第7話 強欲は戦えない
その放送を聞いた直後周囲の者たちは歓声を挙げた。
「「「うおおおおおおおお!!飛竜だあああ!!」」」
「よし、俺は迎撃に向かうからお前は肉屋に並びに行け。」
「了解!!」
といった会話が周囲からいくつも聞こえてくる。
というか、
「ねぇヴェル?どうして飛竜が来てみんな肉屋に並びに行くの?迎撃とか避難とかならわかるんだけどあの行動には理解できないわ?」
率直な疑問だ。こればっかりは私がおかしくなったわけではないだろう。
その質問に対しヴェルは
「この街の肉屋は食える生き物を持っていき代金を支払うことで解体してくれるんだ。でも竜はデカいからな、解体を請け負ってくれる数には限度があるんだよ。」
と予想外の答えを口にした。
「ま、まさかとは思うけど食べるの!?竜を!?」
「あぁ、結構うまいぞ!!」
この街では当然のことらしい。
案内をしていもらっている間に幾度となく思ったことだが、この街は少しおかしい。
普通飛竜が街を襲ったとなればその街の住人は地下シェルターに逃げるか街の外に逃げるか、という選択を真っ先に考える。
真っ先に戦おうとすると考えるのは頭のおかしい奴くらいだろう。
この街の一番おかしいところは、住民たちだったということね。
ようやく私がこの街の異常性の原因を突き止めたところにヴェルから声をかけられる。
「なにしてんだ、イル、俺たちも向かうぞ。」
・・・・え?私も行くの?
最悪肉屋に並ばされるかなとかは考えていたけど、迎撃に参加しろとか予想外よ?
私は今街の門に来ている。
なぜか竜討伐に向かわされているのだ。
ヴェル曰く、
「早い者勝ちだからゆっくりいっても残ってないんだよ。」
とのことらしい。
私としては残ってないほうが嬉しいんだけど、、、
まぁいいわ、こんだけ数がいればそれを囮に私だけでも逃げることが可能だろうし。
というか、
「お、おい、何でヴェルの野郎がここにいるんだ?」
「うわ、本当だ、人間の街に旅立ったんじゃなかったのかよ。」
「ともあれ急げ、あいつに狩られる前に数匹狩らなきゃ俺が嫁に怒られちまう。」
早歩きで歩いているとそういう会話の後急いで門の外に走っていく姿が見える。
「ねぇ、ヴェルあなたを見てみんな急いでるんだけど、過去に何をやったのよ。」
「いや、襲撃のたびに真っ先に行ってモンスターを狩りまくったなんだけど・・・」
やっぱり、かなりやらかしたらしいわね。
街の外
「なによこれ・・・」
そこは一種のお祭り状態だった。
軽く100は超える数の竜が飛んできているのだけれど、この街の人間にとってはそれは獲物が多いという解釈しかしないらしい。
その証拠に、
「おぉー、結構いるな。これなら俺が狩りまくっても問題なさそうだ。」
と、出会ってから一番目を輝かせている。
そして言い終わると同時に走って行ってしまう。
「はぁ、」
私はため息をつく。ここに連れてこられたが飛竜が相手とかやってられない。
私は戦闘能力はそこまで高くないのだ。
そう思いながらも助けてもらったお礼くらいはしなければならない。
そこまで考えてから私も前に出るべく走り出した。
竜との戦闘だけれども、比較的楽に戦うことができている。
もし万が一危なくなっても、少し人の近くに近づくだけで喜々として狩ってくれる。
それどころか
「おう、姉ちゃん。獲物連れてきてくれてありがとうよ!!」
といい笑顔で感謝までされる始末だ。
そんな感じで危なくなったら人に助けてもらいながら私はその戦場を生き延びていた。
これなら大丈夫かなと考えていた時
飛竜の大群の奥からひときわ大きな黒竜が現れた。
全話のサブタイトルを少しだけ変更します。