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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第3章 異世界勇者到来
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第41話 勇者達の実力

「そんな事でいいのですか?おい、そこのお前、さっさと始めるぞ。」

ヴェルの出した条件を満たすべく勇者がこちらに声を掛ける。

「あら?私に用は無いんじゃなかったかしら?さっき、あなた自身がそう言っていたわよね?」

私は先ほどの彼の発言を掘り起こし引いてくれないかと様子を見る。

「その時はその時だ。今は貴様に用がある。」

はあ、引いてくれそうに無いわね。

ヴェルもこんなのに付きまとわれてかわいそうだわ、、、いや、こんなのを押し付けられた私の方がかわいそうね。

私はヴェルを睨みつけて言う


「あなた、後で覚えてなさいよ?」

私の中では後で少しだけ彼とお話をするのは決定事項だ。

だが今は目の前の事を何とかする必要がある。


正直、勇者はそれほど強くなさそうに見える。

あの時私が丸腰で戦えた飛龍に3人がかりでボロボロにされたくらいだ。

普通に戦ったら私が勝つだろう。そこで、


「あなたたちも混ざりなさいな。」

私は勇者から一歩引いて成り行きを見守っている2人に声を掛ける。

「え、っと、良いんですか?」

「後で卑怯と言われても聞かないけど?」

2人は遠慮しがちにこちらを見る。

「えぇ、良いわよ。3人がかりでも勝てたらあなたたちの勝利って事で、」


余裕を見せる私の態度が気に食わなかったのだろう。勇者は会話の途中にも関わらず、腰の剣に手をかけ、切りかかってくる。

「貴様ごとき、俺1人で十分だ!!」

上段から振り下ろされる剣を私は横に逸れることで躱す。一応、前回の反省を活かして少しだけ余裕を持ってだ。


彼は一撃で決めるつもりだったのだろう。

それ以上の攻撃はなかった。

私は取り敢えず距離を取る。会話の途中だからね。

「今のが戦闘開始の合図ってことね。あなたたちも遠慮しなくて良いわよ。」

私は茫然としている2人に声を飛ばすと同時、トロイヤに作らせた籠手ガントレットを身につける。

多分大丈夫でしょうけど、一応ね。


勇者は先の攻撃をかわされて少し警戒しているのだろう。

剣を正眼に構えて、次なる攻撃に備えている。

後ろの2人も決心したみたいだ。

ダインは短剣を両手に構え、

ノーストリアは背負っていた杖を手に持ち、詠唱を始める。


………ん?詠唱?

おかしいわね。マナリアに本を借りた時の話にそんなものあったかしら?


私が考え事をしている間に詠唱は終わったみたいだ。

こちらに向けて炎の玉が飛んでくる。


避けても良いけど、ここは森の中だしね。

そう思った私は腕を振るい炎の玉を正面から搔き消す。

しかしそれと同時、ダインが2本の短剣を両方投擲してくる。それは真っ直ぐに私の体をめがけて飛んでくる。

私は炎の玉を消した腕とは逆の腕でそれを弾く。

するとそれは不自然な軌道を描いて、ダインの手に戻る。

よく見ると糸がくくりつけられているみたいね。


今現在、両の腕を振った状態の私に防御手段はない。

そう思った勇者は素早い動きで私の元に飛び込み、横薙ぎを放った。

「もらった!!」

勝ちを確信したのだろう。そんな声が私の耳に届く。

「残念だけど、甘いわね。」

私はその体を大きく前に屈める事で攻撃を回避する。そしてついでにあるものを拾っておく。


「いい連携ね。遠距離攻撃に対処をさせて隙を作り、勇者が決める。うん、悪くないわ。」


私は彼らの動きをそう評価する。

彼らの動きは悪くない、それは事実だからだ。

しかし、それだけだ。私相手ならともかく、強大な敵には立ち向かえないだろう。


それを確認した私は、後ろで見ているレンちゃんに向かって声をあげる。

「レンちゃん!さっき教えてたやつが使えるのと使えないのじゃ、どう違うのかを今から教えるわね。」

「ん、わかった、がんばって!」

そして彼女に後ろ向きながら手を振る。レンちゃんに応援されたからお姉さん頑張っちゃうわよ!


