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屋島の合戦の義経は卑怯か? 民家に放火して「大松明」作戦、そしてまたもバックアタック! 「当時の民衆」と武家とは?

 一の谷の合戦の後、本州から船で離れた平家は、四国の北東端にある屋島に布陣します。


 範頼が本州(中国地方)から攻めてみるものの、なかなか攻略できません。

 義経は嵐の中で船を出し、四国の南東部に到着。屋島目掛けて北上しながら次々に平家の射ちます。

 屋島の平家は義経の登場に慌て、何しろすぐそこに幼い帝(安徳天皇)もいるものですから、急いで逃げようと船に乗り込みます。

 沖から見てみると、義経の部隊はかなり少数。しまったと思っても、もう取り返しのつかない平家は更に西へと逃れていきます。

 この時、有名な那須与一なすのよいちの扇打ち落としなどが展開します。

 なお義経はここでの航海のために、約一ヶ月かけて周到に船の準備をしています。

 奇襲のために猪武者ぶりを発揮して、お目付け役の梶原景時と激論の末、嵐の中を漕ぎ出た…というのは創作のようです。景時はこの時、義経とは別部隊(範頼側)にいたようですし。

 景時には「総大将が危険に突っ込むとかあり得ない。こんな人が武家のリーダーになんてなれるわけない。こんな愚かな人見たことない」と言われて叩ッ切ろうとしたり、戦いの終わった後から来た景時に「六日の菖蒲(菖蒲は五月五日に飾るので、「遅いですねえ」というイヤミ)」と言い放つなど、『平家物語』ではなかなか人格面でアレなところを見せる義経さん。


<背後からの攻撃にまたもやられた平家>

 一ノ谷では山から、屋島では海から…とまたしてもバックアタックにやられた平家。

 しかも配置しておいた部隊は慌てふためいて本陣まで逃げてきて、不安を煽るだけの有り様。

 ろくに戦闘もなく本陣を引き払って避難と、かなり平家にとってはいいところのない合戦とみられます。

 平家の軍隊構成は「少数の直属兵士+各地から徴収した大多数」というもので、清盛当時の朝廷との結び付きが強かった頃はよかった(朝廷の威光でめっちゃ徴兵できた)んですが、朝敵となったこの時期はかなり兵数が減っていたかもしれません。


<屋島での「義経の卑怯」>

 ここでのアンチ義経の「ルール違反」は何か。

 それは、義経の「大松明おおたいまつ」作戦です。

 行き掛かりの民家に火を放ち、少数の自軍を大軍に見せるというもの。

 全く誉められたものではありません。

 しかしこれも、当時の世相を鑑みて判断する必要があります。

 保元・平治の乱では、奇襲・夜襲と共に放火作戦もよく見られます。

 平治の乱では、平家である平知盛たいらのとももり平重衡たいらのしげひらが都や民家や仏閣に火を放ち、特に重衡の放火は南都の大火の原因にもなっています。

 ますます「当時のルール」とかいうものの空虚さが分かろうというものですが…。


 そして、源義仲の入京や、頼朝VS平家の富士川の合戦では、民衆が財産などを隠したり、逃げ出したり、お寺に預けようとするなど、身の危険を覚えるシーンが出てきます。

 これは当時の、武家(や貴族)による民衆への扱いを表していると思います。

 戦には今も昔も美しさなどなく、武力なきものは虐げられていたのでしょう。身分制度があって当たり前だった当時の階級意識は、今よりも強固だったと思われます。


 つまり、義経が卑怯とか非人道的というよりは、当時の武家と民衆の格差が下敷きにあり、武家としてはさほど問題とされる行為ではなかったとも思われるのです。

 義経は、アンチ義経が唱える「卑怯な行為」全般では頼朝から注意されてもいませんし、礼をわきまえない義仲を嫌悪していた様子の朝廷(後白河法皇)からは、重用される一方です。


 これがアンチ義経にかかると、義経がやったということだけが喧伝され、「卑怯」「ひどい」となるのです。

「民衆を当然のように犠牲にする世相は好きになれない」のはずが、「民衆を犠牲にする義経は卑怯者で、当時も問題視されていた」に変換される怖さですね。

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