ラブコメ世界に転生してしまった。よし大好きな負けヒロインを狙おう
ちゃぷちゃぷという音と共に僕は前世の記憶を思い出した。
頭の中に情報が流れ込んですごく気持ち悪い。
「どうしたのきょうちゃん?」
可愛らしい女の子の声が聞こえる。
七歳の全裸の幼女が僕の顔を覗き込んだ。
「なんでもない。なんでもないよかや姉」
僕はその少女の事を知っている。
お隣に住むニ歳年上の茅野だ。僕はいつも彼女の事をかや姉と呼んでいる。
普段何かと忙しい両親の代わりに僕の事を面倒を見てくれる女の子だ。
今日は両親の帰りが遅いのでかや姉の家にお泊りの日、かや姉のお母さんが作った料理をお腹一杯食べた後、かや姉が録画した女の子用の魔法少女アニメを一緒に見ていたら、かや姉のお母さんからお風呂が沸いたと言われて一緒に入ることになった。互いに体を洗いっこし、互いにお湯を流し、一緒の湯船に浸かった瞬間、僕の頭に記憶と精神が雪崩れ込んだ。
すでに精神は前の僕が支配している気がする。
前の僕は普通に小、中、高、大と普通の学校に行って、普通の会社に入った。二十七歳の夏に信号無視した子供を助ける為に車に引かれてその後の記憶が無い。残念ながら彼女の記憶も無い。
漫画が好きでオタクという人もいたけどあまり隠さずオープンにしていたのが功をそうしたのか、あまり虐められる事も無かった。
僕は顔を上げて目の前の女の子を見る。
この顔を知っている。
この顔は前世で流行ったボーイミーツガールラブコメ漫画のコイラブのキャラクターの一人かや姉の幼き日の顔だ。
主人公の回想で何回か出てきたので覚えている。
僕はお風呂場の鏡を覗く。
主人公の回想に出てくる幼い日の主人公の顔と同じである。
僕はコイラブの主人公京谷に転生してしまったようだ。
コイラブはちょっとえっちぃ学園ラブコメで所々お色気シーンが入る。
ぶつかって倒れてパンツ丸見えから着替えシーンを事故で見てしまったりなどだ。
その都度ヒロインからの制裁を受けるのがお約束のお話である。
その何度も繰り返されるお色気シーンから流石京谷さんとネットでは言われていた。
僕も連載誌を読みながら流石です京谷さんと言ってしまった事もある。
ヒロインは五人で、全員が主人公の事を好きになる。
最終的にメインヒロインを好きになり告白して恋人になってこのお話は終わる。
「ねぇきょうちゃん」
「うわ!」
頭に雪崩れ込んできた情報を整理していたら後ろから抱きしめられた。
ぷにぷにとした感触が背中から体全体に広がる。
「どうしたの? 体冷えちゃうよ、もう一回暖まろう」
そう言って僕をかや姉が引っ張ってくれる。
お風呂なのだからかや姉も全裸だ。
僕はロリに興味は無い。興味はないんだ。
そう心を落ち着かせて、かや姉の手に引かれてもう一度湯船に入った。
体の芯から暖まるいい湯だ。はぁ。
「隙あり。こちょこちょ」
湯船に浸かってボーっとしているとかや姉が僕のわき腹をくすぐってきた。
「あふ、ひゃ、やめてよ、かや姉」
「ぼーっとしているきょうちゃんが悪いのよ、こちょこちょ」
「あひゅ、はは、お返しだ。こちょこちょ」
なんでこんな子供っぽいお返ししてんだ。かや姉の体がモチモチして柔らかそうだったとかでは決して無い。何故だ。
かや姉の全身の柔らかさを堪能してお風呂から出てパジャマに着替える。
二人でかや姉のベッドに向かって、二人で布団に入って向かい合って眠った。
かや姉が寝た事を確認してまた情報を纏める。
この世界はたぶんコイラブの世界だろう。死んで僕はこの世界の主人公に転生したのだろう。
チラッとかや姉を見る。
コイラブの世界のかや姉の位置、それは、あらあらうふふ系お隣の幼馴染お姉さんだ。
それがどういう位置なのかは一目瞭然。つまり、完全な負け犬ポジションである。
漫画やラノベのラブコメにおける幼馴染の勝率は三割もいかない。
後から幼馴染だったというのを含めればなんとか五割いくだろう。
だが、近所に住む幼馴染お姉さんという属性になると勝率は一分、いや、一厘、一毛といった状況になるだろう。
