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これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本人曰く、そうらしい」(クレア談)
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セクハラジジイ

 夜が明けだした。長時間硬い地面に寝転がりっぱなしだったから、全身が痛い。


「特に腰が痛い……」

「野宿には慣れていないのか?」


 平然と言い放つクレアは、なんと鎧を着たまま寝ていたのだ。それも寝転がらず岩に座る形で。


「良く寝転がらずに寝れますね」

「あぁ。まぁ、訓練したからな」


 そんな訓練はしたくねぇ!


「夜中にモンスターが出たからな、一蹴しておいた」

「夜中に襲撃があったんですね……」


 クレアがいなかったら、もしかして今、俺ってモンスターの腹の中?

 ……考えただけでゾッとしてきた。


「ありがとう」

「ん? なにがだ?」

「敵を倒してくれて」

「あぁ。コナタ殿を守るのも私の役目だからな」


 本当に助かる。


「朝食は食べましたか?」

「いや、まだだ」

「では、作りますね」

「うむ」


 近くの石を持ってきて組み立てる。前日にある程度集めておいた木を入れて、火打石で着火する。

 ボワァっと炎が上がり、直ぐにあちこちへ火が移った。

 よし、今回は一回で成功したな。


「ホワイトリザードの肉がありますよ」

「お願いする」

「分かりました」


 少し鮮度は落ちたようだが、特に異臭はしなかった。気にせず串を通し火にかける。

 次に昨日採取したナスラド草を軽く火で炙る。

 最後に一度串を抜いたホワイトリザードの肉にナスラド草を巻いて再び串を刺せば、完成だ。


「はい、クレアの分」

「助かる」


 串を手渡す。クレアはむしゃむしゃと食べる。


「美味いな」

「そうですか?」


 少し照れる。それを隠すために、ホワイトリザードのナスラド巻きにかぶりつく。

 ……確かにいける。

 チラリとクレアを見ると、二本目を手に取ろうとしていた。そしてなにやら上機嫌だった。








 昨日と同じ要領で、クレアが狩り。俺が採取をした。

 本日は午前中で切り上げて、早めに街へ行った。

 昨日のお金がまんま残っていたので、薬草は全て売り払わず、二房程手元に残しておいた。

 午後の時間は、クレアの武器と防具を見に回ることにした。


「そもそもコナタ殿は武器を持たないのか?」

「うーん。肌に合わないっていうか。あんまり持ち歩くのは好きじゃないですね」

「でも、いざ戦闘となった時はどうするつもりだ?」

「魔法でも唱えて逃げますよ」


 ……苦笑された。


「私の武器もありがたいが、ひとまずコナタ殿の防具をそろえた方がよろしいかと」

「うーん。でも、クレアが戦闘でメインになってしまうんだし、クレアを優先したいんだよ」

「まぁ、ご好意は受け取りますが」


 そんな話をしていると、武器屋についた。


「これリザードソードだって。値段は……へぇ、320銅貨か」

「私にはこの剣で十分なんだが」

「でも、それって結構使ってるんでしょ?」

「それは……、まぁ――」

「あれはまぁ。勇者様でねぇがな?」


 突然、武器屋の奥から爺さんが出てきた。


「あ、どうも」

「ほー。まだこんなとこにいたんけ? ほーか。武器を見に来たんだろ?」

「あ、そんなところです」


 小さな爺さんだな。身長は150cmぐらいかな? 白髪が生えてるが、顔色は良さそうだ。


「ほーほーほー」

「……」


 その爺さんがクレアを凝視しながら頷いている。


「お前さん……」

「な、なんだ」


 爺さんがニヤリと笑う。


「巨乳じゃな」

「このクソジジ――」

「止めて、クレア! 相手はジジイですよ!?」

「お前ら、ジジイ言うなー」

「殺し――」

「クレア!? 早まるんじゃない!」


 怒り狂ったクレアをどうにかなだめ、殺気のこもった視線をジジイに送り続けていると、


「そうじゃな。お前さんの武器はこんなんがよかろ」


 ジジイが数ある剣の中から一振り選んで見せる。


「ラビットソード」


 単調な名前だな。


「ウィークラビットから出来る剣じゃて。軽うての、小回りが利く。それに手数で攻める事が出来るしな。まぁ、一撃は比べたらあかんけ」

「おいくらなんですか?」

「ざっと1000銅貨じゃね」


 つまり銀貨10枚か。値切ってみよう。


「これ以上は下げんじょ」

「――ッ」


 先に封じられてしまった。


「あんな。素材持ち込んでくれたら、もっと安くするけ」

「あ、ウィークラビットの素材はいくつかあった気がします」


 ゴソゴソと袋を探る。……あった。良かった、先に売りに行かなくて。


「骨も牙も角もある。取り敢えず全部そろとるの」


 ニィとジジイは笑みを作った。



2013/9/8 題名を変更

2013/9/19 おかしな表現を修正

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