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まとめ:現代では「判官贔屓」されない義経。むしろ…

<義経嫌いも、義経卑怯説も、それ自体が悪ではない>

 現段階で私が知る知識を元にしてですが、ひとまずまとめました。

 義経卑怯論について一通り反論したつもりでしたが、いかがでしたでしょうか。

 歴史の見方としてこういうものもあるのだな、とひとつの読み物としてとらえていただければ、大変ありがたいです。


「義経は卑怯」とは私は特に思わないので、このように私情を多分に交えた文章になってしまいましたが、今もこれからも「アンチ義経」な方々はおられるでしょう。

 この文章を読んでも、やっぱり卑怯だと思う人もいると思います。

 その感性は、個性であり、個々の健全な感覚であり、私の文章などが害せるものではありません。

 多様な価値観が溢れる社会の中で、大切な個性として、抱き続けていただければと思います。

 私はただ、世に流布する濡れ衣の一端を晴らしたかったに過ぎないのです。


 私が、現存する全ての史料の原文を読み解き、記憶しているわけではありません。

 知識の古さや誤りは、当然あると思います。

 その際は、ぜひご指摘ください。適宜、文を改訂してまいります。



<判官贔屓の幻想>

 書籍でもネットでも、義経と言えば「判官贔屓ほうがんびいき」に言及されます。

 日本人は悲劇が好きで、悲劇的な、立場の弱い人物に非常に肩入れする、という価値観のことです。義経の役職から生まれた言葉ですね。

 ある研究書では「本書は義経に厳しい内容になり、判官贔屓からの反論は予想される」と後書きにありました。

 ネット上でも、「義経好きは判官贔屓してるだけ」「判官贔屓によって過大評価されている」という声は頻出しています。


 しかし、実際にはどうでしょう。

 皆さんの周囲に、判官贔屓によって、その悲劇性によって、義経が好きになった人はいるでしょうか。

「軍略がスゴい」「静御膳とのロマンスが素敵」「破天荒なヒーローでかっこいい」そんな理由で義経を好きになった人はいても、「可哀想だから好き」という人がいるでしょうか。

 その悲劇性は彼の人生をドラマチックに彩ったとしても、それを理由に義経を好きになる人はいるのでしょうか。

 それぞれの人々が持つ義経好きの理由と、判官贔屓的な意識とは、影響はあるでしょうが、別個のように思えます。

 むしろ、判官贔屓にとらわれているのはアンチ義経の人々の方ではないでしょうか。


 判官贔屓が日本人の性だとしても、私は、価値観の多様化した現代社会においては、義経ほど「判官贔屓されない」人物も珍しいと思っています。

 だって、同じように奇襲や放火をしていても、平清盛や知盛や重衡や源義朝がやるのは特に問題視されないのに、義経がやると「卑怯」なのですから。

 よく知られた人物だけに、情報化社会の中で軍略の非凡さが知られ、また「卑怯」「掟破り」といったマイナス方面もよくクローズアップされており、「可哀想」という価値観が相対的に弱まっているからかもしれません。


 現代において、むしろ義経がさらされているのは、「判官贔屓」ではなく「出る杭は打たれる」という人間の性質ではないかと思います。

 本当かどうか分からない風聞が、調べもしていなかったり大して興味もなかったりする人たちによって面白おかしく広められ、誹謗中傷の中で、嘲笑・見下しの材料として消費されていく。

 作り話だらけの写真週刊誌や報道、噂話を頭から信じて、個人の生活まで侵害するほどのバッシングを繰り広げる人たちもいるのが世の常です。

 800年前に死亡した物言わぬ有名人、それも一般的には英雄とされている人物など、そういうタイプの人には格好の獲物なのかもしれません。


 しかし史料の中で、本当かどうかなど確かめようのない「史実」の枠をはめられながら、それでも私たちの想像の世界を、英雄たちは悠々と駆け巡っています。

 濡れ衣を着せて指を指すより、ずっと楽しく歴史を味わう方法は、いつの世もあるはずです。


 史料がある。

 伝説がある。

 本当に、そうだったかもしれない。

 本当は、そうじゃなかったかもしれない。


 既に変えようのない過去だからこそ無限に広がる歴史というフィールドを、ロールプレイングゲームの中に飛び込むように、笑顔で遊び回ってはみませんか。


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