それをみた彼らのプライドが傷つけられたのだろう。

再び攻撃を仕掛けてくる。


今回は勇者がすでに目の前にいる為か、そのまま切り掛かってくる。

振り下し、切り上げ、袈裟切り、突き、

動きに逆らわないような剣技だ。それ故に真っ直ぐで予測が立てやすい。

これならまだ力技で剣の軌道を変化させていたジェイグの方がやりにくいだろう。

「何故だ!?どうして当たらない!?」

勇者が叫びながら攻撃を繰り返す。

そう、勇者の剣技はまるで


ーーーー教科書通りって感じね。


私は彼の剣技をそう評価すると、残りの2人に目を向ける。

勇者の剣技は綺麗なのだ。それならば見なくてもどこにくるかは大体わかる。


ノーストリアは再び詠唱を始めていた。

さっきと同じ言葉だ。

そこから察するに後数秒で炎の玉が飛んでくるだろう。しかし私は慌てない。


先ほどの拾っておいた少し大きめの石を、ノーストリアに向かって投擲する。

勇者が抑えているはずの私から攻撃が来るとは微塵も思っていなかったのだろう。詠唱に夢中な彼女は目を丸くして飛んでから石を眺めるばかりだ。

「え、きゃあああああああ!!」

「ノーストリアさん!危ない!!」

そしてそれは直前でダインよって防がれる。

本来ならそれだけの事だったのだろうが、予想外の出来事に悲鳴をあげてしまった彼女の詠唱は失敗に終わる。


これで少しの間あの炎は飛んでこない。

私は再び勇者に目をやる。

彼は変わらずに剣を振るい続けている。しかしそこに先程までの舐め腐った表情はなく、真剣そのものだ。

その為彼の額には汗が大量に流れているのが確認できる。

かなりのペースで剣を振っているのだ。疲れがたまっても仕方はないだろう。


私は頃合いを見計らって勇者の懐に潜り込み、そしてそのままその横を通り過ぎる。


「くそ!!ちょこまかと!!」

勇者は振り向きざまに横薙ぎを放とうとする。

それに合わせるかのように私は後ろ回し蹴りを放つ。

本来ならば勇者の剣が早く到達するだろう。

しかし、

「、、あ?」

勇者は振り向くと同時に体勢を大きく崩す。

足元を見るとそこには大きめの凹みがあった。

さっきと石を拾った時に出来たものだ。


本来なら引っかかることは無かっただろうが、疲労がたまっていることに加えて見えない後方であることが重なり、その凹みを大きく踏み抜いてしまう。

そして体勢が崩れた勇者の体に私の蹴りが到達し、勇者は地面に顔をつける。


「ケンヤ!!」

仲間に対する追撃を防ぐ為だろう。ダインは短剣をこちらに向かって投げて来る、が、


「あんまり同じ事を繰り返すのは良くないわね。」


その短剣を今度は弾く事なく横に躱し、ダインと短剣の間の空間を掴み、思いっきり引っ張った。


それだけでダインは転んでしまう。

どうやら身体能力的にはそこまで高くないようね。


勇者も、ダインも倒れてあとはノーストリアだけだ。

私は地面を蹴り彼女の元へ走る。

仲間が倒され、次は自分だという事を理解したのだろう。彼女は手をあげて


「ごめんなさい!!私達の負けです!!」


と、降伏宣言をしたのだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さっきまで舐めた態度取って済みませんでした!付きましては、俺たちを弟子にしてください!!」


どうしてこうなった。

戦闘が終わったまでは良かった。予想どおりの結果だったのだが、彼らが起き上がって始めに勇者が言った言葉がこれだった。


彼らが起き上がったあとは速やかに帰ってもらう予定だったのに、予想を誤ったみたいだ。

どうするかと考えていると、私に助け舟が出される。


「だめ、イルはわたしのししょうなの!!」


あぁ、本当の天使はここにいたのね!!

これなら何とかなりそうだわ!


「そうよ、私には既に弟子がいるの。これ以上弟子を取るつもりは無いわ。」


「そ、それなら、どうしろと!?」


いや、どうしろも何も、帰れよ。

しかしこれを言ってもこいつらは帰らないだろう。今までの行動がそれを確信させている。


「そうねえ、ヴェル、あなたさっき私に面倒を押し付けようとした罰よ!彼らを少しだけでも鍛えてあげなさい!!」


やっぱり問題は持ってきた人に返すのが一番だろう。自分が蒔いた種は自分で回収しないとね。

「え!?俺がかよ!?というかそれはイルが勝ったからもういいって話じゃなかったか!?」

「馬鹿ねえ、さっきの事を不問にしてあげるって言うんだからしっかり働きなさい。」

私は笑顔でそう言った。我ながらよく出来た天使の笑みだ。

これなら彼も、

「わかった、やるから、だからその笑みをやめてくれ!」

ほら、快く受けてくれた。

やっぱり誠心誠意頼むのが一番よね。


「と言う事だからこいつから学びなさい!あなたたちはそれで良いわよね?元々そのつもりだったんですから。」


それを聞いた3人は表情を明るくして大きな声でこう言った。


「「「はい!よろしくお願いします!!」」」


ヴェルは少しの引きつった笑みを浮かべていた。


「お、おう、よろしくな。」


今夜中にもう1話、、、行けるかわからないけど頑張ってみます。

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