かや姉もそのその例に漏れず主人公を暖かく見守りエッチなハプニングがあってもあらあらうふふで済ませ。
「きょうちゃん成分補給」 と言いながら俺の頭を抱きしめて高校三年になって大変発達したその胸に僕の顔を押し付けるキャラである。
でろっでろに甘やかしてくれるけど結局はメインヒロインの藍に主人公を持っていかれるキャラである。
最終回の前のお話でかや姉は僕に告白するが、僕は藍の事が好きなんだと言ってかや姉を振る。
かや姉は涙を流しながらも「きょうちゃんが選んだ人なら安心だね」 と言って笑顔を見せてくれる。
前世の僕はここで泣いた。
もうわかっていると思うけど僕はこの作品の推しメンはかや姉である。
っていうより他の四人なんか別にどうでもいいとすら思っていた。
高校を卒業と同時に夏と年末にやる同人誌即売会で毎年かや姉本を買いあさったくらいだ。
目の前にはすやすやと眠るかや姉がいる。
とっても可愛い。
これが将来あのかや姉になる。
ならばすることは一つ。前世ではさんざん「俺の嫁」と言っていたかや姉を本当に俺の嫁する。
コイラブではかや姉は僕の事をずっと好きでいてくれた。
だけど僕はコイラブの京谷ではない。だからずっと好きでいてくれる保障なんてない。
ならばどうするか、まずかや姉に嫌われないように気をつける。
次にかや姉を守れる男になるために体を鍛える。
次にかや姉を養う為にいい大学を出る為に勉強を頑張って、良いところへ就職する。
高校に入っても他のヒロイン達のフラグを立てない。
かや姉に余計な虫が着かない様に警戒する。
よし! 完璧!
完璧な計画が立ったと思って俺はかや姉に抱きついて眠った。
かや姉は抱きついたら抱き返してくれた。
「甘えん坊なんだから」 と言っていたが多分寝言だろう。
そう決心したが、特に変わる事はない。
心が体に引っ張られているのか、保育園で同年代と他愛も無く遊び、かや姉のお迎えで帰る。
その日は母の仕事が早く終わったので母の料理を食べ、母の腕の中で眠った。
母は、母でなぜかたまに出てくるお色気要員で、しかも原作登場時よりも若い。
そんな母と一緒の風呂に入り一緒に眠るのも悪くなかった。
そして母と相談し、僕は習い事を始めた。
習い事は、かや姉がバレエの習い事をしている時に空手を、ピアノをやっている時に柔道をそれぞれ習い始めた。
習い事を始めてから一つの事に気づく。
いわゆる転生チートというやつだ。
コイラブはコメディ要素の強い作品でヒロインにエッチなことをした後の折檻で主人公の体はボロボロにされる。だけど次のページに行けばすぐに直っている。そんな作品である。
空手も柔道も細かい傷なんかは日常茶飯事である。
だが僕の体はそんな怪我も深呼吸して休憩すればすぐに直って疲労も回復してしまう。
最初は戸惑ったが誰も不思議に思わないので次第に慣れていった。
小学校にあがった後も僕は運動に勉強に遊びに必死になった。
小学校の低学年にありがちの女の子と遊ぶとからかわれて好きな女の子に意地悪してしまうという事もしないようにした。
かや姉は僕が甘えると受け止めて抱きしめてくれる。
ただその感触が気持ちよくて大好きだ。
抱きしめられた感触での推理だけど、かや姉はおっぱいが膨らみだしたのが四年生、ブラを着け始めたのは六年生である。
僕が六年生の時、担任教師に母との三者面談が行われたときに中学受験を薦められた。
最初、相当悩んだ。
将来かや姉を養って幸せな暮らしをさせるには中学から受験して行く方がいいだろう。
だが、かや姉は中学は公立、高校は舞台となる高校に入る。
中高と一年しか一緒にいれないが同じ学校には行きたいのである。
散々悩み、父と母と話し合い僕は公立中学へ行くことを決めた。
中学になってもかや姉は僕を甘やかしてくれる。
中学生になり大人になり始めたかや姉はその体の魅力を知らないのか未だに僕を抱きしめてくる。
その甘い感触に溺れそうになるがそれを必死に我慢して抑える。
まだだ、まだ、あれ? 今普通に告白して恋人になっても良くないか?
