表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本人曰く、そうらしい」(クレア談)
9/66

幼き記憶は、幻想の如く。

「た、ただいま」

「ああ」


 俺もシャワーを浴びて、部屋に戻る。既にクレアは戻っていた。

 ワインをグラスに注いで、少しご機嫌のようだ。


「ん」


 ん、って。グラスを此方に差し出されても困るんですが。俺、まだ未成年だし。

 あ、この国の法には問題ないのか?


「あ、頂きます」


 興味本位からグラスを受け取り、ワインに底が隠れる程度に注がれる。

 ソムリエ的に、匂いをかいでみる。……うん、さっぱり分からんな。


「うー」


 なんだか向こうで唸ってるんですが。

 一口味わう。あ、普通に美味い。葡萄酒か?


「んー?」


 此方をチラチラ伺うクレアの目が危ない。もう酔ってるのか。

 お酒をに弱いのかな。


「もう一杯だけ貰おうかな」


 そう言ってワインのビンを手に取る。が、思ったよりも軽い。

 見ると、8割以上なくなっていた。


「飲み過ぎでしょう」


 それぞれのワインに半分ずつ注ぐ。

 もう一口。うん、美味い。だが、アルコール度数ってどの程度なんだろう。


「うぅ……」


 呻きだしたよ。これはそうとう酔ってるな。ベッドに寝かした方がいいかな。

 ぐったりするクレアの隣に屈み、お姫様抱っこで抱える。


「な、なかなかの重量ですねっ!」


 おおよそ、女性の方に言ってはいけない暴言を吐きながら、そっと移動してベッドに寝かす。

 先程から呼吸が荒い。俺が抱えたせいで、服も多少はだけてる。つまり……



「エロい」



 視線が胸の谷間に吸い寄せられる。


「こ、呼吸が荒いんだ。べ、別にやましい意味はないんだからね!」


 誰に言い訳しているのか検討も付かない事を述べて、ソッと一番上のボタンを外す。すると、更に谷間が見える。


ゴクリ……


 それが自分が唾を飲んだ音に気付くのに数秒かかった。

 ……もうちょい、あけてもいいよな? 息苦しそうだし。


「……」


 ドクンドクン、と胸が高鳴る。心なしか、心拍数も上がってる気がする。


「ん?」

「ひっ……」


 パチッとクレアの目が開いた。数秒間見詰め合う。

 既に手は第二ボタンの10cm手前まで接近しており、十人いれば十人とも同じ答えが返ってきそうな状況だ。

 ……終わったな。俺、死んだわ。


 なにかを悟ったような気分に陥りながら、せめてもの抵抗として体を少しずつ体を引く。


「ジュリ……アス?」


 淡い唇から、ボソリと漏れた名前。

 そして、背後から物凄い力でクレアに引き寄せられた。

 このまま圧殺させる気か!?と思ったのだが、引き寄せるとクレアは眠ったのか力が抜けた。


 大きな胸に顔を埋めている現状。にも関わらず、くだらない妄想は沸かなかった。力の抜けたクレアの手を解き、顔を上げる。

 クレアは一筋の涙を零していた。


「泣かせちゃダメじゃないか」


 自分を戒めるように言った。持っていた布で、涙を拭ってやる。すると、わずかながらクレアの表情が楽になった。呼吸も安定している。


「うぇ……」


 視界が突然ぐにゃりと歪んだ。

 あの酒は、後から酔いが来る酒だったのか。


 グラグラ揺れる視界の中、なんとか椅子に座る。


「グチャグチャですね……」


 ゆっくり瞼は閉まる。

 あぁ、今日が終わった。














 誰かが俺の名前を呼んでいる。


「…………」


 上手く聞き取れない。どうやら俺は誰かに抱かれているようだった。

 大きな胸が顔の横にあるのが分かる。優しく頭を撫でられた。


「…………!」


 見上げたらしく、視界が上を向く。


(!?)


「………!!」

「……、…………。……」


 俺が何かを喋る。『顔が真っ黒に塗りつぶされた何か』に。



2013/09/09 誤字を修正しました。

2013/09/23 致命的な間違いを修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