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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第4章 始まりの戦い
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第75話 魔獣との戦い

数日空けてしまって申し訳ないと思っております。

――――強い?いや、違う。


それが私が目の前の魔獣と戦ってみている感想であった。そう、強くはないのだ。だが、私はどうしてもそいつを倒せないでいた。

その理由はその魔獣の防御力にあった。


何故か私の攻撃はすべてはじかれてしまうのだ。

いくつもの武器を私はそいつにたたきつけてみた。しかし、その一つたりとも魔獣の体を傷つけることができないでいるのだ。


皮膚だけでない。その防御力は眼球にまで及んでいる。

どういう理屈かわからないが、私の攻撃は通用しないらしい。


その事実に、内心焦りながらも私は戦闘を続ける。

見ると、視界の端ではノーストリアとマナリアが奮戦している姿が見られる。

彼女たちは相手の攻撃をよけ続ける、言ってしまえば防戦一方だ。そしてその顔には疲労の色が見える。

早く駆け付けたほうがいい気がする。


しかし、それをするには目の前にいる魔獣をどうにかしなければいけない。

そしてそれをするための攻撃手段が自分にはない。完全な行き詰まり状態だ。思っているより状況は悪いみたいだ。


戦闘中に耳が拾う音を聞いている限りでは、奇襲によって得た優位も失われてきているみたいだ。


これは早くなんとかしなければ不味い。


焦る気持ちばかりが積もっていく。その結果、何が起こるかは想像に難くないだろう。

私は状況を打開すべく、目の前の魔獣をいったん無視して、マナリアとノーストリアの救援をするという、明らかな判断ミスをしてしまった。


「マナリア、ノーストリア、このままじゃらちが明かないわ、一度引くわよ。」

私は目の前の魔獣から離れるように、近くの家の屋根に飛び乗った。

「え?は、はい!!」

次に戦域から離脱を試みたのはノーストリアだ。彼女もタイミングを見計らった後、すぐに相手の手の届かない場所に移動した。

奴らは所詮獣であり、空を飛ぶなどの手段を持ち合わせているわけではない。

その為、魔法などを用いて屋根の上などの高い場所に上ってしまえば、少しの時間は稼ぐことができる。


そして、最後にマナリアが逃げる――――――――ことができない。


彼女は肩で息をしながら、目の前の魔獣の攻撃をよけ続けている。

「はあ、はぁ、本当に、しつこいですね・・・」

彼女は普段は見せないような悪態をつきながら、その魔獣の目の前を舞う。


爪の振り下ろしに対しては体を大きく横に飛ばし、牙による噛みつきをより距離を詰めることによって回避する。

その行動は常にぎりぎりであり、いつ捕まってもおかしくないように思えた。

私と戦っていた魔獣と比べて、マナリアが相手取っていた魔獣はどうやら少し強いみたいだ。


私は彼女が離脱する時間を稼ぐべく、強欲のカードを使って鋼鉄の槍を持ちだす。

そしてそれを少しだけ後ろに引き、そのまま投げつけた。あまり意味はないかもしれないが、ついでに《筋力強化》の魔法もおまけしておく。



私の投げた槍は、そのままマナリアの目の前の魔獣に少しだけ突き刺さり止まった。


――――――――――え?攻撃が効いた?


何故かよくわからないが攻撃が通じた。その予想外のことに少しだけ驚いてしまう。そのすきを突かれたのだろう。

私の槍をその身に受けた魔獣は、その脚力をもって屋根の上まで一跳びで登り、その勢いのまま私に体当たりをかましてくる。


メキメキ・・・・


自分の体がきしむような音が鳴る。そして私の体は、そのまま屋根の下まで吹き飛ばされた。

その先には、先ほど巻いた魔獣たちの姿がある。


下手にノーストリアを離脱させたため、私の目の前には二体の魔獣、その上、私を吹き飛ばしたやつはもうマナリアには目もくれずこちらに向かってきている気配がある。

私が一時離脱命令を出していなければ、少なくともあの状態を維持できたであろうが、それを今言っても仕方がない。


今はこの状況をどうにかすることだけを考える。


――――何か、何かないか?


自分の手札を確認するが、この場を切り抜けられそうなものはない。できそうなことといえば、再び高いところに上ることだろうが、それを目の前の魔獣たちが許してくれるとも思わない。


私が必死に頭の中で打開策を考えているとき、その声は聞こえてきた。聞き覚えのある、どこか癪に障る声だった。


「あなたたちは何をやっているのですか?そこの女性は1号に任せて、ほかの者たちは各々の仕事を全うしなさい。」

男性の声、そう、ルーフィルのものだった。

彼の言葉を聞いた魔獣たちは、先ほどまで私が戦っていた奴1体だけを残し、どこかに去っていった。


「あなた、来ていてのね。てっきりこいつらだけ送り込んであとは自宅でもしているかと思ったわ。」


「まあ、君みたいな愚か者なら、そうしたでしょうが私は賢いもののため、そのような行動はとれないのでんですよ。」


私は彼に挑発のつもりで声をかけてみたが、どこまでも上からだ。その態度を全く崩す様子はなく、私を見下し続ける。


そして・・・・1号と呼ばれた魔獣が私への攻撃を再開した。

私は先ほどと同様に、鋼鉄の槍を取り出し、《筋力強化》を行い迎撃しようとする。しかし、その槍が魔獣の身を貫くことはない。


ただただ、無慈悲にはじかれ続けるだけだ。


「いやはや、無駄だと分かっているのに攻撃を続ける様はずいぶんと滑稽ですねえ」

私たちの戦いを観戦しながら、野次を飛ばしてくるルーフィル。挑発的な物言いに、私は少しだけだが怒りを覚えた。


だが、私の怒りはその男には届かなかった。彼はすましたような顔で私たちの戦いを観戦し続けるだけだった。







私たちの戦いはとても長期的なものになるだろう。私がその魔獣の弱点を見つけるのが先か、それとも私の体力や集中力が切れて捕まるのが先か、根競べになりそうだった。

その間にも、戦況は変化してくだろう。


そう思うと、早めにこいつの弱点を探り、倒さねばならない。そしてひとまず上にいる奴もだ・・・


その思いが届いたのだろうか?

何かが空中から、この場に向かって落ちてきた。そしてその落下地点には先ほどまで私と対峙していた魔獣がいる。


しかしその姿は、先ほどまでのギリギリ生物であると分かるような姿ではなく、ぺちゃんこに潰されて原型をとどめていなかった。


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