第6話 強欲は街につく
魔族の街レストア
街の北側と東側が山に面している自然が豊かな街だ。問題があるとするならば、その街はモンスターの襲撃が多く、魔族しか住んでいない街だということだろう。
「私が頼んでおいてなんだけど……ヴェルは本当によかったの?テラとかいう街に帰るところだったんでしょう?それに魔族の街なんて本当に大丈夫なの?」
「ん?テラに行くつもりだったのは確かだけど、俺はもともとこの街出身だからここにいること自体は問題ないぞ?」
あれ?ヴェルってここに住んでたの?じゃあもしかして…
「こ、この街出身って、ヴェルってまさか魔族だったりするの?」
「あれ?気づいてなかったのか?【怠惰】持ちって言ったからもう気付いているのかと思ったよ。」
【怠惰】持ちであることに何か関係があるのかしら?
そう思った私は素直に聞いてみる。
「【怠惰】持ちであることと魔族であることって何か関係あるの?」
「ん?おおいにあるぞ?大罪系の称号は基本的に魔族が手に入れるものだからな。例外はあるみたいだが」
そうだったのね。じゃあ私は例外の部類ってことかしら。というかこいつは自分のことを何一つ隠さないのね。
「でも、魔族って言っても人間にしか見えないわよ?あなた」
ヴェルが嘘を言っているとは思えないけど
「人の街に行く予定だったんだ、角とかはうまく隠しているんだよ。それはそうと、着いたぞ。」
その言葉を聞いて私は前を向く。
そこには言葉の通り一つの街らしきものがあったのだが・・・・・
「ねぇヴェル?私、目がおかしくなっちゃったみたい」
普通の街に似つかわしくない高さの壁、壁の隙間から見える砲台、遠目からでもわかる頑丈な建物、、
そこにあったのはどう見ても要塞だった。
・
・
・
・
・
・
・
「おい?ヴェル、もう帰ってきたのか?俺の記憶が正しければ今朝出ていったはずなんだが」
門番の人がヴェルを見るなりそういう声をかけてる。
そして、そのすぐあと隣にいる私をみたあと。
「あ~、女をひっかけたからいったん帰ってきたって感じか。」
と見当違いなことをいった。
「誰がそんなことをするかよ。困ってるようだから手助けをしてやっただけだ。」
ヴェルが即座に否定する。しかし門番の人は
「ははっ、分かってるから隠さなくていいぞ。」
と明らかに何もわかっていない返答をしている。
そのような問答が数分間続いた後
「ともあれ、お前さんの連れなら問題はねぇわなぁ」
とすんなり通してくれた。
街の中は外からみたよりは普通の街だった。
建物が鋼鉄製なのをのぞけばだけど。などと私が街の景観を見ていると
「そういえばイルはこれからどうするつもりなんだ?とりあえず街に来たのはいいけど宿も金もないだろう?」
といわれる。
考えてみればそうだった、今までヴェルが親切にしてくれたから考えてなかったけどこれからは自分で何とかしなければならないのね。
・・・正直に言うとかなり面倒だわ。そもそもこの街のことだって全く分からないし。
「それはおいおい考えておくわ。」
「そうか。困ったことがあったら俺に言うといいよ。ある程度なら聞いてやるから」
それは助かるわね。困ったことがあったら遠慮なく助けてもらうことにしましょう。
「じゃあ、とりあえずこの街の案内をしてもらってもいいかしら?」
まずは情報収集だ。何より先に必要なのは情報だからね。
・
・
・
「っとここが・・・・
ヴェルに街案内してもらっていると急に
ドゴン!!!
という音があたりに響いた。
「きゃ、きゃあ!?なに!?」
かなり大きな音だったためびっくりして声を上げてしまった。何事かとあたりを見回したが住民は何の疑問も抱いていない表情だ。隣を歩いているヴェルもさも当然のように説明を続けている。
「ちょっとヴェル!?さっきの音なんなの!?」
誰も何もさっきの音に触れないのでヴェルに質問する。
「あぁ、いつものことだ。たぶんそろそろ報告があると思うぞ。」
何でもないように答えたヴェルの言葉を肯定するように辺りに別の音が響いた。
今度はさっきの音とは違う人工的なもののようだ。
『ピーンポーンパーンポーン、飛竜の群れが襲撃に来ました。暇な方は迎撃に向かってください』
普通の街ではありえない放送が鳴り響いた。