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これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本当なのか、ただただ怪しいな(ファーリ談)」
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仮面の敵

 走る音が廊下に響く。牢屋までは目と鼻の先だ。


「鍵がかかっていますね」

「任せてくれ」


 クレアが剣を構えながらそういうと、静かに瞑想し始めた。

 すると、少しずつ黄色い光を帯び始めた。


「漆ノ式・紫電!」


 横に振りかぶり、剣で錠を切り裂く。バチッ、と大きな音の後に、キィンッと耳障りな音がする。

 思わず目を閉じると、瞬間、瞼の向こうで閃光が弾けた。


「開いたぞ。さぁ、早く!」

「あ、どうもありがとう」


 促されるままに扉の奥へ進む。

 確かここはサンクチュアリ指定の場所のはず。魔法が使えるはずがないのだが……。

 つまり、あれは魔法ではない何か。

 確か、武器に属性を付与することが出来るはずだ。あのスケベジジイは、そんな事が出来るのか。

 意外に名工だったりしてな。


「こ、コナタさん!?」

「こんばんわ、リーサさん。助けに来ましたよ」

「え、でも! どうして!?」

「すまないが、鉄格子から離れてくれないか。そのままだと真っ二つにしてしまう」


 鉄格子に駆け寄ってきたリーサは慌てて、その場から離れる。


「はっ!」


 俺は予め目を閉じておく。案の定、閃光が迸った。

 目を開けると、そこには鉄格子が真横に裂けていた。


「どうして? サンクチュアリで魔法が使えないはずじゃ……」

「今は気にしてる暇はありません。急ぎますよ」


 ヨロヨロと歩き出てくるリーサを確認した後、奥の牢屋に向かう。


「亜人さん」

「……」


 初めて対面した。そこには猫耳を生やした小学生ぐらいの身長の小さな女の子がいた。

 恐らく、獣猫族だろうな。


「獣猫族のお嬢さんも、出してあげて下さい」

「分かった。はっ!」


 同じ要領で、牢を壊す。

 目を開けると、獣猫族の少女は目を押さえていた。大方、逃げようと目を凝らして行動を見ていたんだろう。


「クレア、リーサさん。現在このラドル邸には月水心我が襲撃しています。面倒な事が起きる前に逃げますよ!」

「分かった」

「助けて頂いて、ありがとうございます!」

「バカ。それは助かってから言うんだよ。急ぐぞ」

「ありゃ、クレアの閃光に目がやられたみたいですね。お嬢さん、早く乗って下さい」


 目を押さえたままうずくまっている少女に声をかける。しかし彼女は「嫌ッ」と言って乗ってくる気配はない。


「あぁ。面倒ですね! 失礼、お嬢さん(レディー)

「わ、わわっ!」


 小さな体に腕を通して、お姫様抱っこをする。

 驚くほど軽い。恐らく、だが小学生でももう少し体重があっても良いと思うのだが。


「行きますよ!」


 俺の号令に従い、全員で館に戻る廊下へ走り、飛び出た瞬間。


「避けて!」


 バチバチッ、と光り輝く閃光が頭上を走った。

 危機一髪回避した。だが、この攻撃が示す事はつまり……目の前に敵がいるんだ。


「コナタ殿。行くのか?」

「ええ。一方通行ですしね」

「だ、大丈夫でしょうか……」


 恐る恐る出口から出る。するとそこには、一人の人間がいた。そう、人間。

 白い服装に身を包み、白い仮面を付けた人間だ。

 月水心我は共通の服装を身に付けていた為に、彼はきっとラドル側の人間だろう、と憶測を付ける。


 周りを確認すれば、四方向に廊下が続いている。

 逃げ切る事は不可能でない。


「此方。お前に用がある。お前が逃げればお前以外を狙う。お前が残れば見逃そう」


 ご丁寧な事で。


「僕が相手をしますので、皆さんはその隙に逃げて下さい」

「だ、ダメだ! 敵の口車にのせられては……」

「合理的に考えましょう。僕は両手を負傷してるのに対して、クレアは無傷といってもいい。つまり、皆を守りながら戦うのに適しているのはクレアです」

「だが……」

「皆の命がかかっているんです。クレアは僕一人が危ない目に会うか、それとも全員を危ない目に会うか。どちらがいいのか、簡単なことでしょう?」

「だが、勝敗は多いほうが有利――」

「つべこべ言ってないで、早く逃げて下さい! 時間を無駄にして得はありません」


 半場、押し付けるように少女をクレアの背中におぶらせる。


「行ってください!」

「す、すみません!!」

「私が戻ってくるまで、耐えてくれよ!」


 その言葉を聞いて、右側の廊下へと進む。


「ハッハ。まるで死亡フラグのようだな?」


 仮面を付けた人間が笑う。


「ええ」


 俺も笑顔で返す。

 言葉も添えて。


「でも、別に僕が戦うって決まっている訳じゃ無いんですけどね?」



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