別に清い交際で高校でも清い交際を続ければいいんだから、畜生なんでもっと早く気づかなかったんだ。
そう思って俺はある日かや姉の家に遊びに行きかや姉の部屋に二人っきりになった。
「ねえ、かや姉」
「なに?」
「俺さ、かや姉の事が好きだ」
「私もきょうちゃんのことが好きだよ」
いつも通りの、のほほんとした返事が返って来た。だが、それじゃない俺が求めているのはそれじゃないんだ。
「じゃ、じゃあ、俺の彼女になってよ」
「ふぇ? か、彼女?」
「そう」
「え、でも、その」
かや姉が顔を真っ赤にしてもじもじと指を動かしている。
「嫌なのか? ごめんかや姉」
「違うの、いいの、うん、私きょうちゃんのこと大好きだから、ありがとう」
そう言って満面の笑顔を見せてくれた。
今日、その日俺は茅野と恋人同士になった。この笑顔をずっと守っていこう。そう誓ったのだった。
「あのね、でも、呼び方は今まで通りきょうちゃん、かや姉がいいな」
俺が明日に向かって誓っていたらかや姉にそう言われたのだった。
俺がかや姉と恋人同士になった後もあまり変わらない。
朝一緒に歩いて登校し玄関前で別れる。
放課後は、かや姉は生徒会長として、俺は書記として働く。
俺が二年生に上がると同時にかや姉は舞台となる高校へと進学したがその関係は変わらない。
変わらせない。
俺も二年送れて舞台となる高校へ入学した。
高校入学初日
漫画だと第一話の瞬間だ。
漫画の一話だと俺が寝過ごし、かや姉に起こしてもらい急いで学校へ。
なんとかセーフで学校に間に合う。
校舎内で息を整えていると後ろから。
「うわぁ、どいてどいて」
という掛け声が、それに気づいて後ろを振り向いて正面衝突。
「痛ったぁ」
「痛てて、ん? なんだこのやわらかいものは」
もみもみ。
「どこさわってんのよ! エッチ、変態!」
ドカ、バキ、グシャ、グシュ、チュッ。
という感じである。
目覚めて朝一番にかや姉のおっぱいがドアップも捨てがたいが、俺はちゃんと前日の夜に夜更かしをせず、目覚ましもちゃんとセットして目覚めた。
完璧だ。
そして完璧な目覚めだ。
朝の体操、筋トレ、走りこみ、シャワーといつもの日課を済ませて自分の部屋へ戻り高校の制服に着替える。
身だしなみも完璧だ。不潔にしてかや姉に嫌われたら大変だからな。
部屋から出てリビングに向かうと良い匂いがただよって来た。
リビングに入るとエプロンをしたかや姉が机に朝食を並べていた。
共働きで忙しかった両親はついに二人揃って海外出張に行ってしまった。
本当に原作通りに話が進む。
まぁ、そのおかげで、かや姉と同居に近い形で一緒に朝夕と一緒に食事が出来るのであるがね。
「もうできてるよきょうちゃん。あっ! その制服、やっぱかっこいいねきょうちゃん」
「ありがとうかや姉」
「さ、冷める前に食べちゃお」
「ああ」
そう言って二人で朝食を食べて、余裕を持って家を出た。
俺とかや姉が通う学校は歩いて行ける距離にある。
これで原作のメインヒロインである藍とのフラグ起ちは回避できるだろう。そう思っていた。
学校へ向かう途中歩道橋に重い荷物を背負ったおばあちゃんがいた。
俺とかや姉はそのおばあちゃんを見てしまった。
かや姉の困っている人がいたら見捨てられない性格が出てしまう。
もちろんかや姉に嫌われるのが嫌な俺も手伝う。
かや姉がおばあさんの荷物を持って、俺がおばあさんを持つ。
鍛えられたこの体ではおばあさんは無いも同然の軽さだ。
歩道橋で反対側まで行っておばあさんに御礼を言われ俺とかや姉はまた学校へ向かう。
だが、数歩歩くごとに道に迷ったおじいさんや、外国人に出くわし、かや姉とそれを解決する。
「あ! きょうちゃん、時計見て、もう時間ぎりぎり」
「うわ、本当だ」
