どこかの世界の真っ暗な場所Ⅰ
「ねーねー」
「ん?」
「歌を歌って」
「歌ぁ!?」
「私、歌ってあんまり知らない」
「そうか、それじゃ一曲歌いますか!」
「下手くそだね」
「うぉぅ!? 原曲しらない人に、馬鹿にされた!?」
「ねーねー」
「ん?」
「空飛んで」
「無茶苦茶いいますよねぇ!?」
「やれば出来る!」
「いやいや! 魔法が使えない俺に、そんな器用な事が出来るはずがないだろ!」
「私は出来る!」
「うるせー。なんでこんなチビッ子の子守をさせらてんだぁ!?」
「そう言い続けて早三年」
「テメェのせいだろうが!!」
「てへぺろ☆」
「いや、待て。なぜ異世界人の人間が、俺の故郷の『てへぺろ』を知ってやがる!!」
「マイブーム」
「すげぇ! お前のマイブームは俺の世界でも通用するわ!」
「貴方が来る前までは、エアゲームで楽しんでた」
「エア〜も流行っているのか? お前の頭の中に、俺の世界があるのか!?」
「違う。私が魔法で流行らせている」
「魔法便利過ぎだろ! 俺も真剣に覚えようかな……」
「じゃ、飛べる魔法から覚えよう」
「気付いたら、論点が戻ってた!」
「ねーねー」
「ん?」
「この世界、真っ暗だね」
「あぁ、そうだな。ん?」
「どこにもいっちゃヤだよ?」
「袖を掴まなくても、逃げないって。ほら、時間はそろそろ真夜中だぜ。眠るまで頭を撫でてあげよう」
「……ありがと」