4話 じいちゃんが凄い!
「じいちゃーん、ただいまー」
「お帰りなさい」
「あれ? 何でシエラ姉さんがいるの? お仕事は?」
「そんなことより、十五歳になったんでしょ?」
「え、うん、昨日なったばっかりだけど……」
「ならまだ間に合う、リク、魔法学校に通いたくない?」
「魔法学校?」
「そう、魔法について学ぶ学校」
「面白そうだけど……それって王都のほうでしょ?」
「ん、王都であってる」
「それじゃあここからすごく遠いんじゃない?」
「確かにここから王都までは四時間かかる」
「それじゃあ……」
「王都に引っ越せばいい」
「ええ! でもじいちゃんと一緒にいたいし…」
「なら一緒に引っ越せばいい」
「そんなお金ないよー」
「………もしかしてリクはお金を使ったことが無いの?」
「え? いや、たまにここに来る商人さんから調味料なんかを買ってるから少しくらなら使ったことあるよ?」
「じゃあ、あなたのおじいさんがどれだけお金持ってた?」
「えーっと、たしか金貨が四枚と銀貨が二十三枚それと銅貨が六十七枚…ああ、あとよく分からない綺麗な色の硬貨が数え切れないくらいだけど……」
「その数えきれない綺麗な硬貨の名前は王貨、一枚で金貨百枚分」
「へ? 金貨百枚分?」
「そう」
「なんでじいちゃんはそんなにお金を持ってるの?」
「もしかしてウィルさんに聞いてない?」
「え? 何かあるの?」
「そうなの……教えてもらってないのね」
「だから何が?」
「ちょうどウィルさんが帰ってきた、直接聞いたらいい」
「ただいまのー、なんじゃ? 何の話をしとったんじゃ?」
「あ、じいちゃん、お帰りなさい」
「ああ、ただいまの、それで何の話をしとったんじゃ?」
「そうだった、ねえ、じいちゃん」
「なんじゃ?」
「じいちゃんの若いときのこと教えて?」
「ブゥフッ!……わ、若いときかの?」
「そう若いとき、じいちゃんが何をしてたのかとかをさ」
「そ、そうじゃのー」
「うんうん」
「え、英雄をしとったかのー」
「英雄!?」
「周りからはそう言われとったの、まあ随分と昔のことじゃて」
「でも、今でも人気」
「そうなの?」
「どうかのーわしはこの森から出てないからのー」
「多分町に行ったら百人中百人がサインや握手を求めてくると思う」
「そんなに!?」
「まだおさまっとらんのか……」
「世界を救った英雄の人気は永遠」
「世界!?」
「大袈裟じゃて……」
「大袈裟じゃない、災厄級の魔物の大群を単独で撃破した」
「災厄級って強いの?」
「そうじゃのー、ああ、リクが四歳のときに初めて狩った魔物じゃよ」
「ああーあれかー」
「え!? リクは災厄級を討伐したの!?」
「う、うんあれがそうなら確かに倒したけど……」
「本当ですか?」
「本当じゃとも、大体リクはとうの昔にわしを越えとる」
「え!? そうなの!」
「…何で本人が一番驚いてるの……」
「だ、だって僕には魔法の才能が無いものだと思ってたし、じいちゃん位の魔法が一般的だとばかり……」
「人類に何を求めてるの……」
「ほっほっほ、さすがわしの孫じゃて」
「……それで? 魔法学校に通う?」
「できれば通いたいけど……いい? じいちゃん」
「ん? 何故わしに聞くんじゃ? リクのことなんじゃから自分で決めていいんじゃぞ?」
「そ、その、出来ればじいちゃんと一緒に王都に引っ越したいというか、なんと言うか……」
「何を言っておるんじゃ? 当たり前じゃろうて」
「え、本当に?」
「大体リクがいなくなったらわしは寂しくて死んでしまうわい」
「じゃ、じゃあ…」
「行くかの、王都に」
「やったー!」
「ふふ、じゃあ決まり、学校へは私が推薦しておくから」
「推薦?」
「そう合格しやすくなること」
「い、いやそうじゃなくて……その学校って有名なんだよね?」
「まあ、世界中から生徒になりたい人が来るから、そこそこ有名だと思う」
「絶対そこそこじゃない!?」
「ほっほっほ、懐かしいのー」
「もしかしてじいちゃんも?」
「卒業生じゃよ?」
「そうだったの!? そんな学校に推薦できるってシエラ姉さんって何者?」
「私は私」
「ほっほ、シエラは世界で唯一の魔道具職人じゃよ」
「唯一?」
「それほどでもない」
「わしでさえ魔道具は作れんのじゃ、もっと自信を持ってもいいんじゃぞ?」
魔道具ってそんなにすごい物なの!? どうしよう僕作れるんだけど……
それに魔法もすごかったなんて……
あれ? 自分で言うのもなんだけど僕、完璧じゃない? 顔以外は(鏡が無いから顔が分からない)剣術もできるし……
「じゃあ、明日迎えに来る、入学試験は明後日だからそのつもりで」
「ええ!? そんな急な!?」
「ほっほっほ、いい経験じゃて」