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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第3章 異世界勇者到来
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第54話 勇者の真実

俺たちはひたすら天使を倒し続けた。

通常であれば一体でさえも苦戦する相手だろうが、戦闘中のやつを狙うことで素早く倒すことができている。

これが元の世界のMMOであったりしたならば、横殴りとかさんざん文句を言われているだろうが、これは命がけの戦いだ。

この場にそんなことを言ってくる奴はいない。

ともあれ、少しずつ天使の数を減らすことに成功して、少しこちらの優勢に傾いている気がする。

このままいけば、街を襲っている奴は倒しきることができるだろう。

そう思っていた。


「おやおや?これは異世界から召喚された勇者様ではありませんか」


突然頭上からそんな声がかけられる。俺のことを知っているみたいだ。


「貴様がこの惨劇の現況か?」

俺はそう問いかける。

明らかに先ほどまで倒していた天使たちと格が違ったからだ。

見ているだけでわかる。こいつは強い。

「半分は正解、といったところですねぇ。まぁ、そんなことどうでもいいでしょう?」


半分は、ということはもう一人首謀者がいるのだろう。

今までの情報から考えて、現在ヴェルさんたちが戦っているであろう奴だろうな。


「ケンヤ、ここは引くべきだ、あれは僕たちが倒せるあいてじゃない。」


ダインが小声で俺にそう言ってくる。

その通りだ。これは俺たちの手に余る。そう思い、俺はそいつから目を離さずに後退を始めようとする。

しかし、


「いやはや、まさか勇者様ともあろうものが逃げたりなんてしませんよね?」

それは許してくれそうにない。

その天使はどこからか取り出した剣を持ち、こちらに向かって飛んでくる。


どうやら逃げることはできなさそうだな。

それならば、俺がやるべきことはこいつをここに足止めすることだろう。倒すことはできなくても、少しでも時間を稼ぐことにする。


「まさか、そんなことするわけないだろう?」

俺は手に持っていた剣を構えて迎撃の体勢をとる。

そして俺たちの剣が交錯した。かなりの衝撃が剣から伝わってくるが、これならば大丈夫そうだ。


「ダイン!!お前は天使の討伐に行け!!ここは俺一人で何とかする!!」

「そんな!?無理だ!!」

「俺なら大丈夫だ!!いざとなったら逃げるから、だから早くいけ!!」

「でも・・・」


俺はダインに他の場所の救援を行くように頼むが、それをしようとしない。

そのやり取りを見ていたその天使は少しおかしそうにこちらに話しかけてくる。


「いやー、美しいですねえ。自己犠牲の精神と仲間愛ですか?ふふ、、さすが【勇者】の呪いといったところでしょうか。」


そしてその言葉とともに、今度は俺ではなくダインのほうに剣をふるう。

それを俺は辛うじて防御に成功する。


「ダイン!!お前を守りながらじゃ戦いにくい!!はやくいくんだ!!」

俺はそいつを無視してダインに声を飛ばす。一緒に修行をしてきた仲だが、元々実力差があったということもあって、ダインと俺では俺のほうが強い。

そんなことは彼もわかっていたのだろう。俺の言葉を聞いて、渋々ながら素早くこの場を去る。

俺はそれを確認して、そいつに問いかける。先ほど、気になる言葉を口にしていたからだ。


「貴様は今、【勇者】の呪いといったが、それが俺たちの関係に何か関係しているのか?」


実際はどうでもいいことだが、少し気になった上に時間稼ぎという目的を果たすこともできる為の質問だ。

答えてくれればかなりの儲けもの程度の認識であったが、そいつは隠すこともなく答えてくれる。


「おやおや?まだお気づきになられていない様子で、いいでしょう。どうせここであなたは死ぬのです。冥土の土産に教えて差し上げましょう。」

そいつはそういう前置きをして、話始める。そしてそれはは俺には信じたくないような内容だった。


「【勇者】という称号はこの世界の人間には授けられません。

「異世界召喚と呼ばれる魔法を行使したことにより、この世界に招かれた人間に自動的に授けられるのです。

「そしてその効果はすべての能力の上昇と、精神支配にも近い正義感の植え付け、

「この称号のせいで異世界人たちは、自分の意志とは関係なしに、英雄とも呼べるものたちが行うような行動を強要されているのです。

「これが本人たちは自分の意志で行動していると感じるからまたたちが悪い。

「その為、国などにとってはとても都合がいい。

「なんせ、自国の強化、治安の維持、国の名声、その他もろもろの問題を勝手に解決してくれるのですからねえ

「異世界勇者、とも呼ばれるあなた方は、この世界に一人しか存在することはできず、それ以上を召喚しようとすると、開いた次元の裂け目が閉じなくなったりするので禁呪とされているのですが、

「これだけの益があるのです。禁忌を犯してでも、国としては手に入れたくなるのでしょうね。」


そこまで言い終えたところでそいつはこちらを向いた。

その表情から読み取れる感情は哀れみだ。俺のことをかわいそうとでも言いそうな顔だな。

そしてそこまで聞いておいて安心した。


「なんだ、そんなことか。なら何も問題はないな。」

たとえ都合のいいように使われているだけだとしても、俺は自分の意志で動いているつもりだ。

英雄の行動を強要されている?

異世界転移までさせられているんだ。英雄くらい、なってやらなくてどうするというんだ。

「そうですか?自意識をすり替えられているとなれば、人間にとってはかなりの問題ではないですか?」

「この場でお前に立ち向かう勇気をもらっているんだ。むしろ今は感謝さえあるよ。」

そこまで言って俺はそいつに意識を集中させる。

おしゃべりは終わったんだ。そろそろ、攻撃が再開されるだろう。


「そうですか。さすがは勇者様ですね。では、熾天使であり、攻城部隊の隊長でもある私、アテルムがあなたをこの苦しみから救ってあげるとしましょう。」


俺の予想通り、そいつ、アテルムは攻撃を再開した。

かなりの剣速だ。おそらく、ルークさん以上だろう。俺はこいつに負けるのだろうな。


俺は後退しながらアテルムの攻撃を受ける。

真正面から受けても、すぐに持たなくなるため、受け流しだ。

それも少し調整を間違えれば、いつの日かのように俺の剣は弾き飛ばされるだろう。


「なかなかやりますねえ。なら少し、ペースを上げますよ!!」

俺が耐えているのをみて、アテルムが剣速を上昇させる。

先ほどまででも、必死だったのだ。そんな俺になお苛烈になった攻撃を防げるはずもない。


「しまった!!」

俺の剣ははじかれ、体勢を大きく崩されてしまう。


「少しはできるように思いましたが、どうやれこれまでのようですね」

このままでは不味い!!と焦る俺の耳はそんな余裕そうな男の声を拾う。

少しで長く、時間稼ぎをするつもりだったのだが、アテルムの言う通りここ迄みたいだ。


それだけ考えて、俺は歯を食いしばり、これから来るであろう衝撃に備える。

そしてその直後、



ーーーーーードスッ


俺の腹にアテルムの持つ剣が突き刺さった。

作者の体力が底を尽きたため、これからは1日1話だけの投稿になります。


体力に余裕ができたら、またいっぱい投稿します。

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