本当に素晴らしい。いい仕事をしている。


ビーチボール、サンダル、パラソル、浮き輪、ゴムボート、麦わら帽子…

チェアに寝そべったり、女の子同士で顔と胸を競うようにを寄せ合って笑い合ったり。

ある程度撮ったら、定番の水の掛け合いだ。


夢中でシャッターを切る俺に、話しかける女性がいた。


「すみません!・・ここ、遊泳禁止なんです。」


「!」


美しかった。

白。第一印象を持っていかれた、透明感すら感じる肌。

どこかの若女将なのだろうか。華やかながらもどこか地味な色使いの和服が、よく似合う。


カシャリ。


心のシャッターが切られ、脳髄に、鮮烈に焼き付いたのがわかった。

いや、反射的にシャッターを切っていた。

さすがプロのカメラマン。自画自賛、そして保存(物理)だ。


その花は、目の前で謳歌している真夏の花なんて霞んでしまうくらい清楚で・・・


花は、蕾が開いて咲ききる前でも美しいんだ、って思った。


シャッターを切って以降、俺の体は動かない。

それだけの衝撃を受けたのだ。


あ。返事。

返事だけじゃ駄目だ。どうする?

この場を何とかして繋がなければ!


俺は、初めて体験するこの感覚をどうしていいのか分からず、しかし「何かしなければ」と焦り、手近な撮影道具を差し出した。


「よ…良かったらこれ…着てみてくださいッ!」


何やってんだ俺。

それは何でもござれなグラドルにさえ拒否された、「際どい水着」だった。

手渡され、ハラリ、と広がったそれを見た女性は一瞬、呆気にとられた様子でそれを見た。

が、一気に顔を紅潮させる。


「キャアァッ!」


バッチーーン!!!


俺の頬にピンク色の花が咲いたのは言うまでもない。






title:夏の花 ~カメラMan~

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