「急ごう、きょうちゃん」
そう言って俺とかや姉は走り出して学校へ向かった。
学校へ到着して息を切らしているかや姉を見守る。
俺は鍛えているからあまり息を切らしていない。
「うわぁ、どいてどいて」
俺の後ろから声が聞こえる。
俺が振り向くと口に食パンを咥えた藍がこちらに走ってきている。
交わそうと思えば交わせる。だが交わした先にはかや姉がいる。俺が交わしたらかや姉とぶつかってしまうだろう。そんな事は出来ない。
俺は藍と正面衝突をした。
原作では二人はぶつかって倒れこむが今の俺は鍛え抜かれたこの体がある。
一般女子レベルの体格の藍がぶつかったってビクともしない。
だが、藍は普通の女の子だ。俺とぶつかって反動で後ろに倒れて怪我をしてしまうかもしれない。
だから俺は後ろに倒れる藍の腕を掴んで転ばないように引き寄せ持ち上げ、お姫様抱っこを施す。
俺のこの早業に藍は口に咥えた食パンをポロッと零す。
俺は藍の背中に置いた右手をずらし受け止める。
藍を丁寧に降ろし俺にお姫様抱っこをされてからポカンと開け続けている口にトーストされたパンを突っ込んだ。
「ちゃんと前を見て走ってくれ、危ないぞ」
「は、ひゃい」
完璧だ! 完璧に藍の出会いフラグを潰した。
俺は後ろを振り返りかや姉の下へ向かう。
「大丈夫かや姉?」
「大丈夫だよきょうちゃん、んじゃ行こ!」
俺は振り分けられた教室に向かうのだった。
原作では教室で自分の割り当てられた席に座ろうとすると藍が隣の席に座っていて一悶着あるのだが、今朝の出会いフラグを潰しているので当然ない。
なぜだか、藍の視線はビンビンに感じるがな、うん無視しよう。
そして次のイベントだ。
かや姉はこの学校の生徒会の副会長をしている。
その伝で教師から体育倉庫に荷物を置いてきて欲しいと頼まれる。重い荷物を持って体育倉庫の扉を開けると中にポニーテールのスレンダー美人の少女が上半身ブラのみ、スカートに手を置いている状態で鉢合わせる。
互いに時間が止まり、次第にその少女の顔が真っ赤に染まり謎時空から出した竹刀でドカ、バキ、グシャ、グシュ、チュッという事になるのだ。
その子が、かや姉、藍、に続く第三のヒロインである真中である。
荷物運びすら断りたいがかや姉の名前を出されて断るわけにはいかない。
幸い鍛えているので簡単に荷物は運べる。
体育倉庫の前で荷物を置いて扉をノックする。
「はーい」
「先生に頼まれて荷物をしまいに来たんですけど開けて大丈夫ですか?」
「あ、ちょっと待ってね、んしょ、よいしょ、いいですよ」
中からガラガラと開かれて真中が出てくる。
その姿は制服に身を包んでいて竹刀は持っていない。
「どうぞ、ごめんなさいね、でも、よく中にいるってわかりましたね」
「さっきそこで先輩に中にまだ誰かいるって言ってましたから」
嘘であるが、さっきヒロインではないが真中とセットでお色気シーンで使われる真中の先輩とすれ違ったのでそれを使わせてもらう。
「そうですか、その荷物ですか? 重そうですね手伝います」
「大丈夫です。鍛えてますから」
「そう言わずに」
そうやって互いに言い合っていたら手と手を握りあってしまった。
真中は手を引いて顔を真っ赤にしてしまった。
俺はその隙に全ての荷物をしまった。
顔を真っ赤にして俯いている真中に一応お礼を言ってその場を後にした。
順調にフラグを起たせないようにしているぞ。
次はかや姉のイベントだ。
「きょうちゃーんこれ運ぶの手伝って」
「ああ、かや姉、これでいいの?」
「うん」
「任せろ、全部持ってあげるから」
「ありがとう、きょうちゃんこれを三階に運ぶの」
そう言ってかや姉は階段を駆け上がる。
俺はかや姉の方向を見た。ナイスピンク!
かや姉のイベントは回避するつもりは無い!
