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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第4章 始まりの戦い
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第62話 それぞれの対策

あれこれ意見が出たが、結局天使の対策は個人でするということにまとまった。


どうやら、私たちは協調性が足りないらしい。

今夜は不毛な話し合いに時間を費やしてしまったため、本格的に行動するのは明日になりそうだ。


今日はもう遅いため、みんなは私の家に泊まることになった。

今日くらいは、許してあげてもいいだろう。



朝早く、まず一番に私の家を出たのは意外にもヴェルだった。


「俺はこの街の戦力不足を補うために動こうと思う。」


彼は他の人が眠っている間にそう言ってどこかへ行ってしまった。

彼曰く、当分はここに戻らないらしい。

みんなには伝えておいてほしいとのこと。


ヴェルが家を出て次に起きてきたのはマナリア、ノーストリアの魔法使い組だった。

彼女たちは魔法の練習をしながら、装備をよいものに変えるなどの、自己強化を図るらしい。

それならばと、


「マナリア、今回の治療費よ。」

私はマナリアに金貨袋を渡す。治療費という名目だが、実際は今回の軍資金だ。

1人につき金貨1000枚、合計2000枚だ。

こういうことをしていると、最近自分がお金遣いが荒くなったなと感じるが、必要な出費だ。


彼女はこんなものを受け取れない、といつものように言うかと思ったが、今回はすんなりと受け取ってくれた。

それだけ、今回の戦いを重く見ているのだろう。


私としては、私以外の人は直接この戦いに関わりがあるわけではないので、危なくなったらすぐに逃げるくらいでもいいんだけど、彼らは決死の覚悟で臨むみたいね。



そして最後に起きてきたのは、ダインとルークの戦士組だ。

彼らもマナリア達同様、自己強化に励むようだ。


それを聞いて思ったのだけれど、まさか一番考えているであろう行動をとったのがヴェルなのが驚きだ。


普通はこういう状況下では、増援を考えるべきなのだけれど、まぁ、時間的制約が厳しいと判断して確実にできそうなことをやろうと考えたのであれば、彼らのほうが賢いのかもしれないわね。


「そうだ、ルーク、これを持っていきなさい。」


今回は言うまでもなく非常事態だ。

私は彼にいつの日かもらった武器を一時的に返すことにした。


「ありがとうございます。やっぱり、使い慣れた武器のほうがいいですからね。」


彼はそうお礼を言うと、ダインと一緒にどこかへ行ってしまった。

おそらく、目的地はレンちゃんのダンジョンなのだろう。

あそこは鍛えるのにはもってこいの場所だからね。私は彼らを見送った後、自分も外出の準備をする。


正直、まだ血が足りていなくて外に出たくないとも思うのだが、そんなことを言っている場合ではない。

あと6日、できることはすべてやっておかなければいけないからだ。


用意するものは必要最低限だ。

というか、私は特殊技能(スキル)の関係上、あまり準備に時間がかからない。

やることといえば、部屋着から外着に着替えるくらいだ。


私は手早く着替えを済ませ、外に出る。

目的地はまずはレンちゃんのダンジョンだ。彼女にはやってもらうべきことがある。

私は足早に街に向かう。


いつもは便利だと思うこの家の立地が、今は少し不便に思えた。




「ということをお願いしたいのだけれど、大丈夫かしら?」


「ん、たぶん、おっけー、」


レンちゃんは私の頼みを二つ返事で引き受けてくれた。

ちなみに、彼女は昨日は自分の家に帰っていた。聞いた話によると、ダンジョンに天使が入り込んでいたから、それを排除していたらしい。

排除といっても、彼女自体は何もせずに、ただダンジョン内の強い魔物に倒してくるようにお願いしただけらしい。

思えば、このダンジョン内の魔物すべてが彼女の保有戦力だと考えると、かなりのものになりそうだ。


そう思って、魔物を操って天使の迎撃に向かわせられるか聞いてみたのだが、


「ん、むり、だんじょんのそとにいったら、もうめいれいはきかなくなる。」


らしく、使えそうにはないそうだ。

むしろ街の人を襲う可能性のほうが高いため、そんなことはやらないほうがいいらしい。


「そう、なら仕方ないわね。レンちゃんありがとうね。あと、よろしく。」


私は彼女にお礼を言ってから、レンちゃんのダンジョンを後にする。

ここで彼女と話していたい気分なのだが、まだやるべきことが残っている。

レンちゃんのダンジョンを後にした私は、次に冒険者ギルドに向かったのだった。



冒険者ギルドについた私は、依頼や周りの人には目もくれず、真っすぐに受付に向かう。


向かうのはいらぬ問答をしないために、顔見知りであるアリサさんのところだ。

なんやかんやで彼女とは幾度と話をしてきた。

その為、私の言いたいことを瞬時に理解して行動に移してくれるだろう。


「アリサさん、少しいいかしら?」


「え、えっと・・イシュルさんでしたね。どうしましたか?今は先の襲撃の後処理で忙しいのですが。」


彼女が少し面倒な人を相手するように答える。

あれ?私ってそんなに好感度低かったかしら?


あぁ、もしかしてどこかからあの戦いの原因が私であることを知ったのかもしれないわね。


「ええ、そのことで大事な話があるのだけれど・・・ギルド長はいるかしら?」


「えぇ・・・いらっしゃいますが・・・お呼びしたほうがよろしいですか?」


私の目論見どおりだ。

やはり彼女は私が言わんとすることを理解してくれたようだ。

少し小走りになりながら、建物の奥に行ってしまう。


そしてそのすぐあと、息を切らしながら戻ってきた。

その後ろには今回の目当ての人物、テラの街の冒険者ギルドのギルド長である、アインザックの姿があった。


そしてなぜか彼は、アリサさんを盾にするように私の様子をうかがっていたのだった。


今日、ブックマーク数が二桁になっていました。皆さんありがとうございます。

もう少しで終わる作品ではありますが、これからもよろしくお願いします。

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