表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここゲーム世界ですし、死んでログアウトするのが目的ですし  作者: ぷっつぷ
第20章 これ天下分け目の戦いですし
134/173

ミッション20—7 【バトル:ロスアン】コンドル I

 穴のあいた最下層から階段を探し出し、階段を上ったファルたち5人。

 5人はコンドル内部の廊下で、足を止めた。


 コンドルの内部は、想像していた以上にSF感が強い。

 近未来的な、飾り気のない灰色の、仄かな明かりに照らされた廊下は、まるで宇宙船の中のようだ。

 

 物珍しそうに辺りを見渡し、男の子のロマンをくすぐられるファル。

 すると、ファルのスマホに1通のメールが届いた。

 メールの送り主は、サダイジンだ。


『コンドルの設計図だぞ。船内の地図代わりになるはずだぞ』


 そんな文章とともに送りつけられてきた、非常に詳細な図。

 コンドルの内部構造が一目で分かるような設計図だ。

 製作者でなければ絶対に手に入れることのできない、機密文書中の機密文書である。


 スマホをスクロールし、ファルは設計図を読み込む。

 ヤサカたちもファルの周りに集まり、スマホの画面を眺めていた。


「コンドルを破壊するには、火薬庫を爆破するか、機関部を破壊するかだね」


「どっちも楽しそうです! できればどっちもやりたいです!」


「That's impossible. どっちもは贅沢すぎ」


「幽体離脱をすれば、できる」


「なあティニー、お前は幽体離脱なんかできるのか?」


「できない」


「だよな。じゃあホーネットの言う通り、火薬庫と機関部両方の破壊は無理だ」


「え~!? せっかく派手な大爆発が見られると思ったのに……!」


 口を尖らせるラムダだが、中身のない彼女の言葉は聞くだけ無駄だ。

 それはティニーも同じである。

 彼女らの意見は、稀にある核心を突いたもの以外、基本的に無視するに限る。

 

 話し合いはファル、ヤサカ、ホーネットの3人でするべき。

 3人はその共通認識のもとで、話し合いを進めた。


「破壊力を考えるなら火薬庫の破壊、確実性を考えるなら機関部の破壊だけど?」


「だな。火薬庫壊しても、エンジンが無事だったから墜落は免れました、ってなる可能性があるもんな」


「超高速移動で逃げられちゃうかもしれないしね。コンドルを確実に墜落させるなら、機関部を壊した方が良いと思うよ」


「よし、決まりだ」


「Next. どうやって機関部に向かう? 戦闘用ドロイドがウヨウヨしてるから、ステルス行動は無理だけど? というか、もう見つかってると思うけど?」


「そうなんだよね。どうしようかな……」


「戦闘用ドロイド?」


「コンドルを防衛するドロイドだよ。一体一体は強くないんだけど、大勢で攻めてくるから、厄介な敵なんだ」


「そんなもんまでいるのか。だとしたら……」


 再び地図と睨めっこするファルたち3人。

 ティニーとラムダは話し合いに飽きたのか、廊下を走っていたお掃除ロボットで遊んでいた。


 しばらく考え、ヤサカが答えを出したらしい。

 ヤサカは口を開いた。


「戦闘用ドロイドは数が少なければ強くない。だから、3手に分かれて機関部に向かうのはどうかな?」

 

