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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第4章 始まりの戦い
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第70話 精霊の加護

「お久しぶりです。」


地面に横たわっている男に向けてルークさんがそう言った。

ここから見てもかなりの巨体、軽く4メートルはあるだろう。僕は自然と身構えてしまう。


しかし、その男は起きる様子はない。

どうやら眠っているため、こちらには気づいていないようだ。


「あの!!起きてくれませんか!!」

だが、それでは困るのだろう。ルークさんは強くその体を叩くように揺さぶった。

しかし、何も反応はない。


とうとうしびれを切らしたのか、ルークさんは最終手段に打って出た。

先ほどまで腰に下げていた剣を抜き放ち、高らかに掲げたのだ。


「あ、あの、ルークさん?なにを・・・」

僕の言葉より早くルークさんは行動を開始する。


「いい加減、起きてください!!」

その言葉とともに、彼の剣は振り下ろされ、その男の背中にたたきつけられた。


ここ数日、特訓の相手をしてもらっていたからこそ、僕はその攻撃がそこそこ強めに振るったものだということが分かった。

それ故に、僕は慌てた。


「あ、寝ている人にいきなり斬りかかるなんて、何をしているのですか!!?」

僕はルークさんのもとに駆け寄り、そう問いかける。

しかし彼は、こともないといった様子で、


「この人が起きないほうがいけないんです。僕は何も悪くありません。」

と答え、先ほど彼が切った部分を見た。


それにつられた僕も、その方向を見る。すると、


――――その背中は傷がついていなかった。


確かに、剣がたたきつけられたのだ。それはこの目で確認した。しかし、切り付けられた場所にはそれらしき傷はない。

しいて言うなら、周りより少しだけ赤くなっているくらいだ。


そして攻撃を受けたのが聞いたのだろうか?その男は唸るような声を挙げながら、体をゆっくりと起こす。


「ううう・・・だれじゃ?気持ちよく眠っておるところに・・・」

体を起こしたその人は、とてつもない威圧感を放っている。


これは単に体が大きいというだけの話ではない。強者が放つ、特有のものだと感じられた。


「お久しぶりです。僕です。ルークです。」

ルークさんはその威圧を受けながらも、平然と話しかける。

話しぶりから、知り合いなのだろう。


「ん?おぉ!!いつぞや来ていた人間か!!大きくなったのう!!それで?今回は何用じゃ?」

僕たちが何か用事があってここにきているのはすでにばれているらしい。

その大男は再開の言葉は最低限に、要件を早く言うようにこちらに促してくる。


ルークさんはこの人物の性格を知っていたのだろう。

予想通りの反応、といった様子で、すぐに答えを返す。


「はい、今回は僕の、僕たちの体自身に加護を授けてほしいのです!!」

彼はかしづくようにそう言った。

僕はその言葉に耳を疑った。そして大男に顔を向けた。


その瞬間、僕の頬に大量の汗が伝う。


先ほどまでは、少し怖いがどこか優しそうな老人という印象を受けていたその大男だったが、今はその面影はどこにもない。

ただただ、恐ろしいだけだった。


そしてその様子のまま、自分の足元にいるルークさんに語り掛け始めた。


「おぬし、それがどういう意味か、分かっておるのだろうな?わしと戦い、勝利するということじゃぞ?」


「はい!重々理解しております。」


「言っておくが、戦うとなったらわしは手加減はできんのだぞ?それでもやるというのか?」


「はい!僕たちは直近の危機に対処するために、力が必要なのです。」


「それほどまでに強大な敵が迫っておるのか?言っては何だが、おぬしに過去に与えた力だけで十分ではないのか?」


「いいえ、それでは自分の身は守れても、ほかの人を助けることができません。」



・・・・いまいち状況が呑み込めない。

おそらく、この大男は何らかしらの力を持っていて、それをどうこうって話だとは思うけど、説明がなければわからない部分が多い。

その為、僕は思い切ってその会話に入った。


「あの、ルークさん。これはいったいどういうことなのですか?」

その言葉に彼は答えない。しかし、代わりというように大男のほうが答えた。


「このものは今、わしの加護、大地の精霊の加護をその身によこせと言っておるのじゃ」

簡潔な答えではあったが、僕にとってはそれだけで十分すぎる情報だった。


今、この大男は自分のことを大地の精霊と名乗った。

精霊は総じて、自分の出す条件をクリアすることによって、加護をくれると文献に乗っていたのを読んだことがある。

その内容は精霊ごとによってまちまちだが、同じ精霊が別の課題を出すことはないらしい。


一説によれば、そもそも課題を変更自体ができないのではないか?ということだったが、それは精霊の個体数が少なく、目撃例も少ないために明らかになってないらしい。


そして今の状況だ。


ルークさんは僕たちにこの精霊に、加護を授けてほしいと願っている。

武器なのではなく、体自信にだ。


精霊の加護を得る際に、直接体に与えるか、それとも道具を介すかによって違いがある。

道具に与える場合には、課題は必要ないのだと・・・


しかしそれは体に直接加護を与える際には必要だということで・・・・



「そこまで言うのであれば、いいじゃろう!!わしと戦い、そして負けを認めさせた暁には、わしの加護をその身にくれてやるぞ!!」


どうやら、僕は今から、大地の精霊と戦わされるらしい・・・

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