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これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本人曰く、そうらしい」(クレア談)
6/66

ぼったくり薬局

 恥ずかしい出来事をなんとか誤魔化しつつ、本日の成果を披露した。


 イエローモンキー――各種素材をそこそこ

 ブルーモンキー――各種素材をそこそこ

 レッドリザード――各種素材を少し

 ホワイトリザード――各種素材を少量

 ウィークラビット――各種素材を少し

 フーリッシュロック――堅い甲羅を沢山、フーリッシュロックの核×1

 薬草――それなりに

 四つ葉のクローバー――3つ


「ん? なんだ四つ葉のクローバーって」

「知らないんですか? これを持っていると、幸せになれるらしいですよ」

「本当か?」


 一つを手に取り、怪しい目線を小さな四つ葉のクローバーに送る。


「いや、そういう言い伝えがあるんです!」

「あぁ。そういう事か」


 納得したような顔をして、俺にクローバーを返す。

 どんだけ疑ってたんだよ!


「宿代を手に入れる為にも城下町に戻ってお金に換えますね。日もそろそろ沈む頃合いですし、店が閉まるかもしれません」

「そうだな。行くか」


 クレアが立ち上がり、手早く広げたアイテム類を袋に納め、俺も後に続く。







 途中、モンスターから襲撃があったが、クレアが一蹴してしまった。このときに俺は、クレアを敵に回すのは止めようと誓った。


「さて、何処に行けばいいんですかね?」

「行き先を決めてないのに引っ張ったのですか……」


 クレアの呆れ顔に少なからずムッとしたが、先ほどの誓いを思い出し、思いとどまる。


「ほら。僕、地方の者でしたので、この町は初めてなんですよ」

「むぅ。そうか、なら仕方がないか」


 今度はクレアを先頭に、俺らは歩き出す。その間に、クレアがある程度町の紹介をしてくれた。

 まず、薬や草などを売るのは薬屋らしい。

 モンスターの素材は、専門業者が買ってくれるとか。それ以外にも鍛冶屋でオーダーをする際にも使えるらしい。


「着いた。ここが薬屋だ」


 クレアのその先にあったのは、自然に優しそうな緑を基調とした店だった。店に入るクレアを追って、部屋に入る。


「うっ……」

「やはり勇者殿もそうなるか。私もあまり好きな臭いではない」


 クレアは俺のように鼻を押さえる事はしなかったが、どこか表情が硬い。

 それもそのはず。これは日本にいた頃――もう四年も前の話になるのだが――にあった病院独特の臭いにそっくりだった。消毒液の臭いとでも言おうか。


「あら。いらっしゃーい」


 店の店員らしき女性が店の奥から出てきた。


「あの……、それは?」

「あ、ごめんねー! 着替えるの忘れちゃった。少しだけ待ってね☆」


 パチンッとウインクして再び店の奥に引っ込む。それはそれは美人な人で……っていやいや!?

 その美人な人が向日葵の様な笑顔と一緒に、血塗れの白衣を着ていたのだから呆然となるのは当然だろう。


「はいはい。ごめんよー!」

「……」


 クレアですら呆然としている。この人、唐突な事に弱いのかな?


「すみません。実は――」

「分かってるって! これでしょ?」


 彼女が差し出したのは、目薬を入れる瓶(無論、ガラス性のようだ)だった。

 いや、まず買い取りなんですが。なんですかその、私、分かってますよ。って顔は。


「因みにコレはなんですか?」

「媚薬」

「ブッ…?!」


 あ、クレアが吹いた。

 確実に、唐突に弱いな。


「んな訳あるか!?」

「え。そこのお姉さんとお楽しみじゃないの?」

「冗談も休み休みに言え!」


 あ、クレアにバッサリ切られた。間違っていないんだがなんだか悲しい。


「違います! 薬草の買い取りの方をお願いしたいんです!」

「あ、あぁー! も、勿論分かってたわよ!」


 妙な所で意地を張る人だな。てか、真剣に媚薬だと思っていのか!?

 ポケットから摘みたてホヤホヤの薬草を取り出す。


「うーん。品質は良くも悪くも……。全部合わせて、相場辺りの10銅貨でどう?」

「10銅貨って……、もう少し上がりませんか?」

「OK。それじゃ、15銅貨でどうだ!」

「もうちょい!」

「うーん。20銅貨じゃい!」


 下手に値上げしても、買い取ってくれなかったら困るのは俺らの訳で。ここらで妥協するかな。

 と思って薬草を渡そうとすると、クレアがちょいちょいっと手招きをして、耳打ちした。


「相場は1房、5銅貨だぞ」

「超ぼったくってるじゃぇか!?」


 軽く10房はいってるぞ!?


「冗談」


 ニヒリと意地悪そうな笑みを浮かべている。あのまま渡していたら絶対に返す気は無かったに違いない。


「ごめんって。んじゃ、相場より少し高めの60銅貨で買ってあげるよ?」

「……」

「大丈夫。相場より上だ」

「そ、そうなのかなぁ……?」


 取引が成立し、薬草を差し出す。銅貨60枚に代わる。


「ありがとー! 丁度、薬草が足りなくて困ってたんだよねー!」

「何かあったんですか?」

「うーん……」


 俺とクレアを見直した後で、彼女はこう言った。


「分からなーい。まぁ治癒薬がバンバン売れるんだから、どこかで騒ぎでも起こっているのかもね」

「そ、そうですか……」

「そうそう。媚薬は55銅貨で売って――」

「大変お邪魔しましたー!」


 クレアの手を引いて店を飛び出す。


「なんて店を紹介してくれるんですか!?」

「い、いや。町では一番の薬屋と聞いていたんだが……」


 クレア自身も何か言いたげだが、先ほどの会話で時間を浪費してしまった。正確な時間は分からないが、そろそろ店仕舞いをしてもおかしくない時間だろう。


「これぐらいのお金じゃ、宿に泊まれるか心配ですね。モンスター素材を買ってくれるのはどこですか?」


 再びクレアの案内に従う。また、変なところに行くんじゃないだろうか、心配だったかが、今度は普通に買い取ってもらった。


「収入は12銀貨と36銅貨ですか」

「なかなかじゃないか?」


 手のひらに乗る銀貨と銅貨を見ながら、二人で呟く。

 俺はそのお金を半分に分け、その片方を更に半分に分けて、その半分をクレアに差し出した。


「なんの真似だ?」

「個人で自由に使って良いお金です。て言っても、こんな端金じゃ、ロクな物を買えないでしょうが」

「いや、別に良い」

「そんな事を言わずに!」

「いや、受け取れな――」

「いえ、是非受け取って――」



 因みにこの攻防は夜が深まるまで続き、二人は野宿になったそうな。



2013/9/8 題名を変更

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