 そう言って、ヤサカは設計図を指し示し説明をはじめる。


「コンドルは大きいから、階層も多いんだ。でも、階層と階層をつなげる階段が少ないんだよ。ほら」


 ヤサカの言う通りだ。

 全長1000メートル、全高180メートルのコンドル内部は何階層にも分かれるが、階段やエレベーターは5カ所程度しかない。


「だから、3手に分かれてそれぞれ違う階層を進めば、ドロイドの合流を少しは防げると思うんだよ。階段を壊しちゃえば、なおさらね」


「それ、良いと思う」


「俺もヤサカの案に賛成だ」


 全会一致(・・・・)の賛成。

 話し合いは次の段階に。


「それじゃあ、どんな組み合わせで3手に分かれようか?」


「ホーネットは単独で良いだろ」


「あんたに言われなくてもそうする気だった」


「ひとつ決まりだ」


「戦闘力や火力で考えると、ファルくんとラムは、私かティニーと一緒の方が良いね」


「確かに。ただ……ラムダとティニーを一緒にするのはヤバイ気が……」


「そうだね……」


 ジト目をしてティニーとラムダを眺めたファルとヤサカ。

 答えは決まったも同然か。


 しかし、話し合いの内容がティニーとラムダにも聞こえていたようである。

 お掃除ロボットで遊んでいた2人は、顔を見合わせ、何やら頷く。

 そして2人は胸を張り、ファルたちに言った。


「私、ラムダと一緒に行く」


「わたしもティニーと一緒が良いです!」


 異論は認めぬ、と言わんばかりの2人。

 ホーネットは首をかしげ、2人を説得しようと前に出た。


「アクティブ2人がコンビで行動とか、不安しかないんだけど。それに、別に2人でコンビを組む必要性はないでしょ?」


「必要性、ある」


「そうです! 必要性は大ありです!」


「はっきり言うね。じゃあ、その必要性を教えて」


「簡単なことですよ! わたしとティニーがコンビを組めば、必然的に、ファルさんとヤーサがコンビになるんです!」


「……あ!」


「すべては、ヤサカのため」


「……分かった。ラム、ティニー、2人でコンビ組んで」


 どうやら説得されたのはホーネットの方だったようである。

 彼女がティニーとラムダの味方になってしまったことで、ファルとヤサカの意見は通らない。

 結局、ファルとヤサカ、ティニーとラムダ、ホーネット1人という組み合わせで、ファルたちは3手に分かれた。


 3手に分かれたところで、廊下の奥から何かが走ってくる。

 必要最低限の骨格のみで組み立てられた人型ロボットだ。


「戦闘用ドロイドが来たよ!」


 そう叫び、武器を構えたヤサカ。

 一方でファルは拍子抜けしてしまった。


 竿のような細い腕で武器を構え、骨のような細い足をバタバタと動かして走り、むき出しの配線を揺らすドロイド。

 バットで殴れば簡単に破壊できてしまいそうな見た目である。

 はっきり言って、弱そう。


「あれが戦闘用ドロイド? 小学生が工作の授業で作った人形じゃなくて?」


 戦闘用ドロイドというのは、もっと厳つい見た目だと思っていた。

 あるいは、もっと不気味な見た目だと思っていた。

 まさか、人体模型よりも弱そうな見た目だとは思ってもみなかった。


 ところがそんなファルの思いは、一瞬で吹き飛ばされる。

 

 必死で走る戦闘用ドロイドは、次から次へと増えていった。

 まるで巣を突かれたアリのように、際限なくドロイドが増えていく。

 最終的に、コミケもびっくりのドロイド大集団が出来上がる。


「よし、逃げよう!」


 弱っちいドロイドも数百体となればどうしようもない。

 本能的に危機感を感じたファルたちは、話し合いの通りに3手に分かれて走りだす。


 ホーネットは階段を上ることも下ることもせず、数百体のドロイドに追われながら廊下を駆けて行った。

 ティニーとラムダは、ティニーがSMARL(スマール)を1発撃ち込み、階段を下って機関部に向かう。

 ファルとヤサカは、階段を上り機関部に向かって走った。


 階段をのぼり、上層の廊下にやってきたファルとヤサカの2人。

 どうやら上層でも、戦闘用ドロイドは待ち構えていたようである。

 2人は階段を上りきったところで、十数体のドロイドと鉢合わせてしまったのだ。


「ファルくん! しゃがんで!」


 とっさのヤサカの叫び。

 ファルは条件反射で体を屈める。


 ファルが体を屈めると、ヤサカはアサルトライフル――MR4をドロイドめがけて乱射。

 5・56ミリ弾に撃たれたドロイドたちは、あっという間に壊れていく。

 

 だが、ドロイドはその脆さを数でカバー。

 30発の弾丸をすべて使っても、ドロイドの数は減らない。

 ヤサカはリロードは間に合わぬと判断し武器を持ち替えるが、ドロイドたちはそれよりも早く、武器を構えていた。


 スキル『シールド』を使えば、この危機を乗り越えるのは難しくないだろう。

 問題は、一度使ったスキルにはクールタイムがあること。

 できればまだ、シールドは使いたくない。


 そんなヤサカの思いをファルは理解している。

 彼は屈んでいる間にコピーNPCを5体ほど出現させ、自分たちとドロイドの間に立たせた。


「ナイスだよ! ファルくん!」


「今だ! 逃げるぞ!」


 コピーNPCを盾にドロイドから逃げるファルたち。

 コンドルの機関部までは、あと300メートルほどだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