第27話 マナリアとの約束
「あなたが店長なんですね?じゃあ遠慮はいりませんね。しっかり責任取ってもらいますから。」
今まで店員の1人と思っていた男が店長だとわかるや否や、マナリアさんの攻撃はさらに苛烈になっていく。
その様子にトロイヤも流石に折れるしか無かったみたいだ。店長発覚から30分後、遂にトロイヤが謝罪した。
「悪かったって、ちゃんと謝るから許してくれよ。」
「じゃあ、この短杖タダで修理して貰いますから。」
そもそも今思ったのだけれどもあの杖って寿命っぽいから持ってきたのよね?
折ったのは事実だけどちょっとやり過ぎじゃない?
「それは構わねぇんだけどよ、1つ問題があって、」
「何ですか、あなたが勝手に解決すればいいんじゃないですか?」
マナリアさん、少しくらい聞いてあげてもいいのに。
「いや、修理に関わることなんだけどよ、素材がねえんだ。」
「素材?素材ならそこら辺で、なんなら冒険者ギルドの受付でも売ってるじゃないですか!」
あ、ギルドってそんな事もやってるのね。
それにしても確かに素材が無いのはおかしな話ね。
私もここに来る途中、色々見た気がするのだけれど、
「普通に魔道具を作るなら問題無いんだがよ、俺が作るとなると話は変わって来るんだ。」
……?使い手によって素材が悪くなるとか聞いた事無いんだけど?
マナリアさんも気になったようで
「何ですかそれ!適当なことを言って煙に巻こうとしないで下さいません?」
と、少し怒り気味に言っている。
「いやな?俺の称号の中に【破壊王】があってな?普通の素材じゃ軽く握っただけで壊れちまうんだよ。」
そして今明かされる衝撃の事実。【破壊王】ってかなりのレア称号じゃ無いのよ。
と言うかそんなもの持っているせいでマナリアさんの短杖を握りつぶしちゃったのね。
「で?それがどうかしましたか?それはあなたの問題であって私には関係ないでしょう?」
おお、見事に切って捨てたわね。私なら強請って色々巻き上げるものだけど、
そんなことを考えているとトロイヤが一番の問題を口にする。
「いや、うちは素材持ち込み型だから使って欲しい素材を提供してくれないと作ろうにも作れないんだが、」
はあ、成る程、一定水準以上の素材を持ってきた者にだけ魔道具を作る。
悪くはないシステムね。それよりも、
「ところで、どのくらいの素材ならあなたの加工に耐えられるの?それが分からなきゃ持ってきようがないのだけれど。」
私も魔道具を手に入れにきたのだ。今日はこの情報だけでも持ち帰っておきたい。
「あぁ、頑張って作業すればミスリルでもギリギリ耐えるかもしれない。それ未満の強度じゃまず無理だな。」
「な!?ミスリルですって!?そんな高価なもの用意できるわけないじゃない。」
マナリアさんが言う、しかし私は、
「そう、その程度の強度でも耐えてくれるのね。安心したわ。神玉鋼とか持ってこいって言われてたらどうしようかと思ったわ。じゃあ、後日持って来るわね。」
そう口にする。
それを聞いたマナリアさんは目を見開いてこっちを見て来る。
「あ、あの、」
「何かしら?私としては用事はほぼ終わったのだけれど。」
「良かったら、素材集め手伝って貰えませんか?」
「私としては構わないけれど、さっきのお詫びだ!とか言って素材も向こうに出させたらどうかしら?」
そう言ってトロイヤの方を見る。
彼はその視線に気づいたのか。
「それだけは譲れねぇぞ?素材は依頼者持ち、それがうちのルールだ。」
と主張する。
私が話せば素材も向こうに出させる事も出来そうだけど、それはかわいそうね。
別にそこまで悪いことをしたわけではないし。
「それならあなたの素材集め手伝ってあげるわ。どうせ私も必要になるのだし。」
私はマナリアさんの頼みを了承する。
彼女はそれを聞き、
「ありがとうございます。あわよくば、くらいの気持ちでしたが言って見るものですね!」
と、勢いよく頭を下げる。
そんな彼女に私は手を出し、
「イシュルよ、これから道具の完成までの少しの間よろしくね。」
握手を求める。
私が出したのは右手だけだったが、彼女は両手でその手を握り、
「こちらこそ、よろしくお願いします!!」
と、元気よく手を振った。
明日からは賑やかになりそうね。
彼女に振り回される自分の手を見て私はそう思うのだった。
深夜に書くと思考がまとまらなくて後から見たときその駄作っぷりにびっくりするんですよね。
多分今回の話もそうなっているはず、、、




