第77話 街を襲う天使
「あ、イル、どうしたの?」
私がレンちゃんのダンジョンについたとき、すでにことは終わっていた。
目の前には、見るも無残に引き裂かれた魔獣の姿。おそらく、レンちゃんを仕留めに来たのだろうが、買えりうちにあったらしい。
彼女の周りには大量の魔物。ダンジョンから湧き出たものらしいが、あれらは魔獣の攻略対象外だったみたいだ。
「いや、何でもないわ。その魔獣を倒しに来たのだけれど、いらぬお世話だったみたいね。」
余裕の表情をしているレンちゃんを見て、私の心配は杞憂だったことがわかる。
私はすぐに引き返そうとする。
「あ、イル、」
そこを引き留められる。何かあったのだろうか?
「どうしたの?ダンジョンで何か問題でもあった?」
「いや、だんじょんはだいじょうぶだけど・・・きいたはなしによると、まちがもうまずいって・・・」
彼女の言葉を聞き、私は耳に意識を集中させる。すると、様々な音が聞こえてくる。
だが、戦闘音らしきものはあまり聞こえてこない。聞こえてくるのは、破壊音ばかりだ。
「ほとんどの人はもうすでに負傷なりなんなりで離脱したみたいね。」
「そうなの、もうみんなたたかえなくて・・・まちが・・」
レンちゃんは申し訳なさそうな顔をする。
「あなたのせいじゃないわ。教えてくれてありがとうね。あとは私に任せておきなさい!!」
私は彼女の返事が返ってくる前に走り出す。できるだけ音が多い方向に、全速力で走った。
私が向かった先では、天使たちが街の破壊行動をしていた。
彼らは無表情で、ただひたすら破壊を繰り返す。そこに意味などなく、ただただ与えられた命令をこなす者たちの姿。
天使というのは厄介だ。彼らは美徳を良しとしており、そのためか命令に忠実だ。
ただ、作業のようにそれを繰り返す天使たちに、私は攻撃を仕掛ける。
「そこで何をしているのかしら?」
街の破壊に夢中になっている天使の一人を、不意打ちするように攻撃した。それは悲鳴も何も上げずに、倒れ伏した。
そしてもう動かない。糸の切れた人形のようになる。
1人目はそれでいい。だけど、ほかのやつらが私の襲撃に気づき、即座に襲い掛かってくる。
おそらく、天使たちに与えられた命令は、私たちの排除が第一、街の破壊が第二っていうところね。
私は武器を構え、天使たちを迎え撃つ。
視界に入っているだけでも天使の数は20は超えている。
私がいかに熾天使だったといっても、あの数が相手では多勢に無勢だろう。
そのため、少し引き気味に戦うことにする。1人倒して、その場から離脱し、距離をとる。
それの繰り返しだ。
このままこれを続ければいつかは―――――――――
その思いで、私は天使を狩り続ける。だが、私の戦いが終わる気配はまるでない。
倒せば倒しただけ、天使が補充されている。そんな感じがする。
見れば、初めは20程度しかいなかった天使は、もうすでに40は超えている。
初めは少し余裕があったこの戦いも、今になってはそんなものどこにも残っていなかった。
「いい加減、しつこいわね・・・」
私は愚痴をこぼしながら天使から逃げるように戦い続ける。
その時、疲れのせいか私の足が地面の出っ張りに取られてしまう。
―――――――あの時と、同じだ。
地面に躓き、体勢を立て直す少しの間に、私は天使たちに包囲されてしまった。
無表情の天使たちの顔が私の目に映る。
――――ッチ、ここまでみたいね。
こうなってしまっては、私にできることは1つだけだ。
私は、あの時同様に、神器の指輪の力を発動させ、結界をはる。
天使たちに自我はないのだろうか?彼らは結界に阻まれながらも、攻撃の手を緩めることはない。
この結界は、一定以上の威力の攻撃を受けると破壊される。だが、それは一撃で許容量を超えた場合の話だ。
こうやって、小さな攻撃ならいくら受けようとも結界が壊れることはない。
この神器は天界から盗み出したもののため、その情報が出回っていないとも限らない。
にもかかわらず、彼らは攻撃をし続ける。
この調子なら、一時間は耐えきれる。
天使たちは攻めきれない私を相手にそこに放置するどころか、逆に集まってきている。
一時間後、この結界が解除されたときの私がどうなるかはわからないが、この間はとりあえず私も街も安全だ。
さて、これからどうするか考えなければいけないわね。
今回は数日あいた上に、文章量も少ないですが、次回から物語の終わりまではいつものように投稿しますので、どうかよろしくお願いします。




