第45話 魔法制御と適正
「と言うことで魔力制御の練習に移りますね。」
3人ともそれの重要性に気づいたことを確認したマナリアがそう告げる。
「わかった、どうやってやる、の?」
レンちゃんは早く覚えたいみたいだ。その言動にやる気が見て取れる。
「先ずは自分の体を強く意識してください。」
それに応えるようにマナリアは説明を始める。
「ん、わかった。」
「はい!わかりました!」
レンちゃんとノーストリアはその言葉にそのまま従う。
それを見た私も少し遅れて同じようにする。
「そうすると体の中に何か、そうですね、流動体ような何かが感じられると思います。」
そう言われて私は自分の内に意識を傾けた。
そこには言われた通りのものが感じられる。
「ん、たぶん、あった。」
「はい、これのことですね。」
レンちゃんは初めて触れるもののため半信半疑だが、ノーストリアはそこは魔法使い、使い慣れたものなのだろう。
すぐに返事をしている。
マナリアは続ける。
「はい、では次にそれを体の中を巡らせるように動かして見てください。」
私はまた、言われた通りにする。
しかし、
「ん?どうやって、やるの?わかんない」
レンちゃんは動かし方がわからないみたいだ。
不思議そうな表情でマナリアに質問をしている。
「まあ、ノリで言いましたがこれは初めは出来ないものです。だから気落ちせず、ゆっくり覚えていきましょうね。」
どうやらこれはそう言うものらしい。それを言い終えたマナリアはなかった私たちに目を向けた。
「ノーストリアさんは、魔法使いという事もあってそこそこ出来ていますね。イルさんは、、なんで普通に出来ているんですか、、」
マナリアは呆れたような顔で私を見てくる。
なんでと言われても、天使の翼は魔力で出来ているため、それを動かしている間に自然と、、とは言えない。
ちなみに、元は魔力の翼である為、消すことは簡単だ。その為この街に来てから翼は仕舞いっぱなしだ。
多分問題はないだろうが、私が天使族であることは一応秘密にしておいた方がいいだろう。
「どうしてと言われても、出来るんだから仕方ないでしょう?」
私は適当な答えを返しておく。
「そうですか、それなら仕方ありませんね。」
彼女も諦めたみたいだ。私の方から目を離し、再びレンちゃんの方へ顔を向けた。
「言ってしまえば、体を動かす感覚に近いですね。動けと念じて動かすのではなく、動こうとしたら動いている感じです。」
「ん、がんばる。」
マナリアの説明を受けてレンちゃんは再び挑戦している。
「ノーストリアさんはもう少し精度を上げましょう。それでは初級魔法が関の山です。」
出来てはいると言ったもののノーストリアもまだまだみたいだ。 なんでも、体を動かせるようになったばかりの、食器を持つ際に手をグーに出来るレベルらしい。
ちなみにマナリアは私には何も言わなかった。
それどころかこちらを見てすらいない。
流石にその扱いは傷つくわよ、と内心そう思いながらも口にはしない。
あくまでレンちゃんの為の授業なのだから、私が余り目立っても仕方がないだろう。
それから数日が過ぎた。
あれから毎日マナリアの魔力制御講座が続いた。ヴェル達の修行も同様にだ。
ただ一つ気になることがあるとすれば何故ヴェル達がここを集合場所にしているのかということだ。
ここ、私の家なんだけど。
「それではみなさんある程度出来るようになったので次は魔法の練習です。」
「おー、」
「よろしくお願いします!!」
やっとここまで来たのね。と言っても私は2人の練習中は魔力を体内でグルグル回しながらその風景を見ていただけだから苦労も何もしてないのだけれどね。
「とはいえ、ここまで来れば後一押しです。魔力制御が出来ている、イコール魔法が使えると言っても過言では無いくらいです。」
そうなのね。私は魔力制御が出来ても魔法は一つも使えないのだけれど、どうしてかしらね。
「それでは先ずは初級魔法からです。各自、手元の教科書を見てください。」
そう言われた私達は今日、来た時に渡された教科書を開いて中を見る。
そこには可愛らしい手書きの字で魔法の使い方が書かれていた。
彼女の言葉から察するに初級魔法なのだろう。
「はい、見ましたね。そこには私がみなさんの適正を勝手に調べて各自に合わせた魔法が書かれています。」
「てきせい?」
マナリアの言葉に疑問を抱いたのだろう。レンちゃんが首を傾げてそう言った。
「はい。適正です。実は魔法にはその人によって向き不向きがあるんですよ。私で言えば風と雷が得意で、炎と土が苦手という事になります。」
へえ、そうなのね。私の適正って何なのかしらね。
そう思い教科書をめくる。
そこに書かれている内容は自己強化魔法が主だった。
「と言うことは私は強化魔法に適正があるってことなの?」
教科書を確認した私はマナリアに質問した。
「強化魔法、と言うよりは体に直接作用する魔法ですね。ちなみに、レンちゃんは闇魔法と氷魔法、ノーストリアさんは炎魔法に適正があります。」
あら、レンちゃんが氷魔法と言うのは意外ね。てっきり炎魔法が得意だと思っていたわ。
私達がその言葉に納得したのが分かったのだろう。
マナリアは少しだけ息を吸ってからハッキリとした声で言う。
「では、各自教科書を見ながら魔法を使って見てください!わからない事があったら遠慮なく言ってくださいね。」
「「「はい!!」」」
私達はその言葉とともに自分の手元に視線を落とすのだった。
魔法使い側の話からは一旦ここで離れて次は勇者サイドの話です。
 




