第12話 強欲は会いに行く
今回ちょっと短めです。
「ところで、今まで聞いていなかったんだけどこの街に何の用なの?」
「言ってなかったか。この街に友人が引っ越してきたらしくてな。」
へぇ~、こいつの友人ねぇ、
普通のやつだと助かるんだけど。
「で?その人はどこに住んでいるの?」
越してきたっていう報告があるのだから場所くらいは分かっているだろうと思って聞いてみる。
「あぁ、確か街の中央部にどでかい家を建てたって言ってたぞ。」
その言葉を聞いた私は街の中央部と思われる方向に目を向ける。
しかし、その方向にあったのは巨大な遺跡と思われる建造物だけだった。
大きな壁に囲まれたその遺跡の周辺にはほかの建造物はないようにみえる。情報違いじゃないか。そう思いヴェルのほうに目を向ける。しかし、
「あれ?確かに街の中央部って手紙には書いてあったんだけどなぁ・・・」
彼もよくわかっていないらしい。
もしかして情報が間違っているのではないか?そう思いヴェルに問いかけてみる。
「ねぇ、その手紙の内容本当に正しいのかしら?書き間違いとかじゃないの?ちょっとその手紙見せてくれる?」
それを聞いたヴェルは背負っている荷物袋の中から一枚の紙きれを私に手渡した。
手紙には確かに街の中央に家を建てた。という文章とともに赤い印のついた街の地図が同封されていた。
妙に細かい地図をみた私は、それが間違いだと思わなかった。
「確かに、場所としてはあの遺跡っぽいところみたいね。とりあえず近くに行ってみない?」
何か手掛かりくらいはあるかもしれない。
「それもそうだな、あいつがそんな初歩的なミスをするとは思えないしな。」
私たちは街の中央部にそびえたつ巨大遺跡を見に行くことにした。
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遺跡外周
そこには多くの人が集まっていた。
しかし違和感があるとするならば集まっている人はみんなは何かしら武装しているというところだろう。
私が集まっている人に意識を向けている最中、ヴェルは遺跡そのものを見ていた。そして何かに気づいたように、
「あぁ、あの馬鹿・・・」
とつぶやいた。
「何かわかったの?ヴェル」
気になったので聞いてみる。
「あぁ、この遺跡は俺の友人の家で間違いない。そして、これはダンジョンだ。」
あぁ、ヴェルの友人と聞いて嫌な予感はしていたが、やはり普通の人じゃなかったみたいだ。
【ダンジョン】
【称号】持ちが作り出すことができる建造物
【ダンジョン】の大きさは製作者の【称号】の強さに比例する。
【ダンジョン】内部には定期的に魔物が生み出される。魔物の強さは基本的に入口からの距離に比例する。宝箱も魔物と同じルールで生み出される。
【ダンジョン】内で死んだ生命は【ダンジョン】に吸収される。魔物は死んでもその場に残る。
また、【ダンジョン】内部で【称号】に関する行動をとった場合、ダンジョン製作者の力が増幅する。
そして、【ダンジョン】の魔物は一定時間以上経つと外に獲物を探しに行く。
とまぁこれがダンジョンの大まかな常識なんだけど、
「こんなに大きなダンジョンを生み出すなんて、あなたは何に会いに来たのよ!?」
ここまで大きなものは見たことはない。
「俺が会いに来たのは【嫉妬】の悪魔だな。大罪持ちだが結構気のいい奴でな。昔から結構よく会ってたんだけど、最近こっちに来たって連絡がきてな、引っ越し祝いでもしてやろうかと。」
私が知らないだけで大罪持ちたちは結構つながってたりするのかしら?
それはともかく、
「どうやって目当ての人物に会いに行くつもり?まさかダンジョンを真正面から突破するわけではないでしょうね?」
こんなに大きなもの、正直踏破できる気がしないわよ?
「それについては問題ないらしいぞ。なんでも呼べば迎えに来てくれるらしい。」
「そう、それなら安心ね。じゃあ早速入るの?それとも明日にする?」
「いや、宿とかの当てもないし止めてもらおうかと思ってきてたんだ。このまま入るぞ。」
そう、もう日が傾きかけてるし宿をとってないならそれもいいかもしれないわね。
「わかったわ。いきましょう。」
そう言って入り口から入ろうとすると、
「そこの二人、止まれ!!」
入口の横に立っていた騎士風の男に話しかけられた。
「ん?どうした?なにかあったのか?」
ヴェルは問題があったのかと問いかけている。
しかしその質問の答えの代わりとして帰ってきたのは、
「お前たちを中に入れるわけにはいかない。」
という、意味不明な言葉だった。




