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怠惰の王は怠けない  作者: Fis
第1章 強欲は欲深い
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第13話 強欲は試される

私達はいま冒険者ギルドの受付にいる。


なんでも聞いた話によると、ダンジョン内部は魔物がはびこっており危険なんだそうだ。

そのため、一般人は立ち入り禁止らしい。


で、どうしても中に入りたいなら冒険者ギルドに登録して来いとのことだ。

そしてそれを聞いた私達はこうして登録に来ているわけだ。


「すみません、冒険者なりたいんですが。」

受付に近づいたヴェルが受付嬢に声をかける。

「はい、冒険者登録ですね。ある程度戦闘が出来ないと冒険者になれないため軽い試験を受けてもらいますが大丈夫でしょうか?別に後日受けに来てもいいんですよ?」

「ああ、問題ない。隣にいる彼女も一緒に登録したいのだが構わないだろうか?」

「まい、問題ありません。では、此方にきていただけますか?試験会場にお連れいたしますので、」

そう言って受付の人が私達を案内する。



連れられた訓練場のようなところだった。

ような、というのは通常の訓練場には無い入場用のゲートがあるからだ、というかこれ、訓練場というよりは

「闘技場?」

つい口に出してしまう。

ただの独り言ではあったが私達を案内してくれた女性は律儀に答えてくる。

「お察しの通りここは闘技場でございます。ギルドの加入試験やイベントの時など、結構使用頻度は高いんですよ。」

そう言って彼女は闘技場の中央に目を向ける。

「あら?先客がいるわね。」

目を向けた先には魔法使い風の格好をした女性が魔物と対峙していた。

「彼女も加入希望者みたいですね。あなた方も同じ事をする為、待つついでに見学してはどうですか?」

なるほど、それも一理ある。というか他にやる事も無いし見ない理由は無いのだけれども。

そう思い意識を向ける。


どうやらその魔法使いが戦っているのは、三匹の狼だった。

1対3で戦えるのが最低限の戦闘力なのかとかは疑問だ。

そう思っている間に狼の方から仕掛けるのが見えた。

彼女はその攻撃をバックステップで難なく躱すと、炎の玉を攻撃してきた狼に向けて放った。

しかしその攻撃は当たらない。


炎の玉は狙いの遥か後方で爆発を起こしはしたが、敵には何も被害を与えない。

また、炎の玉を放った直後、残りの二匹がそれぞれ左右から襲いかかる。

彼女はその攻撃を前に身を投げ出す事でやり過ごす。

しかしそこには最初に襲いかかってきた個体が待ち構えている。


狼は大口を開けて待ち構える。

絶対絶命と思われた刹那、彼女のローブの中から刃渡りが50センチ程の刃物が現れる。

どうやらローブの裏から飛び出てきた刃物に狼は反応できなかったようで、口の中に刃を生やして数秒のたうちまわった後絶命した。


その後、仲間の死に怒りを覚えた残りの二匹は今までより早い速度でその魔法使いに襲いかかる。

しかし、1対3で倒せなかった相手に1対2で勝てるはずもなく、一匹ずつ確実に仕留められていった。




どうやら終わったみたいね。

魔法使いの格好しているわりに彼女は随分と体を動かすことに慣れていたのには驚いた。

というか、

「あなたさっき最低限のテストって言わなかった?多対一とか、どう考えても最低限じゃない気がするのだけれど。」

「確かに難易度は高いと思われますが、あまり簡単にしてしまうと冒険者になってすぐ死ぬ人が出てくるとかでギルド長が難しくしているんですよ。また、基本的に冒険者より魔物の数の方が多いから必然的に多数対少数を意識をせよ、とのことでして。」

なるほど、確かに理解は出来たが納得はいかないだって、

「それって、ここ以外の街じゃもっと簡単にギルドに加入できるんじゃないの?」

ここのギルド長が勝手に難易度上げているという事はそういう事だろう。

「否定はしません。」

ほら、やっぱりそうなんじゃない。

「しかし、先程の方も合格しているわけですし、不可能では無いので問題はないかと思います。」

やっぱりこいつも一職員、上司には逆らえないみたいだ。

「心配すんなってイル、やってみれば案外なんとかなるかもしれないだろう?しかも一度しか受けられないわけじゃないだろうしさ。」

ヴェルは強いからそう言えるだろうけど、か弱い乙女の私としてはハードルが高いものがある。

「あの、もしよかったら辞退してもよろしいんですよ?」

そんな私の様子を察知したギルド職員が優しく声をかけてくる。

しかし、ここで引く事は出来ない。

何故なら今合格出来なければ今日は宿無しだからだ。

「大丈夫よ、試験は受けるから。」

力なく言い放つ。その言葉を聞いたその子は、

「では、どちらか片方が闘技場に入ってください。準備ができたらゲートから魔物を送りますから。」

と促す。すると先程までなぜか少しソワソワしていたヴェルが

「じゃあ俺が先に行く。」

と走って行ってしまった。


全く、男ってどうしてこういうのが多いのかしら。少し呆れながら私は既に闘技場中央にいるヴェルに目を向ける。

そして、いつでも大丈夫だと言わんがばかりにこちらに手を振った。


それを確認したギルド職員は何かに向かって合図を送っている。

彼女が合図を送った約1分後ゲートが開き魔物が闘技場内に走りこんでくる。

それは先程の狼では無く二頭の赤いクマだった。

どうやら出てくる魔物はその時その時によって違うらしい。

クマの姿を確認したヴェルは真正面から突進していた。

通常そんなことをすれば返り討ちにあうのがいいところだが、そこはあの可笑しな街の住民だった。真正面からの力比べでクマを圧倒した挙句投げ飛ばしていた。

途中

「あ、ありえない……」

とかいう声が隣から聞こえた気がするが気にしないことにする。

あれの非常識っぷりはこんなものじゃない、この程度で驚いていては持たないからだ。



そして、試験開始後3分と経たずにヴェルの試験は終了したのだった。




--------------------


今度は私の番だ。

そう思い気を引き締める。さっきはヴェルが異常なせいで簡単に見えてしまったが、油断するわけにはいかない。

何が出てくるか、どれだけ出てくるか、それが不明な上に私は戦闘は苦手なのだ。

そこらのやつよりは多少戦えるがヴェルと比べるとどうしても見劣りする。


ギギギギギ・・・・・


ゲートが開く音がする。

そしてそこから出てきたのは、



20体を超える大きな蟹だった。

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