第29話 あれが本当のクォーツドラゴン?
『キユナ鉱山』
街の人からは北の鉱山として長い間親しまれてきた鉱山だ。
多種多様な鉱石が産出されるこの鉱山は、街の資源のして重要な役割を担っている。
しかし、ここ最近クォーツドラゴンが複数体住み着いてしまいろくに採掘も出来無くなっている。
また、クォーツドラゴンは鉱石を食べて生きている為、このまま放置すればクォーツドラゴンが去った後、何も残ってないと言うことになり兼ねない。
その為、急を要しいつもより高めの報酬を提示して数日前にクエストボードに貼ったのだが、その依頼を受けるのは異常な2人の片割れ、ギルド長の精神をズタボロにした女性の方だ。
まだ彼女は銀級冒険者である事を考えると、まだ以前のような事が起こるのかと身構えてしまう。
しかし今回は違うようだ。
若くしてミスリル級の冒険者に上り詰め、オリハルコン級も確実と言われているルークさんも一緒にこの依頼を受けるみたいだ。
最近パタリと顔を見せなくなってしまっていたが、久しぶりに現れたと思ったら異常者と一緒とは、一体何があったと言うのだろう。
しかし彼ならばこの依頼を受けるのに何も問題はない。
資格的にも実力的にも十分だろう。
また、最近期待の新人として名高いマナリアさんも一緒みたいだ。
願わくば、何も大したことは起こらずにこの依頼を終えてほしいものだ。
そう思いながら私、アリサは3人の冒険者を送り出した。
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依頼を受けた私達はそのまま北の鉱山に向かった。
マナリアさんはギルドに来る前に準備していたみたいだし
私は基本的に準備をするという必要はない。
またルークは剣が一本あれば戦えるということなので以前お詫びとして貰った物を貸してあげることにした。
クォーツドラゴンは鉱石の塊ではあるが彼の剣ならば問題なく切れるだろう。
実はあの後、その剣をカード化した際に剣の性能を確認したのだけれど、かなりの性能だった。
『Bー大地の精霊剣』
精霊の加護を受けた剣。その力により対物質において絶大な力を誇る。
ミスリル製の一品
切れ味が妙に高いわけだ。
そもそも武器の素材で大きく劣っているのに加えて精霊の加護付きの武器、鋼鉄製の武具でどうにかなるものではなかった。
それにしてもクォーツドラゴンね。
聞いた話によると様々な鉱石が混ざり合ってとても美しいと聞くのだけれど、今から遭うのが楽しみね。
数時間歩くと鉱山についた。
道中にマナリアとはかなり打ち解ける事ができてとても満足だ。
考えてみれば人間族に出来た初めての友達ね。
「そう言えばイルさん、ドラゴンは鉱山にいるって聞きましたけど、どこら辺にいるとか書かれたらしてなかったですか?」
マナリアからの呼び方も大分柔らかくなっている。
「確か、最後に確認されたのが割と奥の方だって話よ。奥の方にはいい金属がたくさん眠っているらしいから、これは期待できそうね。」
「でも注意してくださいよ?クォーツドラゴンは食べた鉱石によって強さが大きく変わるんですから」
ルークが注意喚起してくる。
聞いた話によるとそうらしいわね。
ヴェル曰く、
「昔、一度だけ神玉鋼を食べたクォーツドラゴンが居たんだが、流石に街の人10人くらいで囲んで叩いたんだ。硬くなり過ぎて1人で砕くのが骨だったからな」
という事らしい。
街の人ってあれよね?レストアの化け物集団のことよね?
神玉鋼を食べたクォーツドラゴンはあの街の住人が面倒くさがる程硬いのか。
流石にそこまでの奴は出ないでほしいわね。
まあ、いざとなったら聖槍を使うから問題は無いんだけど、、
「奥まで行ったってことはそこそこ強い奴が出てくる可能性が高いってことね。マナリアも、気をつけてね。」
「はい!!イルさん、気をつけます!」
これはあれね。
友達と言うより舎弟ができた気分だわ。
「では、そろそろ参りましょう。探す時間も必要ですし早めに入った方が良さそうです。」
私達はルークの言葉に従い鉱山は内部に足を踏み入れたのだった。
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「これは、完全に予想外ね。」
それを見た私はそう口にする。クォーツドラゴンは情報とは大きく違わずに鉱山の奥深くに居た。
それは良かったのだ。
ルークも私の言葉を肯定するように
「どうすればここまでの物になるのでしょうか。」
と呟く。
マナリアに至っては
「あ、あの、道中に聞いていた物とは大きく異なる気がするんですが、、」
と、少し慌てている。
それもそのはずだ。目に映るのはクォーツドラゴンから大きく逸脱したドラゴンの姿だったのだから。
通常は全長10メートル程の大きさは逆に5〜6メートル程しか無い。
しかし普通は鉱石で覆われていて鈍く光っているだけのその体は、強い輝きを放っていた。
本来、『クォーツ』という意味は鉱石の種類の1つ、石英を表す言葉である。
石英は溶かされ、集まり、そして水晶になる。
さて、ここで話を本題に戻そう。古代の人は鉱石を食べ、それらを体の中で融合させ、体の表面に析出させるその生物を見て、クォーツドラゴンと名付けた。
古代の人は気づいていたのだ。
そのドラゴンの真価が、同種のドラゴンと溶け合い、その身を融合させることにある事を、、
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「あ、え?」
マナリアが何か気づいたような声をあげる。
「あの姿に心当たりがあるのですか?」
ルークは何か知っているのでは無いかとマナリアを見つめる。
「いえ、知っているわけでは無いのですが、あのドラゴンの足元を見てもらってもいいですか?」
そう言われて私達はクォーツドラゴン?の足元を見る。
そこには、通常の、見覚えのあるタイプのクォーツドラゴンの死骸が数匹分、無造作に転がっているのが見えた。
前の話だ気づいた方もいると思いますが、第2章でヴェルの出番はないほとんどありません。
仮にもこの物語のヒーローなのにね