そしてそのイベントは第四ヒロインに続く。
この荷物を生徒会室に運ぶのだ。
第四ヒロインは生徒会長の朱音さんだ。
かや姉を抑えて生徒会長になったカリスマだ。
原作では俺が生徒会室に入ると窓を全開にして後ろから風を受けて仁王立ちしている朱音さんがいる。そのシーンは一ページ見開きで黒いレースの下着をパンもろさせている。
パンもろして俺に見られても豪快に笑うだけの朱音さんだが、彼女は物語が進んでいくとイベントが起こる人物なので今は安心である。
だが、出会いのイベントは潰しておこう。
かや姉が扉を開けて俺は生徒会室に入る。
「待ちかねたぞ茅野! 斉藤京谷!」
あっ! 俺、斉藤京谷です。
俺は来ると思って横を向いて荷物を置いた。
その瞬間窓から強風が入り込んできた。
「きゃ」
かや姉のかわいい声が聞こえた。しまった。そっち側に荷物を置けばよかった。
「斉藤京谷! 残念だったな、今私の方向を向いていれば私の下着が見れたのにな」
うーん、男らしいけど下品だよこの人。
でもこの人人気投票で一位なんだよなぁ、夏休みの生徒会合宿と言う名の旅行で俺の事が好きだと気づいてから普段は豪快なのに二人っきりになると急にしおらしくなるんだ。
一部では豪気デレとか言われていたな、好きな絵柄のサークルに限ってかや姉本じゃなくて朱音本なのでちょっと嫌いになったのは良い思い出だ。まぁすぐに好きになったけどね。
「じゃあ、かや姉終わるの待ってるから」
「待ってきょうちゃん」
「なに?」
「茅野、これは私から言おう。斉藤京谷、そなた、生徒会に入らないか? 今は第二書記の席が開いておる。もちろんいやならいいが」
おかしい? 本来ここで生徒会の役員の打診は来ないはずだ、やはり原作と違うように動いているみたいだな。
「きょうちゃん、一緒に生徒会の仕事やろ」
「やります」
うん、まぁいいや、かや姉に頼まれたらやるしかないもんな、うん。
「そうか、ありがとう」
朱音さんはにっこりと笑うのだった。
最後のヒロインはしばらく出てこない。
そうやって一学期も半分終わり中間考査が始まる。
俺は将来かや姉の事を養うつもりだから勉強も手を抜かない。
そしてその事が最後のヒロインの出会いイベント潰しになるのだ。
原作では中間考査で点数が悪く追試になり、図書室で勉強をしていると奥のほうから物音がしてそれを見に行く俺。
そこには黄色と白の縞パンをもろだしして本に頭を埋めている女子生徒が、すぐにその子を救出してあげたことがきっかけで仲良くなる。図書委員の文だ。
小柄、三つ編、めがねのそろった文学少女である。
学年トップの成績の文に勉強を教えてもらい追試を乗り切るのが出会いのイベントだ。
その後なぜか文と勉強をして期末考査で学年十五位にまで上り詰めるのである。
原作では文の教え方が上手いと言われていたが、単純に俺の頭の良さもあるだろうと思っていた。
その予測はあたりで俺は勉強すればそれを吸収する頭をもっていたみたいだった。
すでに俺は高校の内容は終わっている。
だが、内申点の為に授業も真面目に受けるしテストもできるだけいい点を取る。
中間考査が終わって順位が張り出された。
一位の欄に俺の名前が乗っていた。
「うし」
その名前を確認してガッツポーズを挙げていると隣で悔しそうなうめき声が聞こえた。
となりを見ればそこにいたのは文だった。
俺はそそくさとその場を離れようとしたが遅かった。
「京谷すごいじゃん。学年トップだよ学年トップ」
そうやってなれなれしく藍が俺の肩を叩いてきた。
その声を聞いて隣にいた文がこちらを見てきた。
「あなたが斉藤京谷ね、次は、次は負けないんだから」
そう言って文は走り去っていった。
まぁ、フラグ潰したしいっか。
かや姉以外のフラグを全て潰したが未だ安心は出来ない。
多分これからもイベントはやってくるだろうから油断はしない。
何度藍がぶつかってこようとも受け止めて怪我をしないように抱っこしてやった。
体育祭の真中の体操服が事故でびりびりに破けてしまった事件も用意してあったバスタオルで他の人に見られる前に隠してやった。
朱音さんから出される依頼はかや姉といちゃいちゃしながら終わらせた。
自宅でのかや姉の風呂上りバスタオルはらり事件は眼福だった。
一学期期末、二学期中間、期末、三学期学年末と俺が学年トップになり文に覚えてろーと言われ続けた。
そんなこんなしているうちに原作での最終回である三月八日が見えてきた。
俺とかや姉はいまだラブラブである。
クリスマスデートの時、帰る前に薬局に寄りたいと言われ一緒に行って手を引っ張られてとある製品が売られている場所へ連れて行かれた。
「きょうちゃん、私クリスマスプレゼントがほしいな」
そう顔を真っ赤にしたかや姉はその棚の箱を取った。
そこには極薄、十個セットと書かれていた。
三月八日
原作では俺が藍に告白して恋人になる日である。
「京谷くん、私、あなたのことが好きです」
「京谷さん、私、あ、あなたの事が、その、その、好きです。ごめんなさい」
「きょ、京谷さん、その、茅野と付き合っているって事は知っています。ですが、卒業前に言っておきたかったんです。大好きです」
「京谷くん、いつも、あんな事言ってたけど、私、あなたの事が好きだったんです」
どうしてこうなった?
誤字、脱字があれば報告おねがいします。
感想をいただけるとうれしいです。
批判もどんとこいです。