しかたがない
「ただいまー」
「あ、おかえり」
「あら、何やってるのよ?」
「んー。夕飯の下拵え」
「珍しいわね。せっかくなら全部やってくれてもいいのよ?」
「いや……自分でもできるっちゃできるけども姉ちゃんの味付けとか調理にはやっぱり敵わないよ」
「料理の半分は下拵えで決まるのよ。涼平にもできると思うわよ」
「んー。でもやっぱり敵わないよ」
「そう。まぁ、いいけどね」
「あ、風呂の掃除は終わってるからいつでも沸かせるよ」
「涼平にしては準備いいわね?」
「俺にしてはって何だよ」
「普段は言わないとやらないじゃない?」
「まぁ……」
「でも、言えばやってくれることは評価できるわね」
「ありがと?」
「それはそうと涼平?」
「何?」
「お願い事の査定には考慮しないわよ」
「な、何のことかなー」
「わかりやすすぎよね。小説や漫画じゃないのよ?」
「デスヨネー」
「ほら、何を頼もうとしてたのよ?」
「いやね……友達がね?」
「友達……」
「あからさまに渋い表情やめて!?」
「だって……涼平ってまともな友達いないじゃない?」
「いるから!? ……で、だけど」
「うん」
「何人かが家で一緒にテスト勉強したいって言ってるんだよね……」
「……何人よ?」
「五人ほど……」
「涼平に五人も友達がいるの!?」
「もっといるわ! 部屋の容量的には大丈夫だと思うけれどこの前の失態があるから……」
「少し手狭に感じるかもしれないけどいいわよ?」
「いいの?」
「テスト勉強の為なんでしょ。それに、わざわざ家って事は転入したあなたとの親睦をより深めるための考慮もされているのよね?」
「あ……そこまで考えてなかったけどそういう理由もあるのかも」
「……はぁ? どういう事よ」
「全然違う理由からその話になったんだよ……」
「違うならどうして家なのよ。他の友達の家とかでもいいわよね?」
「えーっと……もう一つのお願いに繋がる事なんだけど……」
「まだあるの……?」
「包丁こっちに向けないで!? ……友達が姉ちゃんの作った弁当を見て姉ちゃんの料理を食べてみたいって言ったんだよ」
「見ただけで?」
「いや、弁当を姉ちゃんが作っ事と料理上手って事を話した」
「まったくアンタは……」
「そしたらさ、その時に友達が勉強会の後に姉ちゃんと一緒にご飯を作って食事会しようって。もちろん姉ちゃんの許可と参加があればだけども」
「ふーん。友達って女の子だったのね?」
「男子も女子も何人かずつだよ」
「はぁ……仕方がないわねぇ……。再来週の日曜ならいいわよ」
「マジで!? 本当にありがとう!」
「そーのーかーわーり。しばらくはアンタにも自発的に家事をしてもらうわよ?」
「イエス! サー!」
「私は男じゃない!」
「ちょっ!? 包丁は危ないだろ!」
「峰打ちだから大丈夫よ」
「良い子が真似したらどうする!?」
「テロップでも出しておきなさい!」
作者の私でもしかたがなくない作品だと思います。
そんな作品でも良ければ気まぐれな私にお付き合いくださいませ。
意見・感想等、ないとは思いますが……もしあればよろしくお願いいたします。
この学校に入学したい方、募集します。……いないと思いますが。
『良い子はマネしないでください』