03〜虫と月
03〜虫と月
僕は小さな虫だった。
黒いプニプニした身体に赤い斑点のついた芋虫。どこにでもいそうな、誰にも見つけられなさそうな虫。
暗い森の中、ひっそりと暮らしていた。
でもある日、そんな僕は葉っぱの隙間に、優しい光の降りかかる場所を見つけた。
光にあたりながら上を見上げると、
寒い闇の中にポカリと浮かぶ丸い黄色。
あぁ、素敵だな…。
もっと近づきたい。
僕は精一杯に背伸びをした。
それでも、葉っぱの間からの光は変わることなく降り注ぐ。
…やっぱり届かないよね。
でも、それでもいい。今はこの光に当たることができれば。
太陽のように暖かくはないけれど、その優しい光は闇の中で特に際立って見えた。
それから朝が来て、僕は決意した。
もっと近くに行きたい!
そうして僕は空の光に会いに行くために、歩き出した。
森の中はいつものように暗かったけれど、よく見るといたるところに優しい光は降り注いでいる。僕は光の多いところを辿って進んでいった。
何日も何日も、歩き続けて、だんだんと体が疲れてきた。
あと少し、そんな気もしたが、もう歩けない。
僕は近くで一番光の当たる場所を探して、そこで硬くなった。
なんども光が僕を照らす。
あぁ、君に照らされながら消えるなら、悪くもないかな。
僕はその光に恋をしていた。
そうして僕は死んだのか眠ったのか、意識がなくなった。