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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第1章 強欲は欲深い
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第22話 怠惰の心

すこし遅くなりました。

今回はヴェル視点です。

それは偶然の出来事だった。


いや、今思えば偶然ではなく運命だったのだろう。

その女性は天使達に囲まれていた。

腰についている黒い翼から魔族だと推測した。


俺はそれを見た時何故か助けなければならない、という衝動に駆られた。

今、彼女を助けなければ後悔する。

説明はつかない、だが俺はその事に半ば確信を抱いていた。


助けた女性はイシュルと名乗った。

元熾天使であり、神器を盗んだ事で堕天したらしい。


彼女はどうやら街に行きたいみたいだ。

当然だろう。天使から逃げる為の隠れ家は必要だ。

人間族の街と魔族の街、どちらがいいか聞いて見た。

彼女は申し訳ない、と言いながらも魔族の街を選んだ。


もし良かったら知人にでも匿ってもらう事にしよう。そう思い俺は街に案内する事にした。


街についた時丁度、飛竜が襲撃してきた。

街を出るつもりだったので俺の家には食料が全く残っていない。

何としてでも1匹は狩って帰らなければいけない。

そう思い俺はイルに迎撃に行く事を勧めた。

俺1人で行ってもいいのだが、1人にして何処かへ行ってしまわれては困ると思い誘ったのだ。

彼女は嫌々ながらもついてきてくれた。


飛竜を何体か落とした時だ。

肉屋に早めに持ち込むためにそろそろ戻った方がいいだろう。そう思い彼女の方に目を向けた。

すると彼女は何かを見つけたように俺を呼んでいた。

聞いたところによると1匹だけ高く飛んでいる黒い奴が欲しいみたいだ。

俺は彼女の頼みを聞き入れる事にする。


黒竜はあっさりと落とすことができた。

それを見た彼女は走って落ちた黒竜に近づく。

そう言えばどうやってあの竜を持って帰るのだ?黒竜は普通のとは違って重さと硬さはかなりのものだったと記憶している。

そう思い彼女の様子を見ていると突然、そこにあった黒竜は跡形もなく消え去っていた。

そして彼女の手の中には見覚えのあるカードが握られている。


あぁ、やっぱり助けたのはあっていたんじゃないか。


俺は食事の際、今後どうするかと聞いてみる。

どうやらまだ決まっていないらしい。

それなら、と俺は一緒に来ないかと提案する。親切心のつもりだったが、考えてみればこれは俺の願いだったのだろう。

彼女と、イルと一緒にいたい。そう思っていたのだ。


イルは俺の提案、もとい頼みを聞いてくれた。

そうなれば出発は早い方がいい。出るなら明日だろう。そう思い早めに床に着く。

明日からが楽しくなりそうだ。


道中、イルは魔物を食べる事に不満を言っていた。見た目は悪いが旨いのに何でだろうな。



レンの家に入るためには冒険者になる必要がある。そう言われて俺たちはギルド登録に来る。

試験は魔物との戦闘に勝利せよとのことだ。

試験と聞いて面倒なことをさせられそうだと思ったが、存外楽しそうで助かった。

あの程度の魔物に負けるはずもなく、2人とも余裕で合格できた。最後に俺の称号をみて、職員の人が驚いていた。

当然と言えば当然だろう。

イルと何故書いた、と言う視線が体に刺さって地味に痛かった。


レンのダンジョンに入り、昔貰ったベルを取り出す。

このベルはレンが、俺が自分を見失わないように、との思いでプレゼントしてくれたものだ。

少し懐かしく思いながらも、俺はベルを振った。



レンと再会した。ちょくちょく会っていたので、そこまで感動的ではなかったが、それでも嬉しい。

いつもは俺とレンだけだったがそこにイルが加わり昔に戻ったようであった。

みんなでよく笑いあったあの頃のように、、、、



次の日、俺たちは依頼を受ける事にする。

家を買うためだ。

クエストボードに貼ってある依頼を一つ一つ確認していく。

みた感じ銅級の俺たちでは高額依頼は受けられそうにない。

しかし一つの依頼が目に入った。

ブラックドラゴンの牙の納品だ。

俺の住んでいた街ではそこそこありふれているここ素材が金貨1000枚になるそうだ。しかもこれは出発前にイルが手に入れたものの中にあるはずだ。

俺はイルにこの依頼をみてもらう事にした。



イルは凄まじかった。

金貨1000枚でもかなりの額だと思っていたのに、それを6000枚まで引き上げた。相手方には申し訳なく感じたのだが、イル曰く詐欺に合うところだったとのこと。

ブラックドラゴンの牙一本で金貨6000枚の方が詐欺ではないか?

どうやら俺たちの間の認識の違いはかなりの物のようだ。


イルは家を買いに行った。

俺はと言うと人に貰ったお金で大きな買い物をするのは忍びなく感じたので、理由をつけて依頼をこなしていく事にした。

イルよりいい家を手に入れて驚かせてやろう。

それを目標として俺はクエストボードに向かった。


その日は朝から違和感に付きまとわれていた。

このままこうしていてはいけない。そんな感じの違和感だ。

しかし俺はそれを振り払うかのように依頼を没頭した。

その日の3つ目の依頼達成の報告に行った時だ。

受付の人が俺にイルとレンが来ていたことを告げる。南の森にある家に来て欲しいとのことらしい。


特に大事な要件では無いのだろう。

だから俺を待たずに先に行ってしまったのだ。

それを理解はできていた。しかし、何故か急がなければならない気がしていた。

イル達からの伝言を聞いた俺は一目散に走り出した。



嫌な予感は当たっていた。

イルが結界の中に1人の青年を捉えている。

そして俺がそれを視認すると同時、青年が剣で結界を叩き斬った。


青年は少しの間イルの方を睨み付けると、少し離れていたレンに向かって走り出した。

それを見たイルが走り出す。


このままでは不味い。

そう思った俺も全力で力を込めて走る。

イルはレンを抱き抱え、剣を振りかぶる青年に背を向ける。

そして青年は剣を振り下ろす。

しかしそれと同時に、俺の体がイル達と青年の間に割って入る。


振り下ろされる青年の剣は俺の体を易々と切り裂いていく。

俺は抵抗するようにその青年に向けて【怠惰】の力を放つ。

【怠惰】の能力は文字通りやる気を無くすこと。


やる気、と言うのは多岐に渡るため応用力が高い能力だ。

俺の能力によって「動く気」を無くした青年はその場に倒れ込む。

そして俺の体を切り裂いていた剣の動きが止まる。

どうやら肩口を切るだけに止まったみたいだ。


そこまで確認して後ろを見る。

そこには驚いた顔のイルと、泣きそうな顔のレンが抱き合っていた。

それを見た俺は、


ああ、今度は守ることができた。


そう思い意識を手放した。


次回はヴェルの過去話を書く予定です。

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