とある彼の現状
彼は、絶望していた。
もはやあせってなどいない。
ただ、ただ、諦めていた。
残りの果てしなく長い人生を、如何にやり過ごすか?
ただ、それだけを考える日々であった。
「リーマンショックでリーマンになりそこないまして(笑)」
つまらないダジャレで、寒い笑いを取ることくらいしか彼に残された武器はない。
刀折れ矢も尽きた。
そんな心地であった。
大学4年の就職戦線で見事全敗。
翌年も就職浪人として身を粉にして就職先を探した。
何社も面接を受けた。
面接官にありもしない貴重な経験談を話して聞かせ、
興味もない趣味について熱弁し、
大学時代の失敗談でちょっと笑いをとってみたりもした。
全て駄目だった。
見透かされていた。
「お前はクズだ。
お前たちの仲間から社会に必要な人間を絞り取ったあとの出がらしがお前だ。
そう、お前はクズだ」
もちろんそんなことを云われたことなど一度も無い。
だが、
『不採用』
この一文字を
何度も何度も、
何度も何度も、
繰り返し見せつけられる度に、彼の心は、徐々にその踏ん張る力を失っていき、いつしか、ゴロゴロ、ゴロゴロと深い海の底に転がり落ちて行った。
「そう、オレはクズだ・・・」
つづく