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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第4章 始まりの戦い
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第74話 天使襲来

空に空いた穴、そこから三体の魔獣が出てきた後、それが閉じる前に大量の天使がその穴の中から出現した。

そしてそいつらは、みな一様にこちらに向かってくる。


魔獣は大地を駆け、天使は空を飛びながらかなりの速度で一切の迷いなく進行する。

魔獣は三体、天使は正確な数はわからないがざっと数えて200入るだろう。

先の戦いでは、多くても30程度の天使しかいなかったから、単純な数の上では6倍以上だ。


それだけ、天界は神器の回収に本気を見せているということだろう。


「2人とも、敵さんがやってきたわよ。」


「え!?もう来たんですか!?まだこんなに暗いですよ!!?」


「あ!!本当だ!!もうこっちに向かって飛んできてますよ!!」

敵の襲撃を知らせると、信じられないという声を上げるマナリアと、事実を目の当たりにしてそれをそのまま口に出すノーストリア。

どちらも、まだこの状況が信じられないようだ。しかし、私たちとてこの一週間、何もしていなかったわけではない。

敵が攻めてくるのが分かっていたのだ。それ相応の対策は立ててあるのだ。


私たちは、すぐさま戦闘態勢に入り、そのまま天使たちがこちらに来るのを待った。



あまり時間が経ったようには思えなかったが、天使たちはもうすでに街の中に入って来た。

そしてすぐに街に向かって攻撃を開始する。


攻撃対象は街の建物だ。

天使たちは何のためらいもなく、建物を破壊した。そしてその中からはいまだ寝巻のまま状況が理解できずに立ち尽くしているその家の住人――――――――などではなく、完全武装の冒険者があらわれた。


そして冒険者たちはすぐさま反撃に入る。

突然の出来事に、動揺してしまったのだろう。天使たちは思わぬところからの反撃に、なすすべなく倒されていく。


そこで一度、天使たちの攻撃が止んだ。

こちらを警戒しているのだろう。


――何故?そろいもそろって完全武装なのか?なぜ、どこの家からも冒険者たちしか出てこないのか?


彼らは内心そう思っているはずだ。

その問いに対する答えは、考えてみれば簡単に見つかるものだったのだが、天使たちではわからないみたいだ。


そう、簡単にわかったのだ。天使たちの目的と、それを達成するために用いる手段など・・・


考えてみれば妙な話だった。

何故、天使は集団でこの街を襲ったのかということだ。神器が回収したい。というのが相手の目的だったのは、ミカエラが自ら来ていたことから間違いないだろう。


しかし、それならば街を襲う必要はない。私をおびき出すためにそうした?

それもあったかもしれないが、本来の目的は別にあるのだろう。


その目的は至極単純―――人質だ。

天使たちはこの街全てを人質に取り、私に神器とトレードを持ちかけようとしていたのだろうと推測される。

そう考えられる理由はいくつかあった。


まず第一に、戦死者がほとんどいなかったことだ。

いや、より正確に言うなら、戦死者が冒険者しかいなかったことだ。

不思議なことに、自らを守る手段を持っていないはずのただの街の住人には、死者が出ていなかったとのこと、

ただ単純に街を落とすのなら、抵抗しない住民を一定数見せしめに殺したりするのが普通なのだが、それすらしなかったのが疑問に思ったのだ。


そして次は私がそもそもその日にあの街にいなかったことだ。

私はノーストリアの助けにこたえるべく、あの日あの場所に現れた。言ってしまえば、それに気づかなければ私はあの戦いに参加することすらしなかったということだ。

初めから、街のほうを襲うつもりだったのだろう。


もしかすると私が街の外に居を構えていることを知らない可能性もあったが、今日、まだ人が眠っているであろう朝に、こうして天使が襲撃に来ていることを考えると、その推測は正しかったといえる。


私が逃げていないと確信したかのような思い切りの良さは、私の場所が大まかながらもわかっているための行動なのだろう。

もし私がこの一週間の間に、ほかの街に逃げたりしていたら、その街が襲われたに違いない。

それならレストアの街に逃げ込めば何とかなったのかもしれないが、万が一この読みが外れていた場合、この街の人間に申し訳ないと思ったため、今回は正面から立ち向かうことにしている。


他にも判断材料になりそうなことはいろいろあったが、大まかにいえばこの二つが主な要因である。

その為、私は冒険者ギルドから冒険者に、今日、いつ襲撃があってもいいように、呼び掛けてもらっていた。






私の読みが当たったこともあってか、現在は優勢であった。

しかし、それも長くは続かないだろう。


奇襲じみた攻撃によって一時的に優勢になっただけに過ぎない。

体勢を立て直されたら、その優位はすぐに失われるだろう。それに、数の上ではこちらは確実に負けているのだ。


天使が約200体に対して、天使と戦えるだけの冒険者の数はたったの60人しかいない。

1人につき3人を相手取らなければならない計算だ。

数字の上だけの話をしても、こちらが不利なのは、目に見えている。

その上―――――――――




「グアアアアアアアア!!!」

一番の問題はあの街中で暴れまくっている3体の魔獣たちだ。

その性能は1体1体が私が戦って勝てるかどうかといったところだ。それに、それぞれ特性が違うため、即興で対策を練ることも難しいだろう。


「このままじゃ不味いわ。二人とも、出るわよ。」

私は窓枠を蹴って、街中に出る。それに続いて、マナリアとノーストリアもだ。

出ていくのは今、一番暴れている魔獣の前だ。

こいつらは厄介なことに、3体同時に行動しているため、私一人ではどうしようもない。

その為、彼女たち二人にも来てもらうことにした。


普通に考えて彼女たちが勝てるは思わない。それが一緒に魔法の特訓をしてきたのを思い出しての私の彼女たちに対する評価であった。

その為、彼女たちには時間を稼いでもらうことにする。

もしかしたら、この1週間で劇的に何かが変わり、戦える程度にはなっているかもしれないが、そんなものに期待するようではこの戦いは乗り切れられないと考えたのもあった。


「グルルルルルル・・・・」

目の前に現れた私を見て、魔獣の一体が威嚇するように唸り声をあげる。


そしてすぐさま、こちらに向かってとびかかってくる。

こうして、私たちと天使+αとの戦いの火ぶたは切って落とされたのだった。


次回から当分は戦闘パートですね。

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