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壇ノ浦の合戦の義経は卑怯か? 源平ラストバトルの肝は、潮流ではなく、海の外にこそあった!(と思う!)

<非戦闘員への攻撃>

「卑怯な義経」論の代名詞でもある非戦闘員攻撃については、前作で書いた通り史料的には何の根拠もありません。

 また、この戦の最後には安徳天皇や非戦闘員の女御たちが入水自殺しており、「非戦闘員を巻き込んでいる」と義経が批判されている本も読んだことがあるのですが…栄枯盛衰の中、一族の壊滅を儚んでの自殺すら責任を持たせるのは、さすがに乱暴というものです。


<人質が「卑怯」か?>

 ここでは上記以外には、「平家側のある武将の息子を人質にとって寝返らせた」というのが義経の卑怯ポイントとして上がってきます。

 しかし、この人質が本当だったとして、摂関政治からこっち、天皇との外戚戦略も含め、子供を人質にする戦略は武家の内外で横行していました。「親が差し出す」のはいいけど「武力で人質にとる」のは許せない、ということであれば(どちらも同じ人質だとは思うのですが…)、それはもう仕方ないでしょう。


<壇ノ浦での義経の軍略(の想像)>

 これ以外には特に「卑怯」はないと思うので、義経の軍略について少し触れます。

 有名なのが「潮流の変化」説で、午前中は平家側が上流となり、午後に源氏側が上流となるように潮の流れが変わったため、源氏が有利になった…というもの。

 かなり世間に定着している説で、ガイドブックなどにもほぼ載っています。しかしこれは史料にあるわけではなく(一応『平家物語』には、開戦当初は平家が波に乗って有利に攻めた、という記述はある…が、流れが変わったとかそれで源氏が有利になったという話はなし)、ある有名な学者さんが大正時代に唱えた説です。

 現在では、「元になった明治時代の水軍のデータが信頼できない」「潮流は毎時1ノット程度でさほど影響はなかったはず」「そもそも潮流の変化は海戦の有利不利に影響しない」などの反論もあり、信頼しにくい説となっています。

 なので、義経がこれを利用したというのは疑わしいです。


 むしろ、注目すべきは海の外です。

 この時、どうやら平家は陸地の拠点を失っていました。九州は範頼が押さえ、四国は義経が屋島合戦以降に押さえたので、九州と本州の間の壇ノ浦に追い詰められた平家は船上生活を強いられます。

 当然、食料や武具の補給はできません。

 ですから、平家の持つ武装は限られています。

 壇ノ浦合戦の所要時間は史料によって異なりますが、半日くらい戦い続けたというものもあり、少なくとも短期決戦とはならなかったようです。

 推測ですが、義経は序盤有利に攻め込んでくる平家に対し、長期戦を期して消耗戦を挑んだのではないでしょうか…。

 戦いが長引いては打つ手がなくなる平家はそれこそ序盤に果敢に攻めますが、いずれ矢は尽きます。

 やがて陸(九州)からは範頼軍、海上からは義経軍から射撃でされたとありますし、平家はどんどん追い詰められていったでしょう。

 一ノ谷に続き、またも挟撃。しかも海上ですしね…。


 また義経は、壇ノ浦決戦に至っては奇襲なんて全く埒外らちがい、猪武者どころかまた一ヶ月くらいかけて舟の準備その他、戦の用意をしています。

 やる気です。完全にここで仕留めるつもりです。

 怖いわこの人…。


 前述の裏切りもあったなら(これによる平家側の作戦の漏洩もあったというので)、もう源氏側の必勝です。

 史料から私が想像できるのはそんなところですが、義経のこの「必勝体制」の構築が恐ろしいと思います。

 繰り返しになりますが、「奇襲連発」が怖いんじゃないんです。

 とにかくこの、「目的達成のためにはどうすればいいか?」という、逆算方式で確実に目的地にたどり着こうとする、下調べや発想や手段の練り方、この徹底ぶりこそが、義経の軍略家としての本領なのです。

 この頃になれば、情勢自体がもうかなり源氏優勢なのですが、義経は最後まで気を緩めなかったように見えます…。

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