第20話 強欲は襲われる
ここから一章の終わりの話です。
家を購入して数日後、ある程度の部屋の掃除を終えた私は、ヴェルとレンちゃんを招待する事にした。
「レンちゃんはダンジョン、ヴェルは多分ギルドに行けば会えるでしょう。」
確認するようにそう呟いて私は歩を進める。
そう思ってレンちゃんのダンジョンに向かう私の足取りはとても軽やかだった。
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「全く、あいつは肝心な時にいないんだから。」
冒険者ギルドを後にした私はこの場にいないヴェルに悪態をつく。
「まあ、まあ、もどってきたらすぐにつたえてくれるみたいだから、おちついて、ね?」
その呟きを聞いていたレンちゃんは、私に落ち着くようにと注意する。
その仕草にはどこかあざとさが感じられる。
それを見た私に些細なことなどどうでもいい、と行った感情が湧き上がる。
「そうね、場所はちゃんと伝えてくれるみたいだし、私達だけで先に行っちゃいましょうか」
このまま待つのはレンちゃんに悪いわよね?
ヴェルが受けたのも簡単な依頼らしいし道中で追いついてくるかもしれない。
そう思いこのまま家に行く事を提案する。
レンちゃんは、
「ん、わかった。」
とだけ言うと歩き出す。
落ち着いているように見えても、小さな女の子には変わらないのね。内面、すごく楽しみにしてくれているようだ。
私はレンちゃんの行動の早さと、その軽やかな足取りを見てそう判断する。
「じゃあ、いきましょう!こっちよ。」
私はレンちゃんの案内をし始めた。
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「じゃあレンちゃん、私と手を繋ぎましょう。」
街から出た私は開口一番、そう告げる。
「また、どうして?」
レンちゃんは不思議そうに聞いてくる。
「どうしてって、はぐれないためよ!こんな所で迷子にでもなったら大変だわ。」
「はぐれる?こんなに、なんにもない、ところで?」
「そう、そうよ!悪意はどこに潜んでいるかわからないわ!!可愛い女の子の身の安全の為に、全力を尽くすのが、私達の義務なのよ!!」
私は力説する。
それに気圧されたのかレンちゃんは少し諦めたように、
「じ、じゃあ、はい、」
と、しぶしぶといった様子で手を差し出してくる。
私はその手を自分の手で優しく包み込んであげる。
あぁ、レンちゃんと手を繋いで歩けるなんて、私はなんて幸せ者なのでしょう。
頬が熱くなり息が荒くなる。
「あの、イル、こわいんだけど、」
レンちゃんが引き気味にそう言ってくるが、興奮した私の耳に届くことはなかった。
それから少しの間、私はレンちゃんの手の感触を堪能しながら我が家に向かって歩き続けていた。
ずっとこのまま、時が止まれば良いのに、なんて馬鹿な事を考えていた
その時だった。突然後方から私達に向かって高速で何かが飛んでくるのが察知出来た。
私はそれに気づくと同時、レンちゃんを抱えて右に跳ぶ。
するとその直後、先程まで私達がいた場所に二本の矢が突き立った。
どうやら流れ弾などではなく、私達を狙った攻撃で間違いないらしい。
私は即座に立ち上がり、矢が飛んで来た方向を見る。その方向では1人の青年が次の矢を射ろうと、弓矢を構えていた。
そして矢が放たれる。
矢は高速で迫ってくるがこの程度なら私でも簡単に対処できる。
私は1枚のカード取り出し、それを実体化させて構える。
当然取り出したのは金属製の盾だ。
カァン
と甲高い音を立てて青年が放った矢は弾かれる。
そしてここでようやく状況を理解したレンちゃんが、
「ごめんなさい、たすかった、」
とお礼を述べる。
そう言うのは完全に危険が去ってから言うものだけれども、それを言う余裕はなさそうだ。
矢を防がれた青年は、それでは倒せないと悟ったのだろう、腰に下げられていた一本の剣を引き抜き、こちらへ走ってくる。
普通奇襲に失敗したらさっさと引くものだけれども、そう思いながらも迎撃用に私も一本の剣を取り出す。
これで斬りつけたりするつもりは無いが、一応、万が一という事もある。
「レンちゃん、私があいつの攻撃を受け止めるから、あなたは後ろから炎で攻撃してくれないかしら?」
私が防御に徹して、最高火力を持つレンちゃんが後ろから攻撃、完璧な作戦だ。
しかし、
「ごめんなさい、むり、いま、ほのおだせない」
レンちゃんは謝辞を述べる。
それにしても、なんですって!?
じゃあ今の私達の戦力って、非戦闘系の大罪とか弱い少女だけ!?
先程まで、なんの問題も感じていなかったがこれはかなりピンチであることに私は今気づいた。
今更逃げようにももう青年は目の前まで迫っている。逃亡を許すつもりは無いだろう。
私は真っ向から戦うことを決めて、剣と盾を構えた。
最近、家のパソコンの調子が悪く、慣れないスマホでの投稿の為、ペースが落ちてしまうかもしれませんが、頑張って書くので何卒よろしくお願いします。
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