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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第4章 始まりの戦い
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第67話 竜の弱点

その竜は私が絶望的な表情をしたことに満足したのだろう。

私のほうを見ながら、その筒から炎の弾が打ち出された。

「ノーストリアさん!!避けて!!」

遠くからマナリア先生の声が聞こえてくる。しかし、

――――避けられない。


目の前で笑っているような竜を見ながら、私はそう判断する。

だから、


炎爆(ファイアボム)!!」


私は自分の足元に向けて爆発の魔法を放つ。


「きゃあっ!!」

そしてそれを受けた私の体は、大きく吹き飛び、その竜の攻撃の射線上から外れることに成功する。

しかし私の体には小さくない火傷を負ってしまう。


私はもといた位置まで吹き飛び、体を引き起こす。


「ノーストリアさん、大丈夫ですか!?少し待ってください!!治療(ヒール)


マナリア先生が回復系の魔法をかけてくれたのだろう。

私の火傷が少しずつ癒えていく。この調子なら、あと10分もすれば全回復できるだろう。


「すみません・・・失敗しました・・・」

私は自分勝手な行動をしたこと、状況を好転させるどころか、悪化させたことに対して謝罪の言葉を述べる。

それを聞いたマナリア先生は、

「そんなことはどうでもいいんです!!けがは大丈夫なんですか!?」

と、私の身を案じるような言葉しか口にしない。

私の失敗に対して、何も思っていないということはないはずだ。

しかし彼女はそのことについては一言も口にはしなかった。私は、それに気づいて、先ほどまでの自分の行動の浅はかさを悔いた。


そして今やるべきことを冷静になった頭で考える。


あの竜は今もなおこちらにその砲塔を向けて炎の弾を打ち続けている。

その勢いは最初のころから衰えることはない。


かなりの距離をとっているから、回避できている節があり、先ほどのように近づいたりすればすぐに被弾して今うだろう。

何か手はないか、そう思いながら私は相手の攻撃を観察する。


そういえば、あの砲塔から発射される攻撃は、見た目こそ炎だが、その威力の高さは何故か物理的なものな気がする。

何か秘密があるはずだ。

そう思った私は、攻撃が地面に着弾した直後に、その場所に駆けつけて着弾点を近くで観察してみる。


あの竜の攻撃の感覚は大体体感で7秒に1回のペースで発射される。

その為、攻撃の直後、相手の攻撃がこちらに到達するまでの時間を考えても5秒はよく見る時間がある。


私はその時間をフルに使って、相手の攻撃の跡を観察した。


そこでは、何やら鉄の塊のようなものが燃え上がっていた。

そしてそれは少しずつ溶けている。

――――これは・・・・


そこで次の攻撃が来た。

私はその場から飛びのき、攻撃を回避する。

時間にして数秒しかなかったが、それでも十分な情報をつかむことができた。


「マナリア先生!!あいつの攻撃の中身がわかりました!!」

私は少し遠くにいる彼女に、聞こえるように大声で叫んだ。

彼女はそれを聞いて全速力でこちらにかけてくる。その動きは明らかに人間離れしているため、何か魔法で強化しているのだろう。


「ノーストリアさん!何かわかったのですか!?」


「はい!!あれは完全な物理攻撃でした。炎を飛ばしているように見えるのはそれがばれない為です。同様に、着弾点に残っている弾丸は炎で溶かしていました。」


「ということは・・・いつかは弾切れを起こす・・・?」


「はい、おそらくはそうかと思います。あれを見てください。」


私はあの竜の足元を指さした。


「あれ?・・・・何かあるのですか?」


「はい、先ほどあの竜が脱ぎさった鱗が落ちていますよね?あれ、少なくなっているとは思いませんか?」


「あ!!」


気づいてもらえたらしい。

あの竜は遠距離攻撃が得意だからあの場から動かずに固定砲台をやっていたわけではなかった。

あの場所から動けないから、仕方なく固定砲台として攻撃をしていただけだったのだ。


あの竜がその姿を現す際にその身から落とした鱗は、少しではあるが確実に減っていた。

その量はまだ全体の2割程度でしかなかったが、あの攻撃に限界があると分かっただけでも、今は大きな収穫であった。


そこでマナリア先生はいい案を思いついたのだろう。

先ほどまでは回避することだけに集中していた彼女が、自分の中の魔力を集め始めた。

おそらく、攻撃に転ずるつもりだ。


「マナリア先生!!私にも何かできることはありませんか!?」


彼女が完璧に集中しきってしまう前に、そう聞いておく。


「今は特にはないですが、すぐに攻撃に転じられるように魔力の用意だけはしておいてください。」


「了解しました!!」

私は言われた通りに魔力を集め始める。

攻撃をよけながら魔力を練る行為は、かなり困難を極めたが、ここ数日の特訓の成果が出ているのだろう。

なんとかそれを成し遂げることができている。

注意さえしていれば、相手の攻撃が当たることはないだろう。


そこで、マナリア先生のほうの準備が終わったみたいだ。

彼女は右手の杖を竜に向けて、大きな声でその魔法名を宣言した。


「ウィンドォーーーー!!」


彼女が唱えたのは初級の風魔法だ。通常は強風が吹く程度の効果しか現れないその魔法は、大量の魔力を込められたことによって、すべての物を吹き飛ばすほどの風を巻き起こした。

そしてそれは狙いたがわず、竜に向かっていく。


流石に、竜はその巨体故に吹き飛ぶことはない。

少し浮くぐらいだ。しかし、その足元に落ちている鱗はそうはいかない。


マナリア先生の魔法を受けた竜の鱗は、竜の後方に向けて大きく吹き飛ばされた。


なるほど、この距離からではこちらの攻撃は当たっても効果はないけど、相手の弾丸を攻撃すれば向こうの攻撃を封じることができる。

そして向こうから攻撃されなければ、近づくことが容易になる。

そのことを理解した私は、自分の弾丸を吹き飛ばされて慌てている竜に向かって突貫する。


先ほどから、魔力は十分に練っている。

ある程度近づいて魔法を放てば、攻撃を通すことができるだろう。


その竜は自分の弾丸を拾うほうが先決だと考えたのだろう。

そいつは走ってくる私を無視して後ろを向いて走り出した。

私はその隙を見逃さない。



氷弾(アイスバレット)!!」

私は自分に背中を向けた竜に向かって、全力で魔法を放った。

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