第33話 魔道具作製そして受け取り
「いらっしゃい、ってあんた達か。」
トロイヤの魔道具店に入るや否や、そんな言葉を投げかけられる。
「もうちょっとお客様を敬ってもバチは当たらないわよ。」
私は冗談交じりに言葉を返す。
「で?今日はどうしたんだ?まさか素材を集め終わったとか言わねえだろうな?」
「そのまさかだから来ているんですよ!!それじゃなきゃこんな所になんか来ません!!」
トロイヤの質問にマナリアが強く返す。
マナリアはこの人に対しては強気でいくわね。
「随分と早かったじゃねえか。で?肝心の素材はどれなんだ?言ったと思うが適当なもの持って来ても壊れるだけだぞ。」
トロイヤは私達が素材を持って来たことを信じれてないみたいだ。
私は彼を信じさせる為に『Aー水晶竜の表皮』を数個取り出し、具現化させる。
「これなら問題ないわよね。」
私はそう言ってトロイヤの方に目をやる。
ミスリルなど目じゃない金属だ。問題などあるはずがない。
「お、おう、確かにこれで問題はねぇが他の素材はどうするんだよ。これだけで作れと言われても無理だからな。」
まぁ、予想どおりの反応だ。
その言葉を聞いた私達は各々、使いたい素材を取り出した。
「で?結局こんなもの持って来てお前らは何が作りたいんだよ………」
私達が持って来た素材を全て確認してトロイヤが言う。
「私は杖ですね。前使ってた短杖をどこぞの誰かさんに折られて魔法が使いにくくなったので」
マナリアは杖を作るそうだ。なんでも、魔法を使うには魔力制御が必要らしく、杖はそれを補佐する役割を担ってくれるんだそうだ。
杖無しでも魔法は使えるけど時間が掛かるとかなんとか。
「じゃあお前さんは短杖でいいんだな?」
「いえ、あれはお金がなくて仕方なく使ってた奴なんで今回は長杖を作ってもらいます。」
「へいへい、かしこまりましたよっと。で、そっちの姉ちゃんは何を作るんだ?言っておくがあんたはお代を払えよ。」
チッ、マナリアと一緒に来ればもしかして、と思ったけど、ダメみたいね。
「私は特に指定は無いけど、攻防に優れた武具が欲しいわ。」
「随分と曖昧だな。その条件に合っているなら何作っても文句は言わねえんだろうな?」
「よほど変なもの作らない限りそんなこと言わないわよ。」
そもそも私は戦う人では無いのだ。そこまでこだわる必要もないだろう。
「じゃあそれで作ってみるよ。1つ作るのに丸一日は掛かりそうだから、3日後にまた来て来れ。」
トロイヤはそう言って置いてあった素材を全て持って店の奥に消えていった。
客を放置って、それは店としてどうなのよ。なんて思ってはみたが別段ここにこれ以上用事がある訳でもない。
なら早急に立ち去ってしまうのが吉だろう。
「じゃあマナリア、帰りましょうか。外は暗くなっているし、送っていくわよ。」
「いいんですか!お言葉に甘えさせて頂きます!!」
何の気なしに送っていくと言ったのだけど、すごく嬉しそうな反応をされてしまった。
あってほとんど間もないのに、随分と懐かれたものね。
私達はマナリアの家へ向かうべく、トロイヤの魔道具店を後にした。
「あ、ここです。」
街を歩いているとマナリアが唐突に声をあげる。
どうやら着いたみたいだ。
「マナリアは宿暮らしなのね。家は持たないの?」
彼女が寝床としていたのは何処にでもある普通の宿だった。みる限り、可もなく不可もなくと言った感じだろう。
「いつかは持ちたいと思ってはいるんですが、そんなお金無くて、、」
彼女はそう答える。
お金がない、、、ねぇ、
「あなたはどんな豪邸を買おうとしているのかしら?正直、普通の家ならクォーツドラゴンの討伐報酬だけで十分買えると思うのだけれど」
私の家はかなり大きかったがそれでも約金貨500枚だ。
理由があってこの値段だったがそれでも今回マナリアに私た報酬の半分だ。
「あ、確かにそうですね。近いうちに家を買うのも良いかもしれません。」
「そう、その時は招待してくれると嬉しいわ。」
「はい!!絶対にお呼びすることを約束します!!」
そんなに気合を入れなくても良いのだけれどね。
そう思いながらも彼女に返事をする。
「そう、じゃあ、待っているわね。」
私達は次の約束を取り付け、それぞれ自分の居住地に戻っていった。
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それから3日が経った。
今日はトロイヤから魔道具を受け取る日だ。
このまま1人であっても良いのだけれど、どうせならマナリアと一緒に行った方が良いだろう。
そう思いあの日教えてもらった彼女のいる宿に足を運ぶ。
しかし彼女はもう出発した後だったそうだ。
当然といえば当然だ。なんせ私の家は街の外にあるのだから遅れるのは仕方がない。
私は1人でトロイヤの所へ向かう事にする。そこに彼女もいるだろう。
私の予想は外れマナリアはそこには居なかった。
トロイヤ曰くまだ来てすら居ないようだ。彼は疲れたから眠ると言って私に二人ぶんの魔道具を手渡す。
私からマナリアに渡しといてくれ、との事だ。
別にこれからの予定は決まっていない。それもまた良いだろうと私はそれを了承する。
しかし宿にもここにも居ないなんて、彼女は何処にいるのかしら?
私は心当たりのある場所を探してみる事にした。
まず始めに周ったのは商業区にある不動産屋だ。それを片っ端から入って調べていく。
彼女は家を買うと言っていた。もしかしたらここ三日でもう契約を済ませて引っ越したのかもしれない。
そう思ったからだ。
しかしその考えは外れだった。
2日前、マナリアらしき人物は来たには来たらしいのだが、何かを考えるようにその日は帰ってしまったらしい。
ここでもないと言われたら私が探す事が出来るのは後1箇所くらいだ。
そう思い私は冒険者ギルドへ向かう。
ここなら彼女の顔を知っている人もいるだろうし、もし万が一見つからなくても手がかりくらいはつかめるだろう。
冒険者ギルドにも彼女の姿はなかった。
しかし有益な情報を得る事が出来た。どうやら彼女は街の中央にあるダンジョンに向かったようだ。
しかしその時、何か違和感があったとの事。
いつもの受付の人曰く、「マナリアさんがパーティを組んでいるのが珍しい」そうだ。
なんでも、理由は分からないが彼女は今までずっと1人で依頼を受け続けていたらしい。
パーティを組んだのも、私達が初めてだそうだ。
それが昨日の今日で別の人とパーティを組むのは不自然だと感じたみたいだ。
マナリアのパーティを組んだ相手の情報を聞いてみた。相手は男の2人組で、態度から察するにマナリアの古い知人か何かではないかとの事だ。
また、そのパーティは朝方に出発したらしい
ちょうど私が彼女の宿を訪れたのと同じ時間だ。
しかしこれで彼女の大まかな居場所がわかった。そして彼女が今どのような状況なのかも。
私は街の中央、レンちゃんがいるそのダンジョンに向かって走り出した。
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