01〜夕日のさす丘で、また君と。
夕日のさす丘で、また君と。
暗いわけでもなく、悲しいわけでもなく、何もないわけでもない
ただ、空っぽの心が妙に辛く締め付けて 締め付けられるものもないはずなのに
わかって欲しいとか、大好きだとか
よくわからなくなってしまった
たとえば、なぜ君にいて欲しいかと聞かれても僕の答えは泡のように口から漏れるだけ
漏れた言葉は泡のくせして、僕にだけは痛く接する
痛い、辛い。
100点とっても辛い。0点だって辛い。50点もなにか辛い。
じゃあ何がいいのか。
僕らは考えた。答えは死なのか?
そこは何もない、そういうわけではない。そこにはなにかあるかもしれないし、もしかしたら死自体ないのかもしれない。
そこはなにかわからない。誰にも、どんなにがんばってもわからない。
だからいいように押し付ける。
僕は君の隣に座って夕日を眺めるその日を、押しつけた。君はわらって僕もわらって。
たまに2人でさみしくなって、それでもてはあったかくて。
ただそれだけの、2人だけのそんな幸せな世界。
そこが僕の逃げ場。当て付けの妄想の逃げ場。
ある日僕はそこを夢見て、生まれたての小鳥のように、勇気を出して羽を広げた。
始めて仰ぐ青い空。どこまでも広がっている青の世界は優しく僕を包み込む。
鳥になった僕はどこまでもどこまでも旅をした。
何年たったのか、ある日、一つの家に着いた。そこには、昔よくみた君の横顔があった。幸せそうな君と、隣で笑う誰か。
そこは僕の場所だ、と叫びたかった。でも、僕は鳥だ。ただ見ることしかできない。話すことも、笑うことも、あの日みたいに泣きあってぶつかり合って会えなくなることも。
何もできない。
まただ、胸が張り裂けそうになる。
痛い、辛い、重い…想い…
大きな声がして、僕の心は張り裂けた。重くなった体は空から落ち、羽もひらひらと散った。
なお声は空に響く。どこまでも、どこまでも、それはまるで母をなくした赤子のように…。
そして僕は目を開けると、夕日に照らされた君がいた。
何年間も待ちわびたその時間。
僕は息をするのをためらった。
君の隣にいたい。ただ、君といたい。でも、僕じゃダメだ。君の笑顔は、あの子じゃないと…。
泣きながら僕はまた泡の言葉を発する。泡は僕の心に跳ね返って痛くする。
君といたい… でもダメなんだ
僕じゃダメなんだ、君のためを思うなら、
でも、いたい。ただいて欲しい。
理由はわからない、でも、ただ、ただ、いて欲しい…。
君との思い出が溢れ出て来て、あの日のようにまた一緒に、と僕の心は叫んだ。
僕のせいで君は不幸になってしまう…、もうひとりの僕は叫んだ、
怒りと悲しみと絶望と願望と…僕の全てが涙と泣き声で空に溢れ出た。
もう、わからないよ…
僕は夕日に向かう君に言った
君は突然立ち上がって、僕を体ごと大きく抱きしめた。
「答えなんてこの世界にない。あるのは形のない思いだけ。だからわたしたちは、このさみしい世界を、さみしいと思う気持ちを共有するために結ばれたんだよ。
この空は、泣きすぎて晴れた君の頬みたいに真っ赤だよ。真っ当に生きた君の色。
この海は君の流した涙。しょっぱい涙は今、生きる糧になっている。
料理に欠かせないスパイスなのよ。
君の前にいる私は、君のためになっているかしら?
きっとなっていないわね…
でも、それでも。君といたいと思うんだ。」
好きも嫌いもわからない…
ただ君といたいと強く思うんだ。