起点 渋谷 (前編)
2015年 渋谷。
街中に突如現れたそれは、人々の好奇の視線を浴びた。
「何かのイベント?」
「地方のPRか?古くさっ。」
そんな言葉を全て受け入れるかのようにそれはただ微笑を浮かべていた。
そして、にわかに右手を動かす。
「うわ、動いた!?」
「ごっつい着ぐるみだな。ふ◯っしーみたいに動けないのかよ!」
右手は大衆の中央に向けられた。
「え、なになに?なにがはじまんの?」
ブッ。
何かが切れた、いや潰れたような音が鈍く響き…次の瞬間、大衆らの眼球が潰れ、口、鼻、耳、いたるところから血がながれ出した。
「グッ…ぅぅググェッホ!!ォァア…。」
「おいおいおいおいおいなんだこれおいおいおい」
「なにこれヤバくない?警察電話した方が良くない?」
「おい!誰か救急車!!!早くしろ!」
普段とは違う喧騒が、渋谷の街を包む。唯一変わらないものと言えば、この喧騒を撮影している状況認識力の乏しい輩くらいのものだ。そして、次は左手が大衆の方を向く。
「おい、あれこっち向いてるぞ。」
「うわっ気持ち悪。逃げようぜ。」
「おいっ!てめぇ邪魔なんだよ!」
ばんっ。
左手の延長線上の肉体が砕け